AbemaTV『全日本女子パリピ選手権』は「夜のTED」だった

5月27日(日)16時0分 NEWSポストセブン

レディ~コンパ!のかけ声で始まる(イラスト/ヨシムラヒロム)

写真を拡大

 2015年ギャル流行語大賞1位に選ばれた「パリピ」とは、パーティーはもちろんクラブやフェス、合コンなどノリの良い社交的な場所が好きな人たちのこと。2000年頃に「パーティーピープル」(パーティー好きな人々)という言葉が日本に持ち込まれ、英語の発音を短く縮めた「パリピ」となって意味も変容した。そのパリピ、なかでも女子がチームで優勝を目指す選手権がAbemaTVで中継された。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、『全日本女子パリピ選手権』が、まるでコンパのエキスパートによる特別カンファレンス「夜のTED」に見えた理由を考えた。


 * * *

 時代の移り変わりは常にTVから流れてきたが、それも変わりつつある。5月12日、AbemaTVで配信された『全日本女子パリピ選手権』を見て、そんなことを考えた。


 この番組は、昨年夏に行われた『全日本パリピ選手権』の女子バージョン。ルールは男女共に同じ、最強のパーリーピーポー集団を決める一大イベントだ。早口で発音したときの音から彼らをパリピと呼び、パーティーにおける技術を競わせる。その実態は、コンパ技術の競技会。番組内でも“競技コンパ”なるフレーズが多用される。


 ひと昔前なら、コンパとは男性が女性を楽しませるものだった。しかし、それこそアンフェア。女性が男性を楽しませるコンパがあってもいい。「この番組は男女平等だ」、なんて大それたことは言わない。ただ、女性が生き生きと躍動する番組であったことは事実だ。


 11チームによるトーナメント勝ち抜き戦で行われる『全日本女子パリピ選手権』。主な出場チームは、渋谷女子パリピ軍団、六本木1000人喰い軍団、サイバーエージェント女子軍団、エイベックス女子軍団、ニューハーフ軍団、元48パリピ神4軍団、あやまんJAPAN軍団。もう字面だけで面白い。また、パリピのプロということであやまんJAPAN軍団は1回戦を免除され、シードとなる。


 格闘技にも云えるが、結果よりも予想が楽しかったりする。選手データを見ながら、あーだこーだ妄想するのがマニアの喜び。それは『全日本女子パリピ選手権』も同じで。優勝チーム予想をする事前番組が結構面白い。


“パリピ”と聞けば「遊んでるだけでしょ」とイメージする人もいると思う。しかし、パリピにはパリピなりのプライドがあるのだ。そんなことが事前番組では取り上げられる。


 渋谷女子パリピ軍団は、渋谷を根城とし「渋谷代表として負けられない」と宣言。対して、六本木1000人喰い軍団は「男に持ち帰られるんじゃない、女が持ち帰るんだ!」と女性の力を証明するために戦う。サイバーエージェント女子軍団とエイベックス女子軍団の対決は会社のプライドを掛けて。そして、あやまんJAPAN軍団はパリピのパイオニアとして、絶対に負けられない戦いがそこにはある。


『全日本女子パリピ選手権』の解説を務めるカラテカ・入江慎也も「僕は全てのチームと面接したけど、前にやった男よりも女の子の方が熱いんですよ!」とコメント。男なら、中学時代の合唱コンクールで「男子ちゃんと歌って」と女子に注意された体験をしているはず。そんな例をあげずとも、男性よりも女性の方がよっぽど負けず嫌いだったりする。


 司会の田村淳の「レディ〜コンパ!」から始まる競技コンパ、そのルールは意外と厳しい。


 1チーム4人で、4人の男性からなるコンパ相手を楽しませる。その宴会模様を芸能人と視聴者がジャッジ。また、コンパを見極める芸能人が石田純一マイケル富岡、東幹久といった錚々たるメンツ。職業欄には「俳優」と書きそうだが、いずれも遊び慣れた大人というイメージが強く、近年はバラエティ班として腕を奮う面々だ。


 第1回戦は、第一印象、自己紹介、乾杯、ミニゲームを12分間内に収める競技コンパ。アイススケートのショートプログラムのように、全チームが同じ項目を披露する。


 例えば、サイバーエージェント女子軍団はこんな感じだった。


 第一印象では「出会って4秒合体フォト」となる技を披露。言ってしまえば、セルフィーを使いコンパメンバー8人の集合写真を撮るだけ。しかし効果は絶大で。画角に収まるために、身体を寄せ合いグループの一体感を演出。さらに写真の共有を目的とし、グループLINEを作る口実がごく自然に生まれる。


