SNS依存は「牛と牛が首輪で繋がれているのと同じ」と専門家

5月22日(日)7時0分 NEWSポストセブン

約50万人の中高生がなっていると言われるネット依存症

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 FacebookといったSNSで日々投稿される食レポ、子供の写真、旅行報告、仲間とのパーティー、仕事の宣伝など、溢れるリア充アピールや自慢大会にうんざりしてSNSを辞める人が後を絶たない。近年、「僕を見て」「私を見て」のアダルトチルドレンや愛着障害が増えているという声が心理カウンセラーなどの専門家からもあるが、自慢大会の場となっているSNSでは特にその傾向は顕著だ。


 承認欲求は人間誰もが持つが、SNSの登場によって現代人の承認欲求はますます強まっていると、明治大学教授で臨床心理士の諸富祥彦さんは語る。「自分を見て」が強い人には、甘やかされて育ってきたわがままな人と、親の愛情を受けられずに育ち、障害を抱えている人がいる。


 急増している愛着障害の特徴としては、人の反応に過敏でびくびくしている。自分の非を認められない。自信がなく、気分の浮き沈みが激しい。嘘をよくつく。尊大な態度に出たがる。人をコントロールしたがる。自分の気持ちがわからず、人がいいというものを真似する−−などがあるという。


「愛着障害はSNSと相性がよく、依存症になりやすいんです。『自分』が育っていないから絶えず周りを気にして、人からの承認でかろうじて自分を支えているんです。構ってほしい人には絶好のツールですね」(諸富さん、以下「」内同)


 また、友達親子が増えて親が子供を叱らないため、自己中心的な性格に育つ子供が増えていることも大きな要因だという。


「子供に嫌われると面倒くさいから、親が子供を叱らない。ちゃんと躾るのは、手間暇かかりますから。つまり、親をコントロールしながら生きてきた子供が増えていて、だいたい思い通りになる前提で育ってきたから、他の人にも同じように振る舞うんです。現実生活では友達は少ないと思います。だからこそ、仮装空間を作れるSNSに依存するのです。


 本来、思春期に大人からガツンと叱られる体験をしないと発達課題がこなせません。昔は学校の先生に威厳がありましたが、今はクレームに怯えて生徒に言いたいことも言えない状況です。子供たちが誰からも叱られることなく育ってきたことが問題ですね」


 元来、日本人の美徳として謙虚さがあり、認めてほしい気持ちを表すことははしたないと抑制してきたところがあるが、SNSという「構って」を出せる場が増え、認めて欲しい気持ちを出し始めた人が、止まらなくなっている場合もあるという。だが、無邪気にしている幸せ自慢や自己アピール投稿によって、フォロワーから嫌われているケースは多々あるので注意が必要だ。


「立て続けに投稿してしまうのは、自分の承認欲求に振りまわされている状態です。周りからは不快に思われている場合もあるので、自分を客観的に見る時間を作ることです。スルーされたり、周りの人が離れていったなら、それはひとつの気づきの機会ですね。グループのサイズも選ぶべきです。例えば子供自慢も、少数のグループで全員に子供がいて、みんながしている場ならいいでしょう。そうでないなら、いろいろな状況の人がいることを想像して、他者の視点に立って投稿を。何百といるグループなら、何百人の前で話しているという自覚を持ちましょう」


 そもそも、「SNSは人の気持ちに鈍感な人向き」と諸富さんは続ける。


「SNSは鈍感な人たちが『いいでしょう?』『いいね』と自慢し合うのに向く場です。鈍感になれない人や、それが嫌な人は離れるのが正解です。彼らに気づかせてあげようと思うのは無駄です。注目や関心がほしい人たちですから、反応をしないのがいちばんです」


 最近では熊本地震後の不謹慎狩りが問題になっているが、ネットは顔が見えないためか、何かと批判したり攻撃する人が多く目立つ。


「人を攻撃することで快感を覚える人にも、愛着障害あるいは発達障害のどちらかの傾向が強い人が少なくありません。いずれの傾向が強い人も、自分が非難されることにすごく敏感で、非を認めるのが苦手で、ちょっとしたことにこだわりやすい。こうした傾向のある人に非を認めさせようとするのは、あまりお勧めできません。SNSというのは、ある意味で、空気が読めない人がなじめ安い場です。そこでやりあっても、無駄骨に終わることが多いので、賢明な人は、SNSでむきにやりあったりしません。それが大人の対応です」


「イイね」してほしいがために投稿を繰り返しする、その数が気になる、片時もSNSをチェックしていないと気が済まない——そこまでの強い承認欲求やSNSに依存してしまう正体とは何なのだろうか。


「SNSが好きな人達は、つまりリアルの世界で承認が得られないから、そこに求める人が多いんです。心が空っぽな人がなりやすい。何かに依存するのは、心が空虚な人の特徴です。アルコール依存やドラッグ依存もそうですが、空っぽな自分を支えるためにずっと刺激を求めている刹那の繰り返しです。今、スマホを取り上げると暴れ始める子が増えています。家庭内暴力の大半がスマホを巡る問題なのです。ネット依存症はアルコール依存症などと同じく脳の病気ですが、そのネット依存症に今、約50万人が中高生がなっていると言われています」


 ネット依存の治療を行っている久里浜病院のサイトでは、複数のチェック項目に答えてネット依存かどうかスクリーニングする「ネット依存度テスト」が公開されている。「依存」状態として一番わかりやすい状態は、ネットと引き離されたらイライラや落ち込みを感じるかどうか。まずはスマホを一週間やめて過ごせるか試してみるといい。


 同じく大きな社会問題となっているのが、親のスマホ依存によるスマホ・ネグレクトだ。


「母親がスマホに夢中になりすぎて、赤ちゃんが泣いても無視してしまう問題が起きています。0〜3才の心の土台が作られる時期に、大事な親と子の感情の絆が作られないことで、人の気持ちがわからなかったり、人を操作しようとしたり、感情の抑制がきかない子供に育ってしまう。愛着障害を大量生産している状態です。子供たちの心がどんどん壊れていっています。このままいくと、日本の美徳やおもてなしの心は失われますね。


 実際に幼稚園や保育園では、落ち着きがない子供や泣きやまない子供、癇癪が止まらない子供が多発的に騒いでいる状態があります。ちゃんとした養育を受けなかった子供たちが小学校に上がり始めて、これから手が付けられない学級崩壊は増えていくでしょう」


 かつて、哲学者のニーチェは「1日のうち3分の2以上を自分のありたいようにある時間として使えていない人は、精神的な奴隷と同じことである。人間には自ら望んで奴隷化されたがる真性がある」と警鐘を鳴らした。ネット依存症の拡大により、今の日本はニーチェのいう“一億総家畜化”に近づいていると諸富さんは危惧する。


「ニーチェの言う精神の奴隷、つまり人が隷属したがるのは、周りに合わせている方が楽だからです。それは牛と牛が、逃げないように首輪で繋がっているのと同じこと。頻繁にネットでやりとりして、お互いに家畜になっていることを安心し合いたいんです。それをやめることは協調性がないのではなく、主体性を回復したということ。主体性のある人は、ネットの世界に長くいられないですから。ネットをすることによって、人の目を気にして縮こまる不自由な状態にわざわざ自分たちを追い込んでいるように思えますね。スマホ断薬が必要な状況にあると思います」

NEWSポストセブン

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