AbemaTV3周年 テレ朝との連動企画で露見したネットの優位性

6月2日(日)16時0分 NEWSポストセブン

 ネット番組だから地上波よりも過激で、大胆な表現がしやすい。そんなことが言われているが、果たしてそれは過激で大胆なだけなのか。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、バラエティ番組が持つ骨太な面白さとはどこからやってくるのかについて考えた。


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 ここ2年間、毎週ウェブテレビについて記述してきた。当初は「ネタ不足にならなきゃいいけど……」と心配していたが、それも杞憂に終わる。今となってはタレントが自前のチャンネルを持つ時代、海外資本の動画配信サービスにも日本製作のコンテンツが増えた。


 YouTube、Amazonプライム・ビデオ、Netflixと取り上げてきたが、なかでもお世話になっているのがAbemaTV。サイバーエージェントとテレビ朝日の共同出資から生まれた局、ここでしか観られないオリジナルコンテンツが充実している。常に新しい企画が立ち上がるため、ニュースに事欠くこともない。よって、ネタに困ったときはAbema!と頼ることも多い。今年5月、そんなAbemaTVが開局3周年を迎えたという。


 なにごとも自ら祝うのがAbemaTV方式、今回はバラエティ番組に力を入れてきた。テレビ朝日で23:20〜翌0:20に放送される『陸海空 こんなところでヤバいバル』(月曜)、『ロンドンハーツ』(火曜)、『マツコ&有吉 かりそめ天国』(水曜)、『アメトーーク!』(木曜)とコラボ。テレビでは観ることができないAbemaTV特別バージョンが配信される運びとなった。


 特別版といっても番組ごとに趣旨は異なる。『陸海空 こんなところでヤバいバル』は既に放送された内容の再編集版、他の3つはオリジナルコンテンツを用意していた。なかでも『ロンドンハーツ』と『アメトーーク!』は、コンプライアンスが緩いと評されるAbemaTVだから配信できる内容に仕上がっていた。


 金曜21時台から火曜23時台に異動となった『ロンドンハーツ』。ゴールデンから深夜帯へ、業界的に言えば“降格”ということなのだろう。しかし、結果的には大成功。過激なことが許される時間帯になったことにより、番組は全盛期のキレを取り戻している。AbemaTVと連動した週の地上波放送では全ての時間を使い、狩野英孝村上健志フルーツポンチ)のケンカを特集。ただただ面白いだけ、観ていて人生の為になることはない内容。今時珍しい本当のバラエティ番組として機能している。


 取り戻した勢いそのままAbemaTVで配信された企画が「今の若手はウラでこんな事やってます ネットだからバラしていいよね15連発!!」。20代の若手芸人が集まり、暴露大会に興じた。


 そもそも『ロンドンハーツ』とは、ネットとの親和性が高い番組。なんたって、開始当初の名物企画が「一般人を対象とした恋愛ドッキリ」である。


 なかでも印象に残っているのが、一般男性にハニートラップを仕掛ける企画「THE TRIANGLE〜ハマった女は彼女の親友〜」。番組が雇った無名女性タレントが彼女持ち一般男性を逆ナン。男性は当然浮かれ、女性タレントに夢中になる。逢瀬を重ね(デートの様子も隠し撮りされている)、好き度がマックスになった頃合で、彼女のデート中に女性タレントが乱入。慌てふためく男性をモニタリングしつつ、女性タレントに指示を出す田村淳(ロンドンブーツ)。狼狽した男性は、爆笑必至の理解しがたい行動を必ずとる。ネット上で流通する露悪趣味と通ずる笑いを先取りしていた。 先日、『ゴッドタン』プロデューサー佐久間宣行がパーソナリティーを務める『オールナイトニッポン0(ZERO)』に『ロンドンハーツ』エグゼクティブプロデューサー加地倫三がゲスト出演していた。その中で「『ロンハー』ってのは結構、番組が変遷していくじゃないですか?」と聞かれた加地は「低視聴率で地獄を味わうと企画を変えていく」と答えていた。視聴者を笑わせるには、悪魔に魂を売らなければいけない瞬間もあるのだろう。しかし、貫かれるポリシーがある。


 今となっては一般人をイジることはなくなったが、番組に色濃く残る露悪のイズム。その刃は切れ味を失うことはなく、AbemaTV版では若手芸人へと向けられた。


 ここでドドンと「バラしていいよね15連発」で、最高にヒドかった若手芸人の秘密を発表したい。タレコミをされたのは奥村うどん(スタンダップコーギー)、タレコミをしたのは小宮浩信(三四郎)。淳が読み上げる。


「奥村はバツイチで、実は5歳の子供がいる!」、動揺し瞳が右往左往する奥村。盛り上がるスタジオ、「相方にも言ってないんですよ。1位すぎないですか? 僕だけ……」そんな言葉を最後に番組は終わった。他の暴露とは違い、今後の仕事にも支障が出るかもしれない圧倒的な1位! 面白い! 面白いんだけど、いやぁそれにしても酷い番組(絶賛)。


 酷いといえば『アメトーーク!』も同様である。ケンドーコバヤシ筆頭に集まったのは五反田に居を構える芸人達。「AVサミット2019」と銘打たれ、大人のビデオについて熱い議論が交わされた。地上波では、芸人のトークに爆笑する女性観覧客が映ることが多い番組。しかし、AbemaTV版はテーマがテーマだけに無観客となっていた。しかしながら、「ここに混じって、自分も話したい!」と唸った男性視聴者は多いだろう。


 9割がた偏愛を語るトークだったが、終盤に語られたケンコバの持論は刺さった。


「最近の若い子は無料の動画を探して観ている。もちろん、サンプル動画ならいいんだけど違法に本編をアップロードしているサイトも多いんですね。『君たちのやっていることは肥料を与えない畑を刈っているようなものだ!』と言いたいですね。稼げる世界にしないとキレイな子の裸は観られないですよ。だから、もっと値上げしていいと思ってるんです!」


 テレビではふざけた姿しか観せないケンコバ、その真面目と評される彼の素顔を初めて知るのがAbemaTVだとは……。


 話が前後して申し訳ないが、『ロンドンハーツ』でも似た発見があった。ツワモノが揃う地上波では全く話さない田村亮が、結構な数の発言をしていたのである。普段、過激な淳をマイルドにするためだけに存在する亮。AbemaTV版では年長者として若手芸人のトークをサポートしていた。


 そんな事柄からネットテレビの意義が見えてきた。一見、ネットテレビの利点とは地上波と比較した際、過激な演出できる点にあると考えられている。しかし、今回のAbemaTV開局3周年記念を観て、それは表面にすぎないことに気づく。ネットテレビの本当の利点とは、過激さの先にある人の深みを映すことにある。地上波よりも本音に近いことを話せるため、人の素が漏れやすい。


 また、AbemaTV版『ロンドンハーツ』からわかるように、地上波にはなかなか出演できない若手にとってチャンスの場でもある。製作陣は民放と同じ、ゆえに若手の活かし方をよく知っている。司会は有名タレントが陣取るため、若手が変に調子にのることはない。YouTuber的な終わりが見えない悪ノリを披露せず、正しきタレントとしてメディアで出演できる。


 素の表情と若手の抜擢、この2つに長けた媒体が今のウェブテレビだと思う。


●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)

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