 自己紹介を終えると乾杯へ。サイバーエージェント女子軍団の司会役を務める近藤さんが「右手を振りながら『ズチャ♪ズチャ♪ズチャ♪』とコールしてください」と男性陣に指示。そのコールに合わせて、女子軍団が「ズチャ♪ズチャ♪ズチャ♪乾杯したら、ぐーいっと、ゴクゴク頑張りましょうー!」と歌う。男性陣はベースラインを歌っているだけで、自然とコールに参加できる仕組み。一体感を味わえて距離が近くなったような気分になり、コールひとつとっても意味がある。


 そして、最後に行うのがミニゲーム。ここではオリジナルかつ職種に合ったゲームが求められる。サイバーエージェント女子軍団は、IT企業の名の下に「コロッケゲーム」なるゲームを提案。ルールは至って簡単、グーグルで「コロッケ」と画像検索。表示されるのは大概食べ物のコロッケの写真だが、時折芸人コロッケの写真が混ざる。参加者は「コロッケ、コロッケ、コロッケ、コロッケ」と4回画像をスライド、芸人コロッケの写真を表示させてしまった参加者は飲酒となる。たわいもないゲームだが、画面越しにも面白さが伝わり、思わず爆笑してしまった。


 サイバーエージェント女子軍団は、素人ながらまぁ達者で。最終的に第3位という好成績を収めた。


 第2回戦は、カラオケの持ち歌対決。6分間のカラオケで男性陣をアゲアゲにする技術を争う。そこで、勝ち残った3組が最終決戦へと進む。決勝は再び12分間の競技コンパ。第1回戦と唯一異なるのは、相手がマイケル富岡を筆頭にした芸能人チームとなること。


 そこで躍動したのが、のちに優勝チームとなるあやまんJAPAN軍団。他のチームが芸能人相手ということもあり硬くなるなか、抜群の動きを披露。12分間のコンパを1分たりとも無駄にしない。流動的かつ淀みなくこなす。いや、もうコンパという次元ではない。言ってしまえば、主演あやまん監督、助演あやまん軍団、客演男性陣による12分間のコントだ。全チーム中、あやまんJAPAN軍団だけが第3者の視点を考え、魅せるコンパを展開。定番ネタ「ポイポイ ポイポイポ ポイポイポピ〜♪」があるのも強い。これを見るだけで、ありがたい!という気持ちにさせる。コンパ芸という裏芸で、芸能界を席巻しただけはある。それを全て仕切りるのがあやまん監督。その凄さは、ビートたけし以来となる自らの名前を付けた軍団を作りあげた女傑と書けば分かっていただけるだろう。


 対戦がすすむにつれ、コンパ相手の男性陣を瞬時に見極めることが盛り上げのコツだと気づいた。各対戦の勝敗は審査員による採点と、合コン相手の男子たちからの採点の合計点で争われるため、見て面白いだけでなく、一緒にコンパをして楽しくなければ評価されないからだ。コンパ相手が女性に不慣れな童貞軍団の場合でも同様。そこで性体験にまつわるあけすけなトークをすれば、童貞の機嫌を損ねる。この見極めで見誤ったのが、六本木1000人喰い軍団。


 彼女たちは、初戦敗退した際のコメントで「(コンパ相手の)アスリート軍団がパリピじゃなかったから、私たちに合わなかったの!」と涙ながらに怒っていた。しかし、パリピがパリピとコンパして盛り上がるなんて当然。コンパをしたことない童貞ですらノリノリにさせちゃうムードを演出するのがパリピのプロではないのか、と僕は思う。ゆえに競技コンパ、“技”が必須なのだ。


『全日本女子パリピ選手権』は、エグい下ネタも多い。見ていて不快になる人もいるだろう。しかし、全てはサービス精神がなす技。人見知りと自称し、無口を正当化する人と違って、パリピは人と真っ正面から対峙する。酒の力ありきとはいえ、そもそも初対面の人間と一緒に盛り上がることは難しい。楽しさをプレゼンするといった意味では競技コンパは、「夜のTED」と例えてもいいだろう。

NEWSポストセブン

「AbemaTV」をもっと詳しく

「AbemaTV」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