「ユーチューバーはテレビの未来を担うか?」小説家・高橋源一郎の“生活と意見”

5月27日(日)7時0分 文春オンライン

50年来のテレビっ子、小説家・高橋源一郎さんは現在のテレビをどう観ているのか? インタビュー後編では、どうして『志村どうぶつ園』が面白いのか、YouTubeのこと、そしてテレビの未来について語っていただきました。聞き手は、てれびのスキマさんです。(全3回の3回目/ #1 、 #2 より続く)



仕事場で語る、高橋源一郎さん



20年ぐらいやってる「日本テレビ番組審議委員」


—— 高橋さんは、今も日テレの番組審議会委員をやってらっしゃるんですね。


高橋 番審はもう20年ぐらいやってるんじゃないですかね。たぶん『うるぐす』が終わった後くらいから。


—— そんなになるんですか。


高橋 気がついたら僕が一番長くやってると思います。だって、最初の頃は、なだいなださんとか、亡くなられた『広告批評』の編集長だった島森路子さんとか、あと、将棋の米長(邦雄)さんとかいらっしゃいましたから。櫻井よしこさんも、あの感じのままでいらっしゃってました(笑)。たぶんやめさせられないのは、僕が番組に文句を言う係になってるからだと思う。


—— 一番厳しいんですか?


高橋 はい。昔はなだいなださんとか厳しかったけど、そういう役の人がいないといけないんです、一人は。それで僕はいつクビになってもいいから厳しいことを言ってるんです。



今はYouTube眺めてる時間のほうが長いかも


—— 今のテレビはどう観てますか?


高橋 もはや番審での番組くらいしか観なくなっちゃいましたね。他で観るのはBSのメジャーリーグベースボールとか、海外のサッカー。バルセロナとか、マンチェスター・ユナイテッドとか……。あんなにテレビっ子だったのに、今はあまり観なくなっちゃったなあ。YouTube眺めてる時間のほうが長いかも。うちの子どもたちがYouTube観てるんで、彼らに教えてもらって観てますけど、あれ、テレビより面白いね。僕、HIKAKINを彼らに教えてもらったんですよ。


—— ユーチューバー。


高橋 ビックリしたんですけど、小学生に「一番尊敬してる人」っていうアンケート取ったら、男女とも1位がHIKAKINだったんだって。確かにあれは、テレビにはいないキャラだよね。とにかくフレンドリー。でもチャンネル名は『HikakinTV』って、テレビを称しているんですよね。テレビの未来の一つの現れなんじゃないかな。



—— 子どもさんは今おいくつですか?


高橋 中2と中1です。もう分からないことは彼らに聞きます。「はじめしゃちょー」とかね。彼の番組って、中身はつまらないんだけど、とにかく展開が速いんですよ。編集テクニックなんでしょうけど、あれに慣れちゃうとテレビはのろくて観てられない。



どうして『志村どうぶつ園』は長寿番組なのか?


—— じゃあ、今、お子さんとご一緒に観ているのはYouTubeがほとんどですか?


高橋 でも、『イッテQ!』と(『ザ!鉄腕!DASH!!』の)「DASH村」は彼らも観たいと言うので観てますね。面白いよね。日テレの人にも「あれはいいよね」って言ってます。やっぱりよくできた番組だと思います。日テレが視聴率高いのが分かりますね。まあ、これもある種の編集技術の成果というか、一つの課題、イモトアヤコの旅だったら、それをどう見せるかが上手いんだと思います。あとこの前、番審で『志村どうぶつ園』を観たんですけど、面白いなあ。



—— どういうところに面白さを感じましたか?


高橋 あれも十何年、番組が続いているでしょう。動物で十何年ってすごいでしょう。だって、普通飽きちゃうじゃない。どうして人を飽きさせないんだろうって考えたんでけど、最近のを観てるとレポーターが動物なんですよ。ひふみん加藤一二三)とか。あの人。人間というよりある種の珍獣に近い(笑)。


—— たしかに動物的。


高橋 動物が動物をレポートしてるっていうのは、そりゃ面白いよね。それから『志村どうぶつ園』のレポーターの女の子(加藤遊海)、ミス・ユニバースの日本代表になったというのにも驚いた。



—— ミス・ユニバースをレポーターにしたんじゃなくて……。


高橋 そう。番組レポーターがミス・ユニバース日本代表になっちゃった。それで、「『志村どうぶつ園』続けていいですか?」って言ったらオッケーが出たそうです。この子はマレーシア育ちで、すごく美人でスタイルもいいんだけど平気でヘビとかつかむの。だから、ひふみんと同じ動物性を感じます(笑)。


—— なるほど!


高橋 日テレの番組審議員をやってて思うけど、日テレは少し先を観て番組や編成を作ってますよね。その日テレの強みというのは、才能を見つける早さにもある気がしています。逆にフジテレビはすごく視野が狭くなってると思います。タレントもすでに売れっ子になってる人を使ってるでしょう。以前のフジテレビは企画もキャスティングも斬新なところがあったのに。


懐かしいですね、『平成教育委員会』


—— フジテレビといえば高橋さんは『平成教育委員会』にも何度か出られていましたね。


高橋 懐かしいですね。思い出すのは、亡くなられた逸見(政孝)さん。ちょうど闘病に入る前ぐらいだったので。いつも疲れてて、大丈夫かなと思ってました……。



——「生徒」として解答席に着席する気分って、どんなものでしたか?


高橋 番組は面白かったですけど、生徒になって問題を解くっていうのはどうも嫌でしたね、真剣になっちゃうから(笑)。成績がいいとブレザーをくれたでしょう。それは毎回楽しみでした。


—— 優等生には何度かなっていましたっけ?


