新潟女児殺害でもデマ発生、香川3人殺害で疑われた男性の胸中

5月22日(火)7時0分 NEWSポストセブン

山下清氏の自宅周辺には報道陣が詰め掛けた(時事通信フォト)

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 新潟市西区の線路上で小学2年生の大桃珠生さん(7)の遺体が見つかった事件で5月14日、小林遼容疑者(23)が死体遺棄などの容疑で逮捕された。日本中が注目した凶悪事件だが、逮捕までの1週間で、現場ではその存在を報じられない“別の被害者たち”が生まれていた。マスコミの動きやSNSなどを通じて無関係の人々が犯人視される事態が次々と生じたのだ。「サングラスの不審な男がいた」などの情報がきっかけとなり、普段からサングラスをかけた無関係な男性が疑われたりもしたのだ。


 こうした現象は、凶悪事件の現場で頻繁にみられるようになった。


 2007年に香川県坂出市で起きた58歳の女性とその孫姉妹が行方不明となり、その後に遺体で見つかった事件では、姉妹の父親である山下清氏がネットや一部のマスコミから「犯人扱い」された(後に58歳女性の義弟が3人を殺害し遺体を遺棄したとして逮捕された)。


 3人が行方不明の間、山下氏の自宅周辺には数十人の報道陣が常に張り付き、連日のように山下氏の動向が報じられた。ネット上では山下氏を犯人と断定する書き込みが相次ぎ、情報番組の司会者からも山下氏の言動を疑う発言があった。山下氏はこう振り返る。


「違うと言っても、話したことがどんどん怪しいように受け取られ、家族全員が白い目で見られた。真犯人が出てきても、こちらの傷は一生消えない。実はあれ以来、テレビで事件報道は見ないようにしている」


 2009年の「島根女子大生バラバラ殺害事件」では、2016年12月に容疑者死亡で書類送検となるまでに7年余りを要し、その間に無関係の「容疑者」を生んでいた。ノンフィクションライターの小野一光氏はいう。


「警察に“参考人”として聴取された2人を取材しましたが、そうした人にとってみれば疑われたこと自体が不名誉なことであり、周囲との信頼関係も損なわれます。別の真犯人が逮捕されても警察から謝罪のようなものはありません。


 島根の事件のように犯人の目星がはっきりついてない時は、警察があえて参考人やその周囲に“疑われている”ことがわかるように行動することがある。そこで本人がどういう行動に出るか探ろうとする手法です。


 今回の新潟の事件のように犯人の目星がはっきりしている時には、警察も早くから容疑者の行動確認をしますが、メディアが無関係の目撃談や不審者情報を追って“別の容疑者”が作り出されることがある。警察側も、真犯人が自分は疑われていないと安心することで証拠固めの時間を稼げるので、間違いを積極的にたださないこともある」


 ネットやSNSが発展した近年の事件現場の変化は著しいという。


「いわゆる“素人”による犯人捜しが盛んになって、ゲーム感覚でやる人たちが以前に比べて増えています。『怪しい人』の情報が拡散されるのが早い上に、結果的には間違いだったというケースが多い」(小野氏)



 そうした“一億総捜査員”状態について、ネットの誹謗中傷問題に詳しい深澤諭史弁護士はこう警告する。


「昔から『この人が怪しい』という話が出るのはありましたが、今はネットやSNSで情報を集めやすく、匿名での発信や拡散も簡単です。私のもとには誤った情報を流してしまい、訴えられた側の相談も集まってきます。そうした発信をした人たちのほとんどが、訴えられて初めてことの重大さに気づいている。『〇〇が怪しい』という噂の書き込みや拡散行為でも、事実の証明がなければ相手に対する誹謗中傷となり名誉毀損で訴えられることになります」


 事件の解決が長引くほど、こうした“被害者”は増えていく。


※週刊ポスト2018年6月1日号

NEWSポストセブン

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