女性介護士が「ママ」 介護付きスナックがもたらす生き甲斐

5月23日(木)11時0分 NEWSポストセブン

女性スタッフが利用者の飲酒量や呼吸のリズムに気を配る

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 異色の飲食店が群馬県高崎市にある。その名も「介護付き高齢者スナック Go To Heaven」。開店以来、75歳以上の男性客で賑わっているという。


 今年1月にオープンした店を切り盛りするのは、ママで介護士の富澤綾子さん(24)と、准看護師の資格を持つホステス、宮川真紀さん(43)だ。2人の明るい笑顔に、客も上機嫌でグラスを傾けていた。


 店内には、高齢者向けに特化した設備が充実している。血圧計や聴診器、「パルスオキシメーター」という血中酸素濃度の検査機器などが常備されており、スタッフに頼めばいつでも数値を測ってくれる。


 この日、コーラを片手にカラオケで村田英雄の『王将』や、石原裕次郎の『夜霧よ今夜も有難う』などを熱唱していたのは79歳の鈴木善一さん。スナックから車で20分ほどの老人ホーム『和が家あんなか』の入居者で、オープン以来の常連客だ。


「ここに通うようになって、生き甲斐がひとつ増えたような気がするね。酒はもう飲まないけど、盛り場のムードや、若いお嬢さんとの会話が刺激になる。施設にいると、夕食後はひとりでテレビを見ているばかりで寂しいからね。一般のお客さんや他の施設の人とも話せて、ちょうどいい気晴らしになります」


 この日、鈴木さんは歌の合間に血圧と血中酸素濃度を測定してもらいながら、約10曲を歌い上げた。


 アルコールは事前に利用者の家族から同意を得られた場合のみ提供している。焼き鳥と枝豆をつまみに麦焼酎のグラスを傾けていたのは、82歳の藤島肇さん。


「普通の飲み屋だとついグイグイ飲んじゃうけど、ここだとお店の女性がペース配分に気を遣ってくれる。お酒を飲んでバカ話をしているほうが、体調がよくなる気がします」


 日中はデイサービスで働く富澤さんも、スナックの仕事に手ごたえを感じている。


「昼間はボーッと眠そうにされていた方も、お店ではいきいきとした笑顔を見せてくださいます。スナックの気軽な雰囲気だからこそ、普段は言えない体調の悩みを打ち明けられることもあるんです。


 スタッフが症状を聞いて専門医への受診を勧めた結果、早期治療に繋がった例もありました。このお店が介護にかかわる全ての人が語り合える社交場になれたら、と思っています」


 なお、同店には様々な配慮がされており、誤嚥防止のためにドリンクには“とろみ”をつけたり、人気メニューのうどんは減塩仕様。休憩用のベッドもあるほか、ほろ酔いでも転ばないよう、離席時はスタッフが付き添ったりと至れり尽くせりだ。


●取材/清友勇輔、撮影/黒石あみ


※週刊ポスト2019年5月31日号

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