高橋 ブレザー、何度かもらってます。どこか行っちゃったけど(笑)。



たけしさんとは4歳差


—— たけしさんの印象はいかがでしたか?


高橋 シャイな人だなっていう感じですね。僕とあんまり年、変わらないよね。



—— たけしさんが47年生まれで、高橋さんが51年なので4歳差ですね。


高橋 バカなことをするのが好きっていうのが共通してますね。ツービートのテンポの速い漫才がカルチャーになっていく感じと、ユーチューバーがカルチャーになっていく感じってちょっと似てる気がします。どちらとも初期のカルチャーが持っている破天荒な感じ、荒削りなものがあるでしょう。そういう流れって、やっぱり若い子に聞かなきゃいけないねと思っていて、ある意味で今、僕の先生は子どもです。これもこの前、教えてもらったんだけど『UNDERTALE』って知ってます?


—— ああ、なんか名前だけは聞いたことがある。


高橋 ダウンロードして遊ぶゲームなんですけど、できたのが2015年。だから、まだ3年ぐらい。もうすぐプレステ4とかSwitchとかで一斉に出るらしいんですけど、子どもたちが「これいいんだよね」ってやっててゲーム動画を見せてもらったの。こんなすごいものがあるのかと思って久々に脱帽。驚愕のレベルの高さですよ。


『UNDERTALE』の画期的なアイデアにテレビの未来がある


—— もう全然子どもじゃなくて大人がやっても?


高橋 誰でもできる。トビー・フォックスさんっていうアメリカ人が1人で作ったゲームなんですね。クラウドファンディングで。協力してくれた人はいるらしいけど、基本的に1人で作った。この人はもともとミュージシャンなんで、150曲ぐらいこのために作曲したんだけど、一時、ゲーム音楽ベスト100のうち60曲がこの『UNDERTALE』だったんだって。それくらいまず音楽が素晴らしい。もう一つすごいのが、画面がファミコンみたいなの。



—— ドットが粗いんですね。


高橋 完全にファミコンの画面で、わざと超アナログ感を出している。悪魔みたいなキャラが次々出てきて、戦っていくっていうゲームなんですけど、売りは、「誰も殺さないロールプレイングゲーム」。これ、画期的なのはコマンド選択の中に「MERCY(許す)」っていうのがあるんですよ。


—— 許す、ですか。


高橋 やっつけてもいいんだけど、全員殺さないっていう選択もある。それによってエンディングが全部違うの。制作者はそもそも、敵をやっつけるゲームに疑問を持っていたんだそうです。


—— 面白い。


高橋 デジタルネイティブ世代の文化を知ると面白いです。哲学者の鶴見俊輔さんが「若い人は、私たちにないものも持っている」ということをおっしゃっていて、漫画もテレビも世代が遠く離れた文化であっても親しんで接していました。「『寄生獣』は素晴らしい」とまで言うくらいね。その態度って尊敬できるなと思っていて、いつだって、どんな分野であろうと、新しい波を「共感はできなくても理解しようとする」態度は必要だし、もっと言えば新しい感性を取り込むことで、古いものも生きていくことができると思うんです。


 だから、テレビだって、テレビを観なくなったポストテレビ世代からこそ、いろいろ吸収しなきゃならないと思います。僕は番審でも言っているんです。はじめしゃちょーの編集技術とか、『HikakinTV』の持ってる包容力みたいなのとか、『UNDERTALE』の画期的なアイデアみたいなものにテレビの未来があるって。それを踏まえてテレビが創成期に持っていた実験精神にもう一度立ち返ってみたらどうなんだろうって。



テレビには、いつだって実験の気持ちを忘れないでいてほしい


——高橋さんが子どものころ観ていた『源氏物語』のアバンギャルドさとか、『11PM』の挑戦とかは、まさに「実験精神」ですよね。


高橋 テレビはもはや巨大産業、制度になってしまいましたよね。だから実験も冒険もやりにくい状況なんだと思います。でも、それって勿体ないですよね。本当に、僕が夢中になっていた草創期のテレビって、生放送が多かったこともあるけど、何が起こるかわからないスリリングなものだったし、ある種メチャクチャなエネルギーを持っていたと思います。だから、危機の時代にあるテレビは権威を脱ぎ捨てて、無一物の状態から出発すればいいんじゃないかな。


 小説だってそうだけど、文化なんてそもそも卑しいジャンルから徐々に制度化されて、いつのまにか「芸術」と崇められてしまう運命を辿りがちなんです。でもそれに寄りかかっていては「次」はないですよね。だから僕を形成してくれたテレビには、いつだって実験の気持ちを忘れないでいてほしいって思います。



#1 テレビっ子歴50年! 小説家・高橋源一郎「朝まで生テレビに出るわけないでしょ」

http://bunshun.jp/articles/-/7503


#2 “競馬する小説家”高橋源一郎が語る『うるぐす』とダービーと『カルテット』

http://bunshun.jp/articles/-/7504


写真=鈴木七絵/文藝春秋



たかはし・げんいちろう/1951年広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長編小説賞優秀作を受賞しデビュー。88年『優雅で感傷的な日本野球』で三島由紀夫賞、2002年『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞、12年『さよならクリストファー・ロビン』で谷崎潤一郎賞を受賞。6月7日より『日本文学盛衰史』が平田オリザ脚本によって舞台化される( http://www.seinendan.org/play/2018/01/6542 )。




(てれびのスキマ)

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