工場やコンビニ「外国人がいないとやっていけない」のが現実

5月27日(日)16時0分 NEWSポストセブン

日本のアパレル産業を支えているのは……

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 技能実習を終えた外国人がさらに5年間働ける、新たな在留資格の創設に政府が着手する。日本は外国人が在留資格を得るのが難しい国のひとつだで、労働力確保のためには緩和すべきだといわれながら、議論も制度改革もすすまない。実際には移民の労働力に頼りきりな日本の現実について、ライターの森鷹久氏がレポートする。


 * * *

 九州某県の国道沿いに佇む、周囲は田畑に囲まれたかつて飲食店だった建物。午後10時ころ、十数人のアジア系の女性が建物から出てくると、そのまま列をつくって数百メートル離れた場所にある寂れたアパートへ向かう。一部屋に三人ずつほどだろうか、アパートの全四部屋にそれぞれ分かれて入っていった。こんなところになぜ多くの外国人が……、と違和感を覚える光景だが、近隣住民にとっては見慣れた日常だ。


「ああ、Aさんの縫製工場のこと? 外国人の若いお嬢ちゃんが研修に来とらすんよ。もう10年以上経つねえ。以前はみんな中国人やったけど、最近はベトナム人が多かごたるね」(近隣住民)


 主に婦人向け衣料を仕立てているA氏の工場。世界的に有名な高級ブランドのアイテムも取り扱っていて、「こんな田舎であの有名ブランドの服が作られているとなんて、と驚かれる」と話すA氏だが、アパレル業界に吹き荒れる安い「ファストファッションブーム」や、超大手衣料品店との競合に疲弊し、財務状況はとても良いといえる状態ではない。


「十数年前から“外国人技能実習制度”を利用し、中国やベトナム、タイなどから若い女性の研修生を迎え入れている。研修生にはうちの高い技術を覚えてもらい、国に帰って産業発展に貢献してもらう……というわけですが……」


 以前は日本人のスタッフと研修生の比率は5:1程度だったが、現在では逆転し1:5。その日本人スタッフも、全員がA氏の親族で、もはや研修生なしでは会社が回らないといった状況。A氏が苦々しい顔で続ける。


「研修生なんて呼び方だけで、はっきり言えば安い労働力として来てもらっている。うちはフルタイムで働いてもらっても月に10万円も出せない。そんなんじゃ日本人は誰も働いてくれませんから、研修生に頼っている。研修生には国からの補助金も出るし、それで差額を埋めている、といった感じでしょうか」


 財務状況の良くないA氏の工場にとって、安い賃金で、そしてまじめに働く外国人研修生は、ありがたい存在どころか、もはや「外国人研修生」の存在が前提でないと、運営すらできなくなっている。そんな外国人研修生について「まるで奴隷だ」という指摘の声も上がっており、業務内容のきつさに脱走したり、犯罪に走る外国人を作り出しているという現実もある。


「高い金は払えませんから、週に一度は自宅に招いてみんなに食事をふるまったり、一か月に一回は、都会のほうに買い物に連れて行ってあげたり、遊んだり……。彼女たちも工場の経営が厳しいことを何となくわかっていて、無報酬の残業や休日出勤だって厭わずにやってくれる。ダメなのはわかってます。でも、もう無理なんです……そうしないと」


 四か月前、A氏の工場に突然現れたのは「労働基準監督署」の職員数名だった。タイムカードなど、スタッフの勤怠チェックから会社の財務状況、スタッフ寮であるアパートの検査に、スタッフ一人一人への聞き取り調査が行われた。A氏は真っ青になった。


「最近は外国人研修生もいろんな知識を持っていて、誰かが労基に連絡したのでしょう……。(労基に)入られるとアウトな状況でしたから、これで何もかも終わると思いました……」


 労基による“ガサ入れ”の結果、A氏の工場で残業代など、時間外労働への賃金の未払い、定められた時間以上にスタッフに労働を課していたことなどがすべて指摘され、工場の操業停止を余儀なくされた。


「誰が“チクった”なんてどうでもいいんです。女性スタッフもみんな泣いてました。遅かれ早かれこうなることはわかっていた……」


 研修生たちは、一部が別の工場に引き取られ、大部分は母国へ帰った。業務を以前の10分の一以下にして、細々と業務を続けているが、近く廃業の手続きに入るという。A氏は、よくない例えだが、と前置きして外国人研修制度に頼ったときの心境を振り返った。


「研修生は覚せい剤みたいなものでした。苦し紛れに彼女たちに依存して、何もかもを有耶無耶にして、なんとか会社を潰すまいとしていただけ。工場だけでなく、農家や漁師さんも、同じような状況なんじゃないでしょうか」


 東京都内の複数のコンビニ店オーナーである坂本益男さん(仮名・五十代)も、すでに外国人がいないと会社経営が成り立たないと漏らしつつ、我が国はすでに「移民国家そのもの」になったと断言する。


「移民の是非を政府が検討しているでしょう? 全くバカげています。すでに日本は移民国家。都会のコンビニに行くと、ほとんどの店に外国人のスタッフがいますよね。うちも五割以上が外国人。日本人は時給900円のコンビニなんて働きたがらない。人手不足だ、というのも、企業が給料を多く支払えないから人が来ないだけです。だからそこに外国人が来る」


 坂本さんの経営するコンビニ全店舗に、中国人や韓国人、ベトナム人にタイ人、ブラジル人など多くの外国人が在籍している。全員が、語学習得のために来日中の留学生であり、働ける時間も制限されているが、やはり、法律によって蔑ろにされている面は否めないともいう。


「店側は人が足りない、留学生はもっと働きたい、両者のニーズがぴったり合致する。するとどうするか。こっそり働いてもらうことになりますよね。コンビニ業務が“実習”の対象になる、なんて政府が検討していますが、そうでもしないと“回らない”ということを理解しているからでしょうし、取り締まりではどうにもならない状況になっているからです」


 コンビニだけではないだろう。飲食店や小売店など、日本人が敬遠しがちな低賃金、長時間勤務を強いられる現場で、もうすでに多くの外国人が働いていることは、今更だれも否定できないれっきとした事実。人口減少がすすむ日本では、労働力を確保するために外国人に頼らないとならないのは明らかだ。外国人でも日本で働き、税金や保険を払ってでも日本で暮らそうと考えたら、それを選べる制度を本気で考える時期が来ているのではないか。

NEWSポストセブン

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