日大タックル問題 いっそ選手のレンタルを義務づけてはどうか

5月29日(火)7時0分 NEWSポストセブン

日大・大塚吉兵衛学長も謝罪したが…(時事通信フォト)

写真を拡大

 日本大学アメフト部選手による危険タックル問題は、運動部に根付く悪しき上下関係の範疇にとどまらず、事後対応で火に油を注いだ日大というマンモス組織全体の“腐敗”を露呈する形となった。「日大に限らず、いま共同体型組織そのものの体質が問われている」と指摘するのは、組織学者として知られる同志社大学政策学部教授の太田肇氏だ。


 * * *

 日大アメフト選手の危険なタックル、財務省や文部科学省の官僚が関わった森友・加計問題、財務省の事務次官による記者へのセクハラ発言、その少し前に発生したレスリング界のパワハラや大相撲界の暴行事件、大企業における数々の不正等々、日本型組織の欠陥を露呈する出来事があいついだ。


 いずれの不祥事も、いわば密室の中で絶対的な上下関係によって引き起こされたという構図が驚くほど似ている。一方で、その手口や対応があまりにもお粗末だったため、マスコミや野党のかっこうの餌食になった。


◆共同体型組織の病理現象


 問題を起こした組織には共通点がある。それは閉鎖的で、メンバーが同質的かつ固定化していることだ。


 大学の運動部は強豪になると高校から推薦で入部し、授業そっちのけで部員同士が共同生活を送る。卒業後は監督の推薦で有名企業に就職する。大相撲の部屋では入門した若い子たちを親方や女将さん、先輩力士がまるで実の親子・兄弟のようにして一人前に育てあげる。官僚や大企業の社員も、新卒で採用されると組織や上司に忠誠を尽くし、大きなミスさえしなければ年功的に昇進していくのが普通だ。


 それは典型的な共同体型組織である。


 共同体型組織は厚い壁によって外の世界から隔てられ、内側には絶対的な序列や上下関係が生まれる。そして内輪だけで通用する慣行や掟ができ、メンバーはそれにしたがって行動するようになる。


 監督や師匠からの暴行や暴言、職場のハラスメントやいじめ、法令違反、データの改ざん、書類の隠蔽といった一般社会ではとうてい許されないようなことがさしたる抵抗なく行われてしまうのである。「流れぬ水は濁る」のたとえどおり、組織が腐敗するのは必然的だといってもよい。


 にもかかわらずこれまで改められなかったのは、組織の内側が外の目にさらされることを想定していなかったためだ。


 ところがいまは国民の間に主権者意識が高まり、情報公開の圧力が強まったうえに、インターネットの普及で情報や人々の声は一気に拡散する。一つの事件が発覚すると、閉ざされていた組織の内部が白日の下にさらされ、世間から集中砲火を浴びるのである。


 けれども多くの組織は、いまだに内部が外の目にさらされることを想定していない。そのため事件や不正が明るみに出ても、これまでどおり「内輪の論理」で対処しようとする。もみ消し、口封じ、口裏合わせといった常套手段を用いるばかりで、対策は後手、後手に回る。それが結果として火に油を注ぐことになり、問題を当初の予想以上に拡大させてしまう。


◆強制的な制度改革が必要


 このような同じパターンによる負の連鎖を断ち切るには、大事なポイントがある。それは、不祥事が起きたときに特定の組織や個人に固有の問題として扱ったり、「倫理観の欠如」といった精神論で片づけたりしてはいけないということである。


 この種の不祥事が続発していることからもわかるように、ある意味で日本型組織そのものの体質が問われているのであり、そこにメスを入れなければ今後も繰り返されるだろう。


 前述したように、閉鎖的でメンバーが固定化、同質化した共同体型組織が事件や不正の温床になっている。強固な結束を誇る共同体型組織には長所もあるが、いまの時代には通用しなくなったのである。


 そこで求められるのは、開かれた組織に変えるとともに、異質な人間を加え、メンバーを入れ替えることである。しかし、共同体型組織は多くのメンバーにとって居心地がよく、既得権のしがらみがあるので内側から改革が進むことは期待できない。したがって外から半ば強制的に開放性、流動性、異質性を高めることが必要になる。


 いくつかの対策を提案しよう。


 たとえばアメフトなど大学の団体競技の場合、レギュラーの一定数を定期的に入れ替えるとか、他大学の選手をレンタルするように義務づけてはどうだろう。あるいはチームに留学生を入れることを促進してもよい。メンバーが入れ替わり、外の血も入ってくれば内部の序列が崩れ、理不尽な慣行は通用しなくなるし、他大学への技術の普及や大学間格差の是正にもつながるのではないか。


 大相撲の部屋については、以前このサイトで提案したように若手を対象にFA(フリーエージェント)制度を取り入れれば、密室での暴力やいじめも減らせるに違いない。


 官庁の場合、官民人事交流制度はあるものの、実際には十分に機能していない。やはりここでも幹部ポストの一定割合は民間から、あるいは地方機関のノンキャリア組から登用するよう制度化するとか、省庁をまたいでも自発的に異動できるFA制度を導入することが望ましい。


 ほかにも対策はある。政治経済学者のA・O・ハーシュマンは、組織の中にいる者が不満を解消する方法として、「退出」すなわち出て行くことと並んで「告発」をあげている(『組織社会の論理構造』)。


 いまの時代にその有効な手段はネットへの投稿である。内部情報の漏洩や誹謗中傷の広がりを恐れて内部者の投稿を規制している組織が多いが、ブラック企業の告発がそれなりの改善効果をあげていることを見てもわかるように、用い方しだいでは共同体内部の不正をただす有効なツールとなる。組織のトップは、内部の風通しをよくするため、一定のルールのもとに個人の自由な発言を容認するべきだろう。


 良くも悪くも人間の行動は環境や仕組みによって左右される。組織の中で発生する問題の多くは、組織の構造に原因があるということを見逃してはいけない。

NEWSポストセブン

「タックル」をもっと詳しく

「タックル」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