国境を越える特殊詐欺 警察の「国際協力」で縮小できるか

5月25日(土)16時0分 NEWSポストセブン

 電話をかけて始まる特殊詐欺は、言葉の問題もあり国内で完結する詐欺事件だった。ところが、ネット経由で安く電話をかける方法が普及し、国境を越えた活動が特殊詐欺の世界に広まっている。国際化する特殊詐欺の世界について、ライターの森鷹久氏がレポートする。


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 特殊詐欺の「国際化」が止まらない。


 タイのリゾート地・パタヤを拠点に、日本向けに「振り込め詐欺」を行なっていた日本人の男ら15人について、警視庁は逮捕状を請求した。間も無く身柄を日本に移され、日本領に入った瞬間に、航空機内で逮捕される見通しだ。15人の身柄はタイ当局下に置かれており、今なお犯行の全貌は見えてこない。しかし、関係者に取材を進めていくと、驚くほどシステマチックな詐欺のシステムと、日本の暴力団、そして海外マフィアまでが加担する「国際化」の現実も見えてきた。


 今回筆者の取材に応じてくれたのは、九州地方在住の元暴力団の男性(30代)。10代の終わり頃に“警察の暴力団名簿にも載っていた”(男性)というが、週に一度、組事務所の「当番」といわれる泊まり以外に、暴力団らしい仕事をした経験はない。その後、飲食店経営などをやるうちに自然と「カタギの仕事」で生計が立つようになり、暴力団から足を洗った。とはいえ、今も本職との付き合いはあり、かつて所属した組以外の人間とも交流が深い。


「私のように、一応本職ではないが組との付き合いもある、いわゆる“半グレ”が増えたでしょう。半グレはあくまでもカタギ(一般人)だから、なんでもできる。例えば、某広域指定暴力団は“組員に特殊詐欺をさせるな”とわざわざ通達まで出していますが、実際には黙認されている。儲けを出して上納金出す人間にあれこれ言えないんです。組員がこっそりやる場合と、組員が半グレなどにやらせる場合があるが、最近は後者のパターンがトレンド。半グレが特殊詐欺の出し子や受け子を捕まえてきて、暴力団員を介して、詐欺の現場に送る。結局、裏には絶対に暴力団がいる」(元暴力団男性)


 半グレによるリクルートは、先輩後輩、そして地縁を辿って行われてきたが、最近では逮捕されるリスクも高く、末端要員集めは容易でなくなった。筆者がこれまでも書いてきた通り、SNSを通じたリクルートも行われているが、人材の「質の低下」は免れない。その結果、思わぬところからボロが出て、組織もろとも検挙される危険性も高い。そんな時、これら違法組織にとって「渡りに船」ともいうべき新たなパートナーが現れたのだという。「具体的には言えませんが、東アジアを拠点にする海外マフィアです。彼らと日本の暴力団は、かつてもシャブ(覚せい剤)やコカインなど違法薬物の取引においても協力関係にありましたので、必然的にこうなったのかなと。日本で集められた詐欺の末端要員は、暴力団を通じて、現地マフィアが用意するハコ(詐欺の拠点)に送り込まれ、日本向けに詐欺電話をかけまくる。マフィアの息のかかった役所、警察がいるエリアであれば、まず逮捕される心配はない。中国にマレーシア、タイ、フィリピン…。各国に少なくとも数十人ずつの日本人詐欺グループがいます」(元暴力団男性)


 これら海外マフィアは、海外で詐欺拠点を準備したり、詐欺要員たちの監視をするだけではない。お互い東アジアを拠点にしているという「地の利」を、そして社会の相似点を利用し始めた。


「日本で、中国向けに"振り込め詐欺"の電話をしていた集団が一斉に挙げら(検挙さ)れたでしょう。これは、同じ海外のマフィア、そして日本国内の暴力団が関与していると聞いています。東アジアは日本と距離的にも近く、時差もそれほどない為に詐欺電話をかけやすい。また、特に中国と台湾、そして韓国は日本と同様に高齢化社会で、若者が金に困っているという状況」(元暴力団男性)


 3月から4月にかけて、千葉県や山梨県で入管難民法違反で逮捕された台湾籍の男女グループが、中国向けの特殊詐欺で「かけ子」をやっていたとみられると警視庁が発表している。中国の高齢者を標的にした特殊詐欺に関する台湾警察からの情報提供をもとに捜査した結果、彼らの活動が覚知され逮捕に至った。特殊詐欺を摘発するには、国際協力が不可欠となりつつある。


 ともなれば、日本国内で起きたような事件…例えば先鋭化した特殊詐欺集団による強盗殺人事件などが、中国や台湾で起こることもあるのか。大手紙記者の解説。


「実は、日本で逮捕された台湾人が結構(上部)組織のことを話しているらしく、日本当局は海外当局とも情報交換をしている可能性があります。またタイで逮捕された日本人達も、うっすらと“詐欺をする”ことを承知で現地に行ったものの、携帯を取り上げられ監視され、奴隷レベルの生活を送っており一刻も早く逃げ出したかったというのです。警視庁の捜査にかなり協力するのではないか、そう見ています」(大手紙記者)


 日本当局がどうやっても一掃できなかった特殊詐欺集団も、各国当局が束になってかかれば今度は…。淡い期待を抱きつつ、捜査の進展を見守るしかない。

NEWSポストセブン

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