大前研一氏、独を参考に人口の10%目標に移民受け入れ制度を

5月28日(月)16時0分 NEWSポストセブン

大前氏は移民を受け入れよと訴える

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 人口が減少する日本において、労働力の不足は大きな問題である。解消法としては、年齢や性別に関わりなく、誰でも働きやすい社会になることに加え、移民の受け入れ推進がよく話題になる。経営コンサルタントの大前研一氏が、日本が外国人労働者を受け入れるには、どんな制度が望ましいのかについて提言する。


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 日本政府が来年4月をめどに外国人労働者向けの新たな在留資格を作ると報じられた。「特定技能(仮称)」というもので、働きながら技術を学ぶ最長5年間の「技能実習」を終えて帰国した外国人が、一定の要件を満たせば、さらに日本で最長5年間就労できるようにする方針だ。人手不足が深刻な農業、介護、建設、造船などの業界を対象にするという。


 だが、日本に通算10年間住んでもよいと言いながら、この新資格では永住権までは与えられない。法務省の「永住許可に関するガイドライン」には法律上の要件の一つに「原則として引き続き10年以上本邦に在留していること」という項目があるが、技能実習と今回の新資格で通算10年間日本に在留しても、「引き続き」ではなく、いったん帰国するので、直ちに永住権取得の要件を満たすことはできないとされる。なぜそのような理屈をこね回した役人的で中途半端な資格を新設するのか、その理由がそもそもわからない。


 では、どうすればよいのか? 私が『新・大前研一レポート』(講談社)の「日本を変える法案集」の「国籍法」で25年も前に主張しているように、通算10年間も日本で働き、永住を希望する外国人には、2年間かけて技能だけでなく日本語や日本の文化、慣習、法律、社会常識など「日本人」としての教育を義務付け、それを修了した人には永住権(アメリカのグリーンカードに相当)を与えて移民を受け入れていくべきだと思う。


 たとえば、ドイツは第2次世界大戦後の1950年代以降、人手不足を解消するためにトルコ、ギリシャ、イタリア、ポーランドなどから移民を積極的に受け入れてきた。当初はドイツ人との確執などによるトラブルもあったが、今では国民の5人に1人が「移民の背景」を持つようになり、社会は非常に安定している。


 なかでもトルコ人は最も割合が大きく、ドイツ全体で300万人に達していると言われる。苦労しながら死にもの狂いで働いた1世に教育重視で育てられた2世の中からは、政財界や学術分野などで優秀な人材も登場している。むしろ、今やドイツはトルコ人がいなければ社会も経済も成り立たないほどになっていると言っても過言ではないだろう。


 さらに、ドイツで育ったトルコ人が祖国に帰り、経済発展の柱として目覚ましく活躍している。たとえば、トルコ西部イズミルにあるドイツの高級ファッションブランド「ヒューゴ・ボス」の工場は非常に業績優秀なことで知られているが、そこで主力になっているのはドイツから帰国した人たちだ。彼らはトルコ語とドイツ語のバイリンガルなので、トルコとドイツの関係強化にも大いに貢献している。


 日本では、中国人やベトナム人など在日外国人の犯罪が時々クローズアップされるが、外国人労働者が定着して正規の教育課程を経た永住者が増加すれば、親日的な人が増えて国同士の関係も親密になっていくはずだ。それは長い目で見た時の安全保障にもつながるだろう。当初は日本人との間がぎくしゃくするかもしれないが、いずれはドイツのように安定するから、とりあえず人口の10%くらいをターゲットに移民(永住者)を受け入れていく制度を確立すべきだと思う。


 前述した外国人に対する2年間の日本適応教育には、戦時中の“皇民化教育”を思わせるといった批判的な意見があるかもしれないが、それは違う。


 私はかつて、成人年齢を20歳から18歳に引き下げるのであれば、高校までを義務教育にして、最後の1年間に社会人としてのルールとマナー、自動車の運転、ファイナンシャルプランなどの知識を教える。それを修了したら、晴れて「日本の成人の条件」を満たした者と認め、成人とすべきだ、と書いた。それと同じように、日本に長く住んで永住を希望している外国人に対しては、私が日本人の高校卒業者に課すことを提案しているような「成人になるための条件」をクリアしてもらうことを要件にすればよいのである。


 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(2017年)によると、日本の総人口は2053年に1億人を割って2065年には8808万人となり、生産年齢(15〜64歳)人口は2065年に4529万人にまで減少すると見込まれている。生産年齢人口の減少はGDPの減少、すなわち国家の衰退を意味する。これを反転するには、長期的視野で移民受け入れに本腰を入れるしかないのである。


※週刊ポスト2018年6月8日号

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