PTA不要論に現役会長「退会者のタダ飯感覚は理解できない」

5月30日(火)7時0分 NEWSポストセブン

「PTAは任意だから…」が罷り通るとどうなるのか

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 春の運動会シーズン真っ盛り。子供の学校行事で慌ただしく準備に追われるPTA役員の姿を目にする機会も多いのではなかろうか──。


 いまネットを中心に広がる“PTA不要論”。「任意団体だから入らなくていい」と退会者が続出する現状に、都内某公立小学校でPTA会長を務める足立一晃氏(仮名・46歳)が警鐘を鳴らす。


 * * *

 昨春、タレントの菊池桃子さんがPTA組織の在り方に苦言を呈し、PTA関係者の間で波紋を広げました。


 菊池さんは、自身が民間議員を務める政府の「一億総活躍国民会議」で、「PTAは任意活動なのに全員参加の雰囲気がある」と指摘。働く女性にとってPTA活動が“重荷”になっていると、文科省や政府に組織改革の必要性を訴えたのです。


 彼女は「PTA活動が子供たちの成長や学校教育に貢献してきたことも評価すべき」とも付け加えましたが、一連の発言が「PTA不要論」として一人歩きしてしまった感は否めません。


 案の定、うちの小学校や近隣校でも、このニュースが流れた直後から「PTAは任意団体だから今年度から会費は払わない。活動もいっさい協力しない」という保護者が現れ始めました。


 PTAが任意団体であることは事実ですし、入退会や会費の支払いについて強制力はありません。ただし、これはあくまで建前上の話。公立の小中学校では、PTAへの入会が「暗黙のルール」となっているところが多いのではないでしょうか。


 うちの小学校でも「ポイント制」を導入し、子供が卒業するまでの6年間のうちに、必ず何らかの役を引き受けてもらう仕組みをとっています。もちろん、母子(父子)家庭や介護など特別な事情がある場合は活動を免除していますが、「任意だからやらない」がまかり通ると、保護者間の公平性を保つことが困難になるからです。


◆PTAを巡る裁判


 原則として、PTA側は保護者に「活動への参加をお願い」をするしかありません。私も、PTA活動を拒否する保護者の説得に当たっていますが、「PTAに入会を強制された」などと言われぬよう細心の注意を払っています。何しろ、電話連絡や手紙を送っただけで「脅された」と騒ぎ立て、学校や教育委員会にねじ込んでくる保護者がいるからです。


 PTAの入退会を巡り訴訟に発展したケースもあります。その一つが、全国紙でも報じられ話題となった「熊本PTA裁判」。熊本市内の保護者が市立小学校のPTAを相手取り2014年に起こした裁判です。


 保護者は「PTAに強制入会させられたうえ、退会届が受理されなかった」ことを問題視。PTAに会費の返還と損害賠償を求めていました。一審の熊本地裁は原告の訴えを棄却しましたが、今年2月の控訴審で両者の和解が成立。和解条項として、「PTAが任意団体であり、入退会が自由であることを保護者に十分周知する」ことなどが盛り込まれたのです。


 この裁判をきっかけに、全国の小中学校PTAでは、入退会規則を保護者に明示する動きが広がりました。組織として当然と言えば当然のことだと思います。


 しかし、現在係争中のもう一つのPTA絡みの訴訟には違和感を覚えずにいられません。


 訴えを起こしているのは、長女を私立の中高一貫校に通わせている大阪府の男性。「保護者会を退会したため、長女が中学の卒業式で一人だけコサージュをもらえなかった」と、学校事務局長と保護者会に損害賠償を求めているのです。


◆シュークリームがもらえない


 コサージュは保護者会費で購入されたものでした。男性は、実費負担を申し出たものの保護者会に拒否され、自前でコサージュを用意したといいます。


 また、毎日新聞(電子版/2016年5月20日)によると、この女子生徒は保護者会が用意する中学校の特別給食や、マラソン大会で配られたシュークリームも受け取れなかったのだとか。子供の気持ちを考えると切なくなります。


 しかし、保護者会はあくまでも“任意団体”なのですから、「非会員に特別な計らいをする義務はない」という言い分も成り立つのではないでしょうか。


 たとえば、町内の少年野球チームに対し「活動にはいっさい協力しないが、金を払うから子供を試合に出せ」と言ったらどうなるのか。「子供が可哀想だから出場を認めます」とはならないはずです。


 PTAが携わる行事は多岐に亘ります。文化祭やお楽しみ会、夏休みのサマースクール、交通安全教室などなど、保護者から集めたPTA会費で運営されるイベントはたくさんあります。前述の「コサージュ」のように、卒業式や周年行事で児童に配布する記念品の費用は、原則、すべてPTA会費から捻出されているのです。


 私が知る小学校PTA会長が、PTA活動の参加と会費の支払い拒否を宣言した保護者に「児童がいっさいのPTA主催行事に参加できなくなり、PTA会費で購入した各種記念品を受け取れなくなる」ことを伝えたところ、「PTAが子供を差別するのか!」と怒鳴り散らされたそうです。「タダ飯を食うのは当たり前」というこの感覚。とても理解できません。


◆PTA活動は子育ての一環


 行事や記念品だけではありません。もし、多くの保護者が「PTAは任意!」と活動を辞めれば、子供たちの学校生活はあらゆる面で変化します。


 たとえば現在シーズンまっただ中の運動会も規模を大幅に縮小せざるを得ません。運動会は学校主催の行事ですが、教職員だけでは到底手が回らず、会場の準備から受け付け、観客整理、来賓接待、警備に至るまで、あらゆる雑務をPTAがサポートしているからです。


 PTA委員による放課後の校庭管理も廃止され、子供たちは安全で広々とした遊び場を失うことになります。登下校時のパトロールもなくなりますし、PTAと学校、自治会、行政が連携して行う大規模災害発生時の対応にも支障が出るでしょう。


 近年は、旧来のPTA組織を一旦解散し、父兄によるボランティア組織が活動を引き継ぐケースがあります。


 強制性を排除したアメリカ式の組織運営が特徴的ですが、PTAを完全にボランティア化した結果、現場には「人手不足に悩まされるようになった」「仕事をする人としない人の差がありすぎる」という不満の声も少なからずあるようです。ちなみにこうしたボランティア組織でも、すべての保護者から会費を徴収しています。


 PTAが解散しても、煩わしい行事や活動が完全になくなるわけではありません。面倒なPTAの仕事も「任意ですから!」の一言で片付けず、「子育ての一環」と割り切って協力してもらいたいものです。

NEWSポストセブン

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