テレビ解説者・木村隆志の週刊テレ贔屓 第21回 『深イイ話』“看板に偽りあり”という最高のホメ言葉

5月27日(日)21時0分 マイナビニュース

テレビ解説者の木村隆志が、今週注目した"贔屓"のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第21回は、21日に放送された『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系、毎週月曜21:00〜)をピックアップする。

同番組は、さまざまな人に密着して見つけた“深くてイイ話”を1分間に凝縮させて紹介する、人物ドキュメント+トーク型のバラエティ。2008年のスタートから今年2月で放送10年を突破したこともあり、日テレを代表する人気番組の1つと言っていいだろう。

今回のテーマは、「男よりたくましい女性は本当に幸せなのか?」。瀬戸内寂聴の弟子で移住コーディネーターの小林陽子さんと、平昌五輪・スピードスケート女子団体パシュート・金メダリストの菊池彩花さんに密着。必ずしも知名度の高い人選でないところに、この番組と日テレの持つ強みが潜んでいそうだ。

○「グイグイ姉さん」「空き巣スタイル」の言葉遊び

小林さんは専業主婦だったが、約40年前に地元の徳島で開催された「寂聴塾」への参加をきっかけに文才が開花。「6年もの長期に渡ってエッセーを連載していた」という。小林さんを「前のめりなグイグイ姉さん」と呼び、寂聴の自宅へ勝手に入る様子を「空き巣スタイル」と名づけ、ナレーション&テロップで笑わせる言葉遊びは、当番組の十八番だ。

現在の仕事は、空き家や人口減の問題を解決し、格安で移住をすすめるコーディネーター。「5年で2500人を徳島県に移住させた」というから、かなりのやり手なのだろう。ただ、もともと小林さんは17年に渡ってオペラ招聘プロデューサーとして、たった1人で300公演以上を手掛けた経歴の持ち主。その後、「5000万円から1億円の借金を抱えて自殺も考えたが、何とか立ち直った」というから波乱万丈だ。

番組は小林さんに密着しつつも、その口から語られるのは、「大きな波の時は全力で乗りなさい」「超一流のものと接しなさい」「好きなことをしなさい」など寂聴の教えばかり。当番組はこれまで寂聴を「生き仏」と呼び、高級な肉や魚を食べ、ブランドをまとう姿をイジリ続けてきた。言わば、小林さんは少し角度を変えたスピンオフであり、寂聴は当番組の鉄板コンテンツなのだろう。

続いて、平昌五輪金メダリストの菊池さんが登場。5人姉妹の二女で、長女以外の4人がスケート選手かつ五輪アスリートというからすごい。全員独身のため、「今田耕司と結婚してもいいか、死んでもなしか」を問う恒例の企画へ。五女「なし」、四女「なし」、三女「なし」、二女「なし」、長女「あり」。今田は大喜び……これも当番組の十八番だ。

姉妹の母親は子育ての秘けつを「できるだけ平等に。買ってあげるものも規制も同じ。時代が変わっても同じ」と語る。その教えを受けた姉妹は、「姉の記録を下の妹が塗り替える。その記録をさらに下の妹が塗り替える」という結果で応えてきた。

しかし、菊池さんは金メダル獲得から約1年半前のある日、転倒で負傷し、約25㎝を切る大ケガ。選手生命の危機に陥ってしまう。どん底の状態を救ったのは、「一度決めたことは途中で投げ出さない」という両親の教えだった。純粋にスケートを楽しむことで以前よりもタイムが伸び、金メダルにつながったという。

最後に菊池さんが「不安とか、先のことでいろいろ考えそうになったときは、見たりさわったりとかして……」と語り、自らの希望であえて傷跡を残していることを明かし、密着は終了した。
○「旬の女性に密着」舵を切った抜け目なさ

このとき番組は40分を経過。ようやく「深イイ」と「う〜ん」の判定が行われ、高橋真麻、稲村亜美、ギャル曽根、岡副麻希らスタジオゲストの名前が表示される。それぞれのコメントは数秒程度にすぎないこと、話術や経験の深い人選でないことを見れば、「トーク要員ではなくワイプ要員」という現実が浮かび上がる。

同番組は2008年2月のスタートから2014年2月のリニューアルまで、番組名通り、「1分間にまとめた“深イイ話”を次々に流していく」という構成だった。小刻みなコンテンツ、シンプルだけどお得。ネットの普及が一気に進んだ時代らしい斬新な番組として受け止められていたが、人物にフィーチャーする構成に変わった現在は、「いかにも日テレ!」の番組となっている。

『行列のできる法律相談所』『1周回って知らない話』『今夜くらべてみました』『しゃべくり007』『ダウンタウンDX』。いずれも、旬の人物にフィーチャーする日テレ系列の番組であり、構成や演出をグラデーションのように少しずつ変えている。

なかでも似ているのは、『行列のできる法律相談所』。島田紳助さんをメインに立ち上げた両番組は、どちらも「看板に偽りあり」と言われても仕方がないほど、番組名と内容にかい離が見られるが、それは必ずしも悪いことではない。どちらも当初の構成や演出をわずかに残しつつ、視聴傾向の変化に合わせてメインコンテンツを変えているだけだ。

リニューアル後は、テレビの優先順位が高い人は「日テレはうまい=抜け目ない」、低い人は「日テレはあざとい=ずるい」と、その印象は両極端。ただ、「リアルタイム視聴傾向の高い人々をしっかりつかまえている」という事実は揺るぎなく、他局はそれに並ぶ策を見い出せていない。他局のテレビマンが口惜しそうに漏らす「看板に偽りあり」は、ホメ言葉と言っていいだろう。

もともと月曜夜は、月9ドラマ(フジテレビ系)、『SMAP×SMAP』(同)、2時間ドラマ枠(TBS系)など、「特に女性視聴者が多い」と言われる曜日。それを意識して密着相手をほぼ女性に限定し、女性の好むテーマを貫いている。やはり、日テレの「うまさ=抜け目なさ」が光る番組ではないか。

番組スタート当初、まだ日テレのアナウンサーだった羽鳥慎一に取材したとき、「本当にいい番組なので、ずっと続いてほしい」と目を輝かせながら語っていた。当時から内容は大きく変わったが、羽鳥の司会ぶりは変わらない。そのきまじめでブレないMCスタイルも日テレらしい「うまさ=抜け目なさ」であり、だから羽鳥はどの局に行っても活躍できるのだろう。
○来週の"贔屓"は…“水戸黄門ばり”の爆発力は健在か? 『スカッとジャパン』

『痛快TVスカッとジャパン』MCのウッチャンナンチャン・内村光良=28日の放送より (C)フジテレビ

来週の放送からピックアップする"贔屓"の番組は、28日に放送される『痛快TVスカッとジャパン』 (フジ系、毎週月曜19:57〜)。同番組は、日常生活にあふれるイライラや不満をスカッと解決する再現ドラマ型のバラエティ。

木下ほうかの「イヤミ課長」や、菜々緒の「エリカ」などの名物キャラを生み出し、若手俳優を起用した「胸キュンスカッと」などのヒット企画も多い。かつて月曜20時の定番だった時代劇『水戸黄門』(TBS系)を思わせる勧善懲悪の爆発力は、放送開始から3年半がすぎた今なお健在なのか、チェックしていく。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20〜25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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