寺島しのぶ もがいても生まれもった運命には逆らえない

6月3日(日)16時0分 NEWSポストセブン

寺島しのぶが主演作について語る

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、出演映画『のみとり侍』が公開中の女優・寺島しのぶが、役者としての評価を固めた主演映画『赤目四十八瀧心中未遂』と『ヴァイブレータ』について語った言葉をお届けする。


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 寺島しのぶは二〇〇三年、映画『赤目四十八瀧心中未遂』と『ヴァイブレータ』に続けて主演、役者としての評価を高めていく。


「『赤目』はとにかく小説に感動したんです。それで作者の車谷長吉さんに直接『これを映画にするなら私しかありえません』って手紙を書きました。後に荒戸源次郎監督が映画化権を取った時に車谷さんがその手紙を持っていてくださって、それで結びついたようです。


 荒戸監督は私がやりたがっていることを意外に思われたようですが、お話させていただくうちに熱が伝わったのか、荒戸さんの熱と一致したのか、出させていただけることになりました。物凄く過酷な撮影でしたが、やりたい気持ちが勝っていたので楽しかったですね。


 私の演じた綾ちゃんは、運命に逆らえないところがあって、生まれた場所から頑張って逃げ出したいのに結局は逃げきれずに戻ってしまう。その切なさが自分に重なったのかもしれません。籠の中で育って、いつか飛び出したいと思いながら、飛び出せない。出ようともがいても、自分の生まれもった運命には逆らえない。その現実こそが人間であり、そこで生きていかなければならないのです。


『ヴァイブレータ』もそうなんですよね。一人で生きてきたけど、ある男と出会って、どこかに連れ出してくれるかもしれないと思うけど、やっぱり最後はまた一人で生きていく。


 お嬢様育ちと言われたらそれまでなのですが、周りが『恵まれている』と思う部分と、でも『いや、中身はこんなんですよ』という部分が私にはあります。そういう自分と重なる内面を出すことに怖さは感じません。蜷川幸雄さんが『それを貫け』と言ったのは、そこを見抜いていたからなんだと思います」



 藤田まこと主演の時代劇『剣客商売』(フジテレビ系)も同年の第四シリーズから出演。女剣士・佐々木三冬を演じた。


「女剣士で立ち回りの役もありますから嬉しくて血が騒いでくるんですよね。


 さらに撮影も京都で、本格的な時代劇の時代を生きたスタッフさんたちや藤田まことさんとご一緒できる。久しぶりのテレビシリーズですからみんな気合いが入りまくった現場で、その熱が楽しかったです。特に藤田さんからはいろいろなことを教わり、今でも私の財産です。


 たとえば、『刀を本身の重さで持っていない』と教えて頂きました。それで本身を持ってきてくださって『刀ってこんなに重いんだ。これを女性がやるということを考えてごらん。君は軽くヒュッと持ってるんだよ』って。他の方にも『とにかく小道具にこだわりなさい。こんなのは昔はなかったよ。そういうディテールのこだわりからやっていかないと時代劇はダメなんだよ』と、藤田さんはさりげなく教えてくださるんです。その人間性に、『素敵だな』といつも思っていました。


 みんな藤田さんのことが好きで、みんな藤田さんのためにやる、そんな吸引力のある方でした」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


■撮影/藤岡雅樹


※週刊ポスト2018年6月8日号

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