TV界の寵児になった立川志らく「談志を喜ばせたかった」

5月22日(火)7時0分 NEWSポストセブン

国立演芸場が笑いの渦に包まれる

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 年度平均視聴率「7年連続同時間帯トップ」の昼の情報番組『ひるおび!』(TBS系)のレギュラーコメンテーターに2016年秋から抜擢されて以来、巧みな話術と鋭い視点で視聴者の心を掴む落語家・立川志らく(54)。昨年の「上半期ブレイクタレント部門」(ニホンモニター調べ)で1位、今年のバラエティー番組の出演数も昨年同時期の倍以上の30本超と、今やテレビでその顔を見ない日はない。


 2011年に没した師・立川談志をして「志らくは俺の後継者だ」と言わしめ、現在20人の弟子を持つ“落語界の大看板”が、なぜ50代半ばにして突如“テレビの売れっ子”になったのか。


「談志は生前、私のマネージャーだった自分の弟に『なんでお前は志らくをスターにできねぇんだ』とこぼしていたそうです。落語の才能は認めてくれていたので、遅ればせながらテレビで売れて談志を喜ばせたかったんです」


 落語界では盤石の地位を築き、映画を撮り、劇団を主宰し、本も書く。溢れる才能をテレビに振り向けた理由は、ひとえに亡き恩師の期待に応えたい一心だったという。


「談志という人は……最初はただひたすら怖かったですね。ひと言喋るだけで怒鳴られるのだから、私にとっては“恐怖の塊”。でも、談志が大好きで入門したのだから、誰よりも気に入られたかった。噺を月に2席覚えろと言われたら、4席覚えました。談志が好きだという映画は無条件で全部観た。昔の歌謡曲なんて興味なかったけど、好きな曲だと聞けば何度も聴いていっぱしの懐メロ通に。談志に何か聞かれたら、聞かれた以上のことを答えるようになっていました」


 若手の頃から同世代の落語家の中では人気・実力ともに抜きん出ていたが、志らくとともに立川流の出世頭となる兄弟子の志の輔、談春には、その後知名度という点で水をあけられた。


「志の輔兄さんが『ガッテン!』(NHK)でどれだけ売れようが、談春兄さんが書いたエッセイ『赤めだか』がいくらヒットしようが、周りがライバルだと煽るだけでジェラシーという感情を持たなかった。むしろ、今は私の方が落語界に貢献しているのではないかという自負がある。昼のテレビに毎日着物で出演するのは、落語に関心のない人たちに落語を意識させるきっかけになるからです。テレビで私は敢えて醒めたコメントを意識していますが、それは『常に笑いを取ろうとする』という一般的な落語家のイメージを崩したいからです。これだけ落語界のことを考えているんだから、表彰してもらいたいくらいです(笑い)」


 落語を愛してやまない生粋の“落語バカ”立川志らくがこの道に入ったのは、育った家庭環境が少なからず関係している。長唄の師匠の母とクラシック・ギタリストの父。とくに落語好きだった父の影響は大きかった。


「中学生の時に父と一緒に見たNHK『なつかしの名人会』という番組で、三代目三遊亭金馬師匠の『薮入り』が衝撃的でした。父の本棚にあった落語全集を漁るように読み、名人たちのレコードを毎日聴き、寄席にも通うようになった。だから今でも当時覚えた落語はまくらから全部コピーできます」


 16年かけて203席を演じる予定で、2015年から始めた独演会「立川志らく落語大全集」のチケットは、発売即完売というからその人気のほどがうかがえる。


「この先、テレビで得た知名度をどれだけ落語に還元していくかが大事。地方に行くと、落語が好きじゃなくても“テレビに出てる人だから”ってだけで来てくれる。そうやって落語のすそ野を広げるのが役割だと思っています」


 将来を見据える孤高の噺家を支えるのは18歳年下の妻と、5歳と1歳の娘たちだ。


「いやぁ、今さらですが、実は人生で一番大事なものが落語から子どもに変わっちゃいました(笑い)。いつ死んでもいいと思って生きてきたけど、娘たちが大人になるまでは死ねません。目下の悩みの種は、忙しい時期に生まれて相手ができなかった下の子が懐かなくて、“近所のオジサン”って目で見ることです(笑い)」


●たてかわ・しらく/1963年、東京生まれ。日本大学在学時に落語研究会OBの放送作家・高田文夫氏に才能を見出され、1985年立川談志に入門。1988年二つ目昇進、1995年真打昇進。映画と古典を融合させた「シネマ落語」を創作するなど落語家として精力的に活動する一方、書評や映画評を執筆、1998年には映画『異常暮色』を監督。現在『ひるおび!』(TBS系)のレギュラーコメンテーターを務める。6月7日から主宰する劇団「下町ダニーローズ」の公演『人形島同窓会』が下北沢・小劇場B1で始まる(6月17日まで)。


■撮影/江森康之 ■取材・文/大西展子


※週刊ポスト2018年6月1日号

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