安倍首相に二重包囲網 ハト派・公明の「STOP THE安倍」勢力

5月28日(水)16時0分 NEWSポストセブン

 憲法改正を掲げ華々しく再登板して1年半、株価の下落でアベノミクスが怪しくなってくると、長期政権の呼び声が高かった安倍晋三首相の求心力にも陰りが見えてきた。


 官邸トップダウンで特定秘密保護法の制定や教育改革を指示し、有無を言わせず実行する安倍首相の政治手法は「強い総理」を国民に印象付けた。与党内に異論があっても、これまでは高い支持率を背景に黙らせてきた。ところが、いまや安倍首相は党内のリベラル派に押されている。


 安倍政権の看板である「集団的自衛権の行使容認」の憲法解釈変更を巡り、自民党内から火の手が上がったのは9年ぶりとなる3月19日の自民党総務懇談会だった。


 それまで沈黙していた自民党リベラル派から「集団的自衛権を行使するなら憲法改正でやるべき」との反論が噴出。反対派の急先鋒、村上誠一郎・元行革相は「政府が関連法案を出すなら反対する」と断言した。


 加えて、「安倍包囲網」を主導するのが公明党の山口那津男・代表だ。佐藤国対委員長の発言が飛び出した日の夜(3月25日)、山口氏は自民党反対派の村上氏、民主党の岡田克也・前副総理、結いの党の小野次郎・幹事長と4者会談をもった。会談を呼びかけた小野氏が語る。


「国民的議論がほとんどないまま、一政権の判断で憲法改正に等しい解釈変更をしようとする安倍首相の政治手法は間違っているという認識で一致した。村上さんには『山口さんは苦労している。野党はもっと声をあげたらどうなのか』とハッパをかけられた」


 公明党代表自らが与野党横断の「反安倍会合」に参加したのは、首相に正面から匕首を突きつけたに等しい。公明党票に支えられた自民党内で反安倍の声が強まるのは当然だ。安倍首相は、自民党内のリベラル勢力と、与野党をまたぐ自公民結の“ストップ・ザ・安倍”勢力に二重の包囲網を敷かれて身動きが取れない状況に追い込まれた。


 いまの安倍首相に包囲網を跳ね返すだけの力はない。原因は、政権基盤の弱体化と外交の行き詰まりだ。もともと安倍首相は党内基盤が強いとは言えず、前回総裁選での議員得票はわずか54票(1回目投票。当時の自民党議員は衆参198人)だった。それを補っていたのが日本維新の会、みんなの党との太いパイプだ。


 維新の会は一時安倍氏を党首に担ごうとしたほどだし、第1次安倍政権の閣僚だったみんなの党の渡辺喜美・前代表は「連立参加を打診していた」(自民党役員)といわれる。安倍首相は「改憲支持勢力」の両党を背後に従えていると見せ、9条改正に慎重な公明党を「いつでも連立組み替えできる」と牽制して国会を思い通りに動かしてきた。


 しかし、その基盤は脆くも崩れ去った。決定的だったのは盟友の渡辺氏が8億円借り入れ問題でみんなの党代表を辞任したことだ。維新の会も地盤の大阪府議会や市議会で自民党と対立関係にあるため、統一地方選が近づけば政権と距離を置かざるを得ない。首相は切り札を失った。


■文/武冨薫(ジャーナリスト)


※SAPIO2014年6月号

NEWSポストセブン

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