志賀直哉「暗夜行路」の草稿、生前住んだ千葉・我孫子で発見…全集に未掲載のシーンなど貴重なもの

2025年5月28日(水)18時35分 読売新聞

見つかった「暗夜行路」の草稿=我孫子市蔵 小熊太郎吉旧蔵 小熊吉明氏寄贈

市販のノートに鉛筆で 何度も推敲した跡

 志賀直哉(1883〜1971年)の長編小説「暗夜行路」の草稿(下書き)が、生前暮らしていた千葉県我孫子市で発見された。草稿などを集めた全集に未掲載の貴重なものという。我孫子市が発表した。市販のノートに鉛筆で書かれ、何度も推敲すいこうした様子がうかがえるほか、主人公の名前「時任謙作」が「順吉」となっていることが特徴だ。

 我孫子市白樺文学館によると、暗夜行路は志賀が1912年頃に執筆に着手。21年に前編が刊行され、37年に後編が完結した。

 草稿はノート(縦20センチ、横14・5センチ)に49ページにわたって記されており、主人公が友人や妻と花札で遊ぶ場面などが書かれていた。草稿の一部は後編のエピソードに生かされていた。志賀直哉を研究する生井知子・同志社女子大教授に鑑定を依頼し、真筆ノートと確認された。

 志賀は我孫子市の手賀沼湖畔で、15年から23年までの7年半暮らした。ノートには、我孫子に転居する前の手紙の下書きなどが記されていることから、草稿は15年の転居前に書かれたと推定される。

 草稿は、志賀が我孫子を去る際に交流のあった小学校校長の小熊太郎吉に贈られ、昨年4月、ひ孫の吉明さん宅で見つかった。

 志賀は草稿類を保管しており、ほとんどが日本近代文学館に寄贈されている。草稿を人に譲るのは異例で、小熊との深い交流がうかがえる。多くの草稿は「志賀直哉全集」に掲載されているが、今回見つかったものは未掲載という。

 白樺文学館の辻史郎館長は「花札で遊ぶ場面は今までの草稿にはない部分で、暗夜行路研究の欠落部分が埋まったと言える」と話している。

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