「ネットde真実」 ズレた正義に目覚めて無駄な行動力を発揮

5月28日(月)16時0分 NEWSポストセブン

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏

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 インターネットでは、ユーザー好みのページを自動的に表示するシステムが行き渡っているため、意識しないと受け取る情報が偏ってゆく。そして、チェック機能が十分に働いていない情報も飛び交っているので、慎重にその真贋を確かめる必要がある。いわゆる「ネットde真実」に目覚める恐ろしさについて、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が解説する。


 * * *

「ネットde真実」という言葉がある。簡単にいえば、「マスコミは報じないけどネットで発見した真実」といった意味だ。「だからマスゴミは信用できない」という言葉とともに「ネットにこそ真実が存在する」と書かれるが、ガセネタであることも多いうえ、マスコミはすでに報じていることも常である。その「ネットde真実」の情報を基に、ズレた正義に目覚めて無駄な行動力を発揮することもセットになりがちだ。


 それがよく現われたのが、朝鮮学校への助成金交付などを求める声明を発表した全国各地の弁護士会に対し、大量の懲戒請求が寄せられた件である。ブログ「余命三年時事日記」が懲戒請求を煽ったことにより殺到したが、日弁連によると2017年は約1000人から約13万件の懲戒請求が寄せられたという。そして、これらの多くが同ブログに起因するものだという。結果的に複数の弁護士が業務妨害と精神的苦痛を負ったとして、和解条件の提示と訴訟への言及を行なった。


 テレビ朝日の情報番組に出演した懲戒請求者(40代女性)は「『懲戒請求』というシステムのことをよく分かってなかった」「そのブログが言っているんだからこれは正しい方法なんだろうと思い込んで賛同してしまいました」「どれだけの賠償をしなければいけないんだろうと思って本当にドキドキが止まらない」と述べた。


 これは(1)嫌韓・嫌在日ブログが差別を扇動→(2)韓国・在日嫌いネトウヨが「ネットde真実」を知り、たいして考えもせず呼応→(3)弁護士反撃という流れになる。


 弁護士の佐々木亮氏のツイートが「ネットde真実」がいかに愚かかを端的に表わしている。佐々木氏は電話で懲戒請求者と喋った。


〈私「ところで、なんで私を懲戒請求したの?」男「名前があったので、申し訳ありません。」 私「でも、私は朝鮮学校のことなんて何もやってないよ?」男「えっ?」私「えっ?」〉


 佐々木氏はネットに出回る「反日弁護士」リストになぜか入れられていたのだろう。請求者は、「ネットde真実」により主張以前に攻撃対象を間違えて誤爆してしまった。


 昔から「在日は水道料金無料」「在日には弁護士試験一次試験免除」などの「ネットde真実」があるが、これを機に、「せめて行動する前に事実確認を徹底して調べる」風潮が生まれた方がいい。


「ネットde真実」は医療情報でも存在する。1リットルの食塩水を起きてから20分以内に全部飲むと腸内が洗浄され、やせるというものはその一つだ。昨年まで各所で見られたが、内臓に負担がかかり、死に至る危険性も指摘され今は軒並み削除されている。


 医療情報はネットで見る時代。先日、パーキンソン病に苦しむ知り合いの自宅へ行った。広告費稼ぎを狙う意図が見え見えの信憑性が薄そうなサイトのパーキンソン病に関する情報を見て「この手術しかないかな……」などとやっている。「あまり信じない方がいいぞ……」と思いながら彼の動きを見ていたが突然怒りだした。サイトの下の方に「500万円をすぐに稼ぐ方法教えます」の広告が出てきたのだ。


 高額の治療費が必要な彼に対し、怪しげな情報商材を売りつけようとしているのだ。「こんなインチキ広告をオレに見せるなよ……」と言っていただけに「ネットde真実」にまだ毒されてはいない、と少し安心した。


●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。


※週刊ポスト2018年6月8日号



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