横須賀・総武快速線の新型E235系「ロングシート」に異議あり

5月18日(土)7時0分 NEWSポストセブン

横須賀・総武快速線を走る現行のE217系は普通車の一部にクロスシートが採用されている

写真を拡大

 創立68年を数え、これまで鉄道関連の会社に多くの人材を輩出してきた「早稲田大学鉄道研究会」。その伝統に連なる現役会員が、JR横須賀・総武快速線(久里浜〜東京〜千葉)で2020年度から導入予定の新型車両についてレポートする。テーマは「座席」だ。


 * * *

 旅客列車の座席には、クロスシートとロングシートの2種類が存在する。クロスシートとは、列車の進行方向に設置された座席のことである。一方、ロングシートとは、列車の進行方向に対し、垂直に設置された座席のことである。


 近年、長距離列車にもロングシートを採用することが増えている。例えば、2020年度よりJR横須賀・総武快速線等に導入予定であるE235系一般型電車は、グリーン席以外の普通座席が全てロングシートとされている(「JR東日本ニュース」2018年9月4日付)。


 本記事では、クロスシートとロングシートの長所・短所を整理し、横須賀・総武快速線E235系普通座席の完全ロングシート化が妥当であるのか考えてみたい。


◆クロスシート、ロングシートの長所と短所


 クロスシートの主な長所は、長時間の着席に適している点である。特に、進行方向に設置された座席の場合、乗客は自分が進む方向に向かって着席することができる。さらに、クロスシートに着席した場合、乗客はロングシートよりも容易に車窓を眺められる。なぜなら、ロングシートの場合、乗客は窓に背を向けて着席するからである。また、「快適性評価式」により、長時間乗車における快適性は、ロングシートよりもクロスシートへ着席した場合に大きくなることが示されている(須田義大・松岡秀樹・小川雅(1997)「快適性と乗降容易性による座席配置の客観的評価方法」『日本機械学会論文集』63巻611号pp.141-148、pp.143-144参照)。


 クロスシートの主な短所は、乗降に時間がかかる点である。特に、窓側に着席した乗客は、通路側に着席した乗客により、スムーズな離着席を妨げられる(須田・松岡他は、この現象を「ブロッキング」と呼んでいる。前掲書p.145参照)。そのため、混雑時には、列車が駅に停車する時間が長くなりやすい。とりわけ、停車駅が多い普通列車は、各駅で停車時間が累積し、遅延を起こしやすくなる。


 一方、ロングシートの主な長所は、混雑への対応が容易な点である。ロングシートでは全ての座席が通路に面しており、乗客は他の着席客に影響されずに、スムーズな離着席を行える。特に停車駅が多い普通列車等では、ロングシートは混雑時の駅停車時間短縮や遅延防止に役立つ。また、ロングシート車両ではクロスシートよりも通路幅を広くできる。混雑時には多数の立客が通路にとどまるので、広い通路幅は立客1人当たりの面積を広くする。要するに、ロングシートは混雑時の立客の快適性を高められるのだ。


 ロングシートの主な短所は、長時間の着席に適さない点である。前述のように、ロングシートに着席した場合には、乗客は車窓を眺めることができない。さらに、ロングシートの背もたれには、傾斜を与えることが極めて難しく、着席した乗客は、背筋をほぼ垂直に伸ばした姿勢を強いられる。これは、ロングシートでは、床に垂直な客室の壁を背もたれとして用いるからだ。さらに、ロングシートには、肘掛け・テーブル・ドリンクホルダー・コンセント等、長時間利用に便利な設備を設けることが構造上極めて難しい。


◆横須賀・総武快速線のロングシート化は妥当なのか


 なぜ、JR東日本は横須賀・総武快速線のE235系普通座席を全てロングシートとしたのか。平成29年度の横須賀線で最も高い混雑率は、武蔵小杉〜西大井間の196%である(国土交通省「混雑率データ」)。通勤ラッシュ対策としては、E235系のロングシート化は妥当であるともいえる。


 一方で、鉄道ファンとしては、クロスシートの長所を軽視することはできない。


 前述の武蔵小杉〜西大井では、相鉄線の直通運転開始による輸送力増強が予想される(相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線ホームページ「完成後の効果(見通し)」)。これに加え、武蔵小杉駅では、横須賀線ホーム増設工事も実施予定である。


 さらに、横須賀・総武快速線沿線である東京都・神奈川県・千葉県の人口は、いずれも2020年代には減少に転ずると予測されている(各都県のホームページ参照)。以上の点を踏まえると、通勤ラッシュ時の混雑は、長期的には改善することが期待される。


 JR東日本によると、E235系が使用される区間は、「横須賀線(東京〜久里浜)、総武快速線(東京〜千葉)/外房線(千葉〜上総一ノ宮)、内房線(蘇我〜君津)、総武本線(千葉〜成東)/成田線(佐倉〜香取、成田〜成田空港)、鹿島線(香取〜鹿島神宮)」である。上記区間で現在使用されているE217系の多くは、上記路線を直通運転している。従って、E235系も、E217系と同様にこれらの路線を直通運転すると推測される。複数の路線を直通運転するということは、より長時間の着席需要が見込めることも意味する。


 現在、同路線で使用されているE217系では、一部の普通座席にクロスシートが採用されている。ということは、E235系普通座席へのクロスシート設置は、十分に現実的な選択肢である。また、休日には、三浦半島・房総方面への家族連れの観光需要も見込まれる。家族連れであれば、ロングシートよりも、向かい合わせのクロスシートの方が、使い勝手も良いだろう。


 E235系のグリーン車はボックス席だが、より安価に列車の旅を楽しみたい学生には使いづらい。E235系普通座席においても、ロングシートに限らず、クロスシート採用が検討されるべきではないだろうか。


●取材・文/長田紘一郎(早稲田大学鉄道研究会)

NEWSポストセブン

「横須賀」をもっと詳しく

「横須賀」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