豊川悦司 朝ドラでの巨匠漫画家役で「56歳の魅力」が躍動

5月26日(土)16時0分 NEWSポストセブン

豊川悦司の熱演も光る『半分、青い。』(公式HPより)

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 地位や権力が人を魅力的に見せるとは限らない。愛される「おっさん」でいることは相当難易度が高い。ただ、モデルがいないわけではない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。


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「おっさんの可愛さ」「カワイイおぢさんの魅力」。それを発見できたことが、今期のドラマにおける最大の収穫かもしれません。


『おっさんずラブ』(テレビ朝日系土曜午後11時15分)は主演・田中圭。彼に恋するヒロイン(?)に吉田鋼太郎、その恋敵に林遣都。おっさんらが繰り広げる爆笑純愛物語にWebでは話題が集中。「かわいい」と大評判をとる黒澤武蔵役の吉田剛太郎。公式インスタグラム・裏アカウント『武蔵の部屋』フォロワーは40万人に迫る勢いで、「コンフィデンス」「視聴熱ウイークリーランキング」の満足度調査や視聴熱調査でも堂々1位を獲得しました。


 自慢ではありませんが、このドラマの魅力については開始時に直感し、一早く4月28日の当コラムで触れました。ですので今回はもう一人の真打ち、今躍動している「カワイイおっさん」について触れたいと思います。


 それは、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』で鈴愛(永野芽郁)が弟子入りした巨匠漫画家・秋風羽織を演じている豊川悦司さん。


 秋風羽織という漫画家は、漫画に対してとことん真摯で妥協しない人気作家。名前から女性を想像するけれど、その正体はかなり風変わりな偏屈おやじ。犬とウサギだけを愛し、ロン毛、サングラス、黒装束で身を固め五平餅が大好き。風貌はどことなく佐村河内某を連想させるものが……。


 ヒロイン・鈴愛を事務所に雇うことにした秋風。ですが、あくまで「メシアシ(飯作りのアシスタント)」として。鈴愛の漫画の才能については、評価ゼロ。むしろ「岐阜のサル」「五平餅要員」と呼び捨てて相手にせず。中途半端な情状酌量が皆無で冷淡なところも秋風の魅力であり爽快さかもしれません。


 鈴愛を相手にしない一方で、美しい男には目が無い。鈴愛の幼なじみ、律(佐藤健)を「タジオ」と勝手に名付けてクロッキーのモデルに採用……と破天荒きわまりない秋風先生。ちなみに、タジオとは『ヴェニスに死す』に登場する貴族の美少年の名前です。そう、秋風羽織は、まさか現実にはありえないような虚構的人物なのです。


 ファッションから言葉使い、身振り手振りまで、ふざけたキャラクター。それを徹底して役作りして演じ切っている役者・豊川悦司のパワーは凄い。ありっこないものを、ありそうに変えてしまう演技の力にアッパレです。


 徹底的にキャラクター作りをしている気配は随所に感じられます。例えば、冷凍焼きおにぎりを電子レンジに入れるシーン。電子レンジの扉を開けると、そこに置き忘れた大切なネーム原稿が発見される。このシーン、大きな見所の一つです。クビになっていた鈴愛はそれで救われ漫画家への道を一歩踏み出すのですから。おにぎりの載った皿を持つ秋風の表情、指先の形、そして間合いの取り方。細部の細部まで詰め切っている。このシーンの意味が際立つための演技的計算でしょう。


 しかも、秋風の面白いのはどこか純でカワイらしくて、けなげなところ。5年前に手術したガンが再発したかもしれない、と泣く姿は実にいじらしい。秋風羽織という役柄に56歳の豊川さんの魅力が、はちきれんばかりに詰まっているのです。


 豊川悦司さんといえば、かつては大人の色香漂う二枚目役で鳴らした人。90年代には常盤貴子と共演した『愛していると言ってくれ』で耳が不自由な青年画家のピュアな恋愛模様を描き出して大ブレイク。誰もが知っている有名役者の割に、簡単にはバラエティなどに出ず、テレビでのトークも少なく等身大の姿や実生活についても神秘的なベールに包まれている。ということはつまり、「演技ですべてを判断してください」というメッセージでしょう。


 年をとっておっさんになれば、その年齢だからこそできる魅力的な演技を見せつける。立ち止まらず、年を経るごとに変化していく。そんな輝かしきおっさん役者のけなげさ、カワイらしさにラブを感じます。

NEWSポストセブン

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