ポスト平成の天皇制は沖縄、アイヌ、創価学会との接し方が鍵

6月2日(土)7時0分 NEWSポストセブン

作家の佐藤優氏

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 作家の佐藤優氏と思想史研究家の片山杜秀氏が「平成史」を語り合うシリーズ。国際情報誌SAPIO誌上で行われた対談は最終回を迎え、単行本『平成史』(小学館)としてまとめられた。最後のテーマは、「今上天皇の足跡」となった。


 * * *

片山:今上天皇は昭和天皇のカリスマが付与された上、祭祀への熱心さや災害時での国民と共感共苦する姿勢の顕示によって、公と私のバランスはよくとれていたと思います。


 ところが皇太子になりますと、もっと私の方につっこんでいる印象がある。今上天皇は人間天皇として素晴らしいと言える。それなら皇太子が人間皇太子を突き詰めて、本当に人間になってしまった方がいいのではないですかと言いたいくらいに、あまりに普通な感じになってくるのではないか。それこそ人間天皇の最終型とも言えるけれど、それで天皇像が新たな民主主義的強固さを獲得できるかというと別問題でしょう。


佐藤:私はポスト平成の天皇制と日本社会は、日本の外部空間との接し方で変わると考えているんです。


片山:外部空間ですか?


佐藤 :そうです。日本には沖縄、アイヌ、そして創価学会という天皇神話を共有していない領域が三つある。この領域との軋轢がどうなっていくかが天皇制の将来を左右するのでは、と。


片山:とくに沖縄とアイヌに対して、今上天皇は意識的にアプローチされてきたように思います。ただ、いまだに沖縄との断絶は存在するし、アイヌについての理解は進んでいない。こうした外部空間との付き合い方から、次代の天皇のありようが更新されていかないと。万世一系というだけでは持続性に陰りが見えてくるように感じます。


佐藤:いま日本は危機に陥っています。それが分断であり、政治の右と左の対立であり、格差です。平成以後、日本人の天皇観がどう変わるか。すなわち直面する危機や、世間外との軋轢を調整できる形になるのか。逆に、その世間外の人々を非国民化していき、さらなる分断や格差を招く形になるのか。ここが一つの大きなポイントになるでしょう。


片山:とすると平成の次の時代、一つの議論が蘇ると想像できます。天皇制ではなく、日本共和国でよいのではないかと。平成とは今上天皇の思想と行動によって特徴づけられた時代でした。今上天皇の「譲位」とともに、天皇のありようは変わるでしょう。


佐藤:その天皇のありようによって、ポスト平成の日本社会の方向性が決まっていくと言えるでしょうね。


●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。


●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。SAPIO連載5年分の論考をまとめた『世界観』が発売中。


※SAPIO 2018年5・6月号

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