50歳ずん飯尾和樹が振り返る「40歳で食えなくなって清掃のバイトをした話」

5月26日(日)17時0分 文春オンライン

『さんまのお笑い向上委員会』『マツコ&有吉 かりそめ天国』などのバラエティ番組に加え、最近では『獣になれない私たち』『アンナチュラル』などドラマでも幅広く活躍するずん飯尾和樹さん。


 しかし20代でデビューしてから「うだつが上がらない」時期が長く、『いいとも!』レギュラーを経験したあとも「40歳で食えなくなった時期があった」と明かしてくれた。(全3回の2回目/ #1 、 #3 も公開中)


◆◆◆



お笑いコンビずんの飯尾和樹さん


「浅井企画の在庫品」こと、飯尾とやすで「ずん」を結成するまで


—— 初めてテレビに出たのは?


飯尾 小学校で少年野球をやっているとき、取材で出たんですよ。多摩川にジャイアンツのグラウンドがあったじゃないですか。二子玉川の河川敷で自分たちの試合があったんですけど、勝ったので、監督が「じゃあみんなで巨人軍見に行こう」って。そしたら清水クーコさん、清水国明さんの亡くなられた奥さんですけど、当時若者のカリスマの女性で、彼女が深夜番組で取材に来てたんですよ。「どこのファン?」って訊かれてみんな「巨人」「巨人」「巨人」って言って。僕だけ「どこのファン?」「ヤクルト」って答えたら、ずっこけられて、それがオンエアになりました(笑)。


—— 芸人になってから初めてのテレビはいつでしょう。


飯尾 デビューして2年目くらい。フジテレビの『五コマくん』っていう番組があったんですけど、4コマ漫画の5コマ目を埋めろというので、浅井企画チームに入れてもらって、キャイ〜ンと、自分らと、もう1〜2組で30分番組を1回やらしてもらったのがデビューですね。



—— そのとき飯尾さんはまだ「ずん」ではないんですよね。


飯尾 そうですね。小学校の幼馴染みと「チャマーず」というコンビを組んでました。でも1年で解散して、その後、事務所の後輩の村山(ひとし)くんと「La.おかき」というコンビを5年ぐらいやりました。そのコンビの時に奇跡的にウッチャンナンチャンさんの『カボスケ』っていう帯番組でレギュラー出演できたんです。


 村山くんはアイドルが好きで毎年、年末に注目するアイドルを200位くらいまで順位つけてるんですよ。これからの人たちだから全然知らない名前ばっかり。その中で2年連続1位を獲ったのが当時はまだ無名だった菅野美穂ちゃん。「絶対来ますから!」って。それで、アイドルの記事を書いたり、イベントしたり、そっちの方向に行きたいというので解散しました。そのあと2年半ぐらいピンでやってうだつ上がらなくて、最後、「浅井企画の在庫品」こと、飯尾とやすで「ずん」を結成。「リンスとリンスの組み合わせ」でした。なかなか泡立たなかったな(笑)。シャンプーとリンスなら売れたのに、ドラッグストアの在庫処分みたいな(笑)。



キャイ〜ンや関根さんの“注射”で「芸人を続けよう」


—— 芸人になってからバイトはやっていました?


飯尾 してましたね。二子玉川で。二子玉はいまあんなきれいになっていますけど、スケートリンクとか、テニスコートがある東急の施設があったんです。その受付やってました。そこで娘さん連れた高田純次さんを見ましたね(笑)。「お釣り、多めにちょうだい」とか言ったりして(笑)。カッコよかったですね〜。



—— さっき「うだつが上がらない」って言ってましたけど、芸人を辞めようと思ったことは。


飯尾 やっぱり親からは30歳までは好きなことをやっていいとか言われるじゃないですか。だから「La.おかき」を解散して28〜29歳とかになったときに、「そろそろかなあ」って思ったことはありましたね。でも、そういう時に限って、キャイ〜ンや関根勤さんとかと食事に行くと、僕のギャグでゲラゲラ笑って、「飯尾、ホント面白いなあ」って言ってくれるんですよ。「あれ? こんな一線でやっている同期と先輩が言うんだから、まだ行けるのかな?」って。そこで“痛み止め注射”を打って、「よし、あと3カ月」って言って続けてる感じでしたね。ピッチャーだったら肩と肘はもうとっくにやられてるのに(笑)。ホント、20代は床ずれするぐらい寝てばっかりでした。



—— そのころは実家暮らしでした?


