奥山大史監督、池松壮亮ら登壇『ぼくのお日さま』8分間のスタンディングオベーション

2024年5月20日(月)12時36分 オリコン

「第77回カンヌ国際映画祭」ドビュッシー劇場で観客お拍手喝采に応える映画『ぼくのお日さま』チーム(C)KAZUKO WAKAYAMA

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 フランスで開催中の「第77回カンヌ国際映画祭」で現地時間19日、「ある視点」部門に選出された『ぼくのお日さま』の公式上映がドビュッシー劇場にて行われ、奥山大史監督、キャストの池松壮亮、越山敬達、中西希亜良、主題歌の佐藤良成(ハンバート ハンバート)が登壇した。上映後のスタンディングオベーションは8分くらい鳴りやまなかったという。「ある視点」部門の授賞式は現地時間24日に行われる。

 田舎町のスケートリンクを舞台に、吃音のあるアイスホッケーが苦手な少年タクヤ(越山)と、選手の夢をあきらめたスケートのコーチ荒川(池松)、コーチに憧れるスケート少女さくら(中西)の3人の視点で、雪が降りはじめてから雪がとけるまでの、淡くて切ない小さな恋の物語を描く。監督の奥山が撮影、脚本、編集も手がけている。

 公式上映前、映画祭ディレクターのクリスチャン・ジュネが登壇し、この上映に審査員が「駆けつけました」とコンペティション部門の審査員を務める是枝裕和監督を紹介。その後、「ある視点」部門の審査員長のグザヴィエ・ドラン監督が紹介された。会場には、『CLOSE/クロース』のルーカス・ドン監督、西川美和監督、山下敦弘監督の姿もあった。

 今年のカンヌ国際映画祭で、最優秀作品賞、審査員賞、監督賞などの賞の対象となる部門に、日本作品として唯一の選出となった奥山監督は、満席となった1200席の観客に「この作品はドビュッシーの”月の光”が繰り返し流れる映画なので、こうしてドビュッシー劇場でワールドプレミア上映されることを本当に光栄に思っています」とあいさつ。

 クロード・ドビュッシーの代表曲「月の光」にのせてフィギュアスケートをする少女さくらに、主人公のタクヤが心を奪われるところから物語が動き出す本作を、ドビュッシーの名を冠した劇場で世界初上映できるめぐり合わせに、奥山監督の感慨もひとしお。

 そして、企画段階から奥山監督を支え、コーチ荒川役として出演する池松は「カンヌ映画祭に感謝します。楽しんでいってください」とあいさつ。4月に15歳になり、撮影当時から12センチ以上も身長が伸び、167センチになったタクヤ役の越山は、初の海外旅行がカンヌ国際映画祭となり、「はい。1200人の皆様、集まっていただきありがとうございます!最後まで楽しんでいってくださいっ」と軽快なマイクパフォーマンスでカンヌの観客を沸かせた。

 そして、6月に13歳になる中西は、英語もフランス語も堪能で、流ちょうなフランス語で「みなさん、こんにちは。来てくれてありがとうございます。楽しんでください」とあいさつした。その後、主題歌のハンバートハンバートの佐藤もフランス語で「ここに来られてとてもうれしいです」と、自分の子どものような楽曲が主題歌となった作品がカンヌ国際映画祭で披露されることについて喜びを爆発させていた。

 上映中は、タクヤが奮闘する姿にやさしい笑いが漏れ、クライマックスに近づくと緊張感のある雰囲気が会場に広がった。そして本編が終わり、主題歌「ぼくのお日さま」のエンドロールが流れ終わると、拍手喝采と「ブラボー」という声援と共に、スタンディングオベーションが約8分間続き、最初に越山が涙をみせると、中西も涙をみせた。会場全体があたたかな雰囲気につつまれ、監督、キャストたちへのエールが飛び交った。ルーカス・ドン監督と奥山監督が握手を交わすシーンもみられた。

 ワールドプレミアでの興奮が続くなか、『ぼくのお日さま』一行はレッドカーペットへ。この日、奥山監督、池松、越山の3人は、おそろいのタキシード。タキシードのブランドは、フランソワ・トリュフォー監督やアンディ・ウォーホルが愛用した老舗のブランド「ベルルッティ」のもの。そして、ヒロインの中西は、「セリーヌ」の今シーズンの秋冬ドレスとなるミニドレスを着用し、フレッシュな魅力でメディアを魅了した。カンヌ初参加となった4人はお互い笑顔を見せあいながら和やかな雰囲気でレッドカーペットを歩いた。

 その後、奥山監督、池松、越山、中西らはメディアからの囲み取材に参加。公式上映後の観客からの反応について奥山監督は「温かい反応をいただけて、まずは安心しています。うれしかったというよりも、一安心という気持ちが大きいですね」と述べ、レッドカーペットについては「公式上映とはまた違う、ずっと見ていたカンヌの文化に触れさせていただいたので、フラットに楽しめた」と笑顔を見せ、キャストの3人らも揃って「夢のような舞台だった、また来たい」と声をそろえた。

 公式上映後、エンドロールから涙が止まらなかった越山。その理由について「撮影中『こういうこと言われたな』とか、『こういうふうに撮影したな』とかエンドロールに流れる主題歌を聴きながら思い出し」感無量になったことを、はにかみながら告白。そして「台本を渡してもらえなくて、物語がわからないまま撮影がスタートしたが、初めての主演映画だったので、どれだけ自分の自然の形で撮影を楽しめるか、ということに重点をおいてやっていました」と、撮影当時を振り返った。

 奥山監督について質問を受けた池松は「自分でカメラを持って撮影される方なので、奥山さんの視点が、自分たち俳優にちゃんとフォーカスが合っている」「目と耳が素晴らしくいいと思います」「本人も映画もスケールが大きい。映画をもってどんどん世界と対峙してくれると思います」と絶賛。

 カンヌでの刺激を元にこれからどういう未来を描きたいか?という質問に対して越山は「またこういう舞台に立たせていただきたい」。そして「先日、人生初の生牡蠣をカンヌで食べて、とてもおいしかったので、またカンヌに食べに来たい!」と周囲の笑いを誘い、中西も照れながら「すべてが幸せなので、またこういうすごい場所に来れたらな、と思います」と10代らしい素直な想いを明かしていた。

 また、「今の時代に向き合うということをどう考えているのか?」と質問されると、奥山監督は「あくまで自分は、それだけを重視するわけではなく、自分が描きたいものを描き、その上で、例えば『これは多様性を描いているね』と言ってくれたらそれはうれしい」と回答。

 池松は「リアリティの中にもファンタジーの中にも、現実を語る力っていうのは実はちゃんとどちらもあって」「どちらに向けるのか、どう直接的に語るのか、それともファンタジーに包んで語るのかの違いだと思う」「この映画も非常に残酷な部分も写っているし、奥山監督はリアリティの中にファンタジーを載せることがとても上手で、そのことをあきらめていない」「本作は、より観客を選ばないし、この映画を見てもらえるのではないかなと期待してます」と想いを込めた。

 「ある視点」部門ではこれまで、黒沢清監督が2008年に『トウキョウソナタ』で審査員賞、15年に『岸辺の旅』で監督賞を、16年に深田晃司監督が『淵に立つ』で審査員賞を受賞している。同部門で最優秀作品賞を受賞すると日本史上初の快挙となる。

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