官僚OB指摘「したたかな財務官僚はもう安倍総理を見てない」

5月30日(水)7時0分 NEWSポストセブン

財務省は「ポスト安倍」を睨んでいる(時事通信フォト)

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 政界と霞が関が固唾を呑んで注目しているのが、財務省のトップ人事をめぐる駆け引きだ。「最強の官庁」と呼ばれる財務省は事務次官、国税庁長官が不祥事で辞任し、空席が続く異常事態になっている。


 産経新聞5月21日付朝刊では、次期次官の本命とみられていた岡本薫明・主計局長の昇格が見送られ、代わりに国際金融の責任者である浅川雅嗣・財務官、もしくは森信親・金融庁長官の起用が浮上している──と報じられた。


 浅川財務官は麻生太郎・財務相兼副総理の“懐刀”として知られる人物で、永田町では「“浅川次官構想”は間違いなく麻生人事だろう」と見られている。この人事が実現すれば、麻生氏は同省の「守護神」として影響力をふるうことができる。もう一人の次官候補に名前があがった森氏の後ろ盾は菅義偉・官房長官だ。


 政治家が財務次官の人事をめぐって、パワーゲームを繰り広げているのである。


 かつて財務省は「10年先の事務次官まで決まっている」(同省OB)と言われていた。時の権力者から人事に介入されないように、同期入省組が課長クラスになる頃にはその中から「次官候補」を1人に絞り込み、同期全員が盛り立てる。人事のルールを壊すような政治家による抜擢には応じないという矜恃があった。


 ところが、第2次安倍政権になってその人事のルールが崩れていく。きっかけは安倍首相が自分の首相秘書官を務めた田中一穂氏を次官に抜擢(2015年)、財務省はそれを受け入れ、同期から3人次官が続くという変則的な人事が行なわれたことだ。


「人事の鉄則を崩されたことで、その後も佐川理財局長が国税庁長官に抜擢されるなど、なし崩しに政治の人事介入を許すことになって組織防衛の力を失った」(前出・同省OB)


 今回の次官候補も、同省本来の順序によると、次の次官は岡本氏、その次は太田充・理財局長というレールが敷かれている。


 しかし、岡本氏は森友文書の改竄問題で麻生氏による処分対象とみられており、太田氏も自民党に睨まれている人物だ。


 改竄前の森友学園側との国有地売却交渉記録に安倍昭恵氏の名前が書かれていたことについて、太田氏は国会で「基本的に総理夫人だからではないかと思う」と答弁し、財務省の職員が昭恵夫人の影響力を認識していたことを認めたからだ。それに対して、自民党議員から「安倍政権を貶めるつもりがあるから、意図的な答弁をしているのか」と批判された。


 太田氏は「私たちは一生懸命政府に仕えている。それはいくら何でも、ご容赦ください!」と反論したが、その“反逆”がアダとなって「次官の椅子は遠ざかった」(自民党財務族議員)との見方がもっぱらだ。


 政治家による人事介入をはねのける力がない財務省は、「次の政権」での組織再建を見据えている。


「安倍政権は長くてもあと3年しか続かない。その頃、次官になるのは太田局長の後の入省組だ。次官候補は、岸田文雄・自民党政調会長の妹婿の可部哲生・官房総括審議官と藤井健志・国税庁次長に絞られており、2人の温存を図ることが最優先になる」(同前)


 元文科省官僚で京都造形芸術大学教授の寺脇研氏も「財務官僚はもう安倍総理を見ていない」と指摘する。


「財務省はしたたかです。当面は不祥事の傷を最小限に防ぎ、次の総理の下で役所の再建を図ろうと動いている。これからは安倍政権を支えるという選択肢はとらないはずです」


 しかしながら、「ポスト安倍時代」の次官候補にポスト安倍の有力政治家である岸田氏の妹婿が挙げられていること自体、この役所が「政治からの独立」を果たせるのか怪しい。


 その昔、財務省に逆らえば政権は持たないといわれ、トップの事務次官は霞が関ばかりか、政財界を睥睨する存在だった。事実、この役所はいくつもの内閣、何人もの総理大臣を使い捨てにして増税を行なってきた。


 だが、落ち目の安倍政権の政治家の権力争いに翻弄される現在の姿をみると、かつて“霞が関の最高位”と呼ばれた財務次官ポストも政治家の行動も、あまりに軽量級に成り果てたというほかない。


 政治と行政、議員と官僚のギリギリのせめぎ合い、相互牽制がなければ、政治の活力も国のダイナミズムも生まれない。


※週刊ポスト2018年6月8日号

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