飯尾 いや、1人暮らしです。それも芸人を続けられた理由かもしれないですね。やっぱり親が一緒にいると心配するじゃないですか。「ずっと芸人続けて大丈夫?」って。だから芸人やりたいんだったら、1人暮らしをお勧めしますね。



タモリさんに言われた「飯尾はやってることずっと同じだもんな」


—— 芸人として転機になった仕事ってなんでしょうか。


飯尾 もうホントにこんだけチャンス潰してきた人間、いないんじゃないかって思うんですよ。ウンナンさんの帯番組が決まって、そこから仕事増えたんですけど、そこからワーッとブレイクすることもなく、コンビ解散を迎え……で、「ずん」を組んですぐ、関根さんのお陰でもあるんですけど、『いいとも!』のレギュラーになったんです。視聴者から「あの人誰ですか?」って、ファックスがくるぐらいの時期に。そこでも、タモリさんはじめ、藤井(隆)くんとか草彅(剛)くんとか東野(幸治)さんとかいろいろな人と出会えたのは大きかったんですけどやっぱり売れることはなく……。そのころ『内P(内村プロデュース)』にも出させてもらって、それから『みなさんのおかげでした』、『IPPONグランプリ』やさんまさんの特番で、「やっと」という感じかもしれないですね。



—— 『いいとも!』でタモリさんに言われたことで印象的だったことは。


飯尾 スタジオに行くと「おお、来たか」って、いつもやさしく迎えてくれるんですよね(笑)。図々しいんですけど、なんとなく、うちの親父にちょっと雰囲気が似ているんですよ。『いいとも!』から何年か経って、ある正月、タモさんの元付き人で仲良しの岩井ジョニ男さんと、お正月にタモさんちにご挨拶に行かせてもらったんです。ジョニ男さんが「どうしたらもっと上に行けますかね?」って訊いたら、タモさんが「自分が楽しいことやってればいいんじゃないか」って。「飯尾、お前、出会ったときからずっとやってること同じだもんな」と。そのとき「ああ、出会った時からこんなことやってたんだ、進歩ないな」って思って(笑)。でもタモさん曰く、時代を追ったら、絶対追いつかないらしいんですよ。たとえば「替え歌が流行ってるから」とか「フリップ芸が流行っているから」っていって始めると、もう絶対追いつかない。ずっと同じことをやってたら、時代がやって来て、ハマることがある。だから「自分が面白いことだけやってろ」と言われましたね。




40歳になって「あれ?……家賃払えないな」


—— 芸人の収入だけで食べられるようになったのは?


飯尾 最初は25歳くらいのときですね。25から4年間くらいは食えて、解散して一人になったらまた食えなくなって。「ずん」を組んで『いいとも!』に出てまた食えるようになりました。


 でも40歳のときにまた一度食えなくなっちゃったんです。あるとき「あれ? 家賃払えないな」って。以前うちに居候をしていた後輩芸人がいたんですけど、清掃のバイトをしていて。芸人を辞めて、その会社に就職して、さらに独立して清掃会社を立ち上げたんですよ。だから彼に「バイトしたい奴がいるんだけど」って連絡したら、「もちろんいいですよ。飯尾さんの後輩なら。誰ですか?」「あっ、俺なんだけど」「ええッ!?」て(笑)。そしたら社長自ら俺んちまで迎えに来てくれて。バイトして、お昼もすごい豪勢にしてくれて、まるで接待受けてるみたいな感じでしたね(笑)。



—— 清掃のバイトはどのくらい続いたんですか?


飯尾 始めて3カ月ぐらいしたら、またバーッと仕事がきて、食えるようになったんですよ。それで現在に至る感じですね。20、30代前半のときに一緒に過酷なロケをやっていたADの子たちが偉くなってディレクター、プロデューサーになって、ブッキングしてくれたというのもありますね。「飯尾さん、やっと、一緒にできます!」って。だから人に甘えてる。自力なんか、一つもないですよね。 


 たとえばダンディ(坂野)さん、スギちゃんとか、言い方悪いですけど、いわゆる一発当てた人たち。あんな感じにもなってないし、よく簡単に「一発屋」って言って済ませますけど、あんなに芯食う芸人ってホントに何%なんですかね。たぶん1割いない。僕はあそこまでも全然なっていないし。代表作が何だって言われたら、別にない。なんか今でも低空飛行で、お腹こすらないぐらいで飛んでる感じがしますね。もし今度スキマさんとお会いするときに、ブレイクして有頂天になるぐらいのことがあればいいんですけどね。でもそれで調子乗って言葉遣いとかがちょっと変わっちゃってたら、ぶん殴ってください。利き手じゃないほうで(笑)。



(#3へ続く)

写真=山元茂樹/文藝春秋




#1 ずん飯尾和樹50歳が明かす「同期芸人のウド鈴木とコンビを組まなかった理由」

https://bunshun.jp/articles/-/12067



#3 ずん飯尾和樹が語る恩人“出川哲朗”「隊長は僕のお笑いコーチなんです」

https://bunshun.jp/articles/-/12069



いいお・かずき/1968年生まれ、東京都出身。1990年、浅井企画に所属。1991年、お笑いコンビ「チャマーず」を結成しデビューを果たすも、翌年解散。1992年、村山ひとしと「La.おかき」を結成。その後、1997年のLa.おかき解散後からしばらくは1人で活動。2000年に同じ事務所のやすと「ずん」を結成し現在に至る。ボケ担当。


◆6/8(土)〜 WOWOWプライム 毎週土曜 午後10時〜(全4話) 『連続ドラマW ミラー・ツインズSeason2』 出演


◆6/23(日) 開演17:30(〜20:00頃) 『浅井企画 お笑いダイナマイトショー 2019 〜Go Go 高円寺〜』 に出演




(てれびのスキマ)

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