和久井映見と片平なぎさ 元アイドルの「女優力」に高評価

5月27日(土)16時0分 NEWSポストセブン

人生経験も演技に影響か(和久井映見)

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 女優は生まれながらにして女優なわけではない。キャリアの変遷が良い影響を与える場合もあればそうでない場合もあるので、芝居は難しく面白い。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。


 * * *

「えっ? まさかあの人が」。


 意外な魅力を放つ役者の姿を発見することは、ドラマ視聴の大きな楽しみの一つ。しばらくぶりに見た姿に、ついつい目を奪われてしまう。過去とはまたひと味違った演技力をつけた役者に、ほれぼれしてしまう。年を重ねることは意味あること──そう納得させてくれる演技に心を奪われる幸せ。今放送中のドラマの中で、そうした役者さんを挙げるとすれば……。


 筆頭はやっぱり、和久井映見さん。


 NHK朝ドラ『ひよっこ』でヒロイン・みね子(有村架純)や時子(佐久間由衣)ら若い女性たちが就職した東京・向島のトランジスタ工場。和久井さんが演じる永井愛子は、女子工員たちの生活の面倒を見る監督・舎監。いわば、「お姉さん」として、若い女工たちの世話を焼いています。


 中年になった和久井さんの演技が、実にキラキラと輝きを放っている。彼女らしさが際立っている。出演者の中で頭ひとつ抜け出ている──そう言ってよいのではないでしょうか。


「工員を監督する舎監」としてはおっちょこちょいで、どこか頼りない。性格は天然系で少し素っ頓狂。けれども実は、舎監になる前は女工だった愛子。だから、若い工員たちの苦しい気持ち、嬉しい気持ちが手にとるようにわかる。そんな奥の深い人物です。


 プライベートでも戦争で恋人を亡くし絶望と向きあってきた人。過酷な過去を乗り越えた分、活き活きとして明るく、芯が強い。そんな愛子像を、和久井さんは実に楽しげに軽やかに、独特な声色と雰囲気によって浮かび上がらせています。


 愛子という人物は陰影を感じさせつつも、「昭和」という時代の明るさの結晶。多くの人は愛子の姿から、かつて日本の社会にあったほがらかさや希望、太陽のようなあたかみといったものを感じとっているのではないでしょうか?


 和久井さんご自身も波乱の人生を乗り越えてきたようです。若い時は女優・歌手として活躍、ちょっと奥手でふんわり優しい雰囲気で大人気に。しかしその後、俳優・萩原聖人さんと結婚し子供も産んだけれど離婚、シングルマザーとして育ててきた。紆余曲折、様々な人生経験を踏まえて、その上での今回の愛子役。だからこそ、深味があってかつ太陽のような明るさがある。確かな芯を感じます。


 もう一人、注目の人を挙げるとすれば、片平なぎささん。


『リバース』(TBS系金曜午後10時)では謎の死をとげた広沢由樹の母・昌子を熱演しています。息子の事故死をどうしても受け入れられない母は、必死に情報を集めようとする。片平さん演じる疲れた母の姿が、切なくて凄味があって怖い。白髪交じりの毛を振り乱し真実に迫ろうとする母親像。画面に映る時間はさほど長くはないのに、鬼気迫る雰囲気が異様で、印象深く視聴者の中に刻みこまれるから不思議です。


 片平さんもかつてはぴかぴかのアイドルでした。そして「2時間ドラマの女王」を経て、今回はミカン農家の母。愛媛弁を使いこなし息子に対する凄まじい執念を浮き彫りにしていく。


 演技、筋立て、演出力、ともに緊張感に包まれたこのドラマ。最終回は何と、オリジナル脚本が用意されている。原作者・湊かなえさんがわざわざドラマのために書き下ろすというのですから目が離せません。


 役者の新しい魅力を発見することは、ドラマ視聴の大いなる楽しみ。そうした役者の力を引き出すドラマを高く評価したい。視聴率という「数字」だけがドラマを測るモノサシではないことを、和久井さんや片平さんの演技が教えてくれています。

NEWSポストセブン

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