寺島しのぶ 新しい監督の才能を発信するのがこれからの使命

6月8日(金)16時0分 NEWSポストセブン

寺島しのぶが「監督」について語る

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、出演映画『のみとり侍』が全国東宝系にて公開中の女優・寺島しのぶが、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した『キャタピラー』の若松孝二監督との思い出などについて語った言葉をお届けする。


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 寺島しのぶは二〇一〇年、若松孝二監督の映画『キャタピラー』でベルリン国際映画祭の最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞している。


「ちょうど、本当にやりたいこと以外の仕事をやめようと思っていた時期でした。そんな時に台本を渡されました。低予算映画だったので台本も明らかに手作りと分かる紙っぺらみたいなものでした。でも、それを読んだ時の衝撃といったらなかったです。すぐに『やらせていただきます』とお返事しました。若松監督にお逢いした時に、『これで海外で女優賞を取らせます。監督賞を取るより、女優賞を取る方が日本では観てもらえるから』と言われたんです。


 撮影は大変でした。予算のない現場でしたからみんな何役もこなしていました。夕方までに全てを撮り終えてしまった時は、監督は『明日の分もやっちゃおうか』とおっしゃる。それでも自分はそれほどくたばってはいないだろうと思っていましたが、全身に蕁麻疹が出て、血尿も出てしまいました。でも、変なアドレナリンが出ているから『やるしかない!』という感じでしたね。


 私って、何を見せるのもあまり怖くないんですよね。隠したい部分がないんです。


 スタッフさんには怒鳴る監督でしたが、それでも監督が好きだからみんな必死にやるんです。『ボスがこれだけやってるんだったら、俺たちもやらなきゃな』という気持ちにさせてくださるんです。


 この映画は蜷川幸雄さんも観てくださって。『そうだよ。俺が言いたかったのはこれなんだよ』と言ってくださったのが嬉しかったですね」


 公開中の映画『のみとり侍』は〇七年の『愛の流刑地』と同じ鶴橋康夫監督作品だ。


「鶴橋監督も素敵です。監督のためにみんな頑張る。『愛の流刑地』はずっと裸になっているような映画でしたが、そういうことが全く気にならないんです。とにかく監督のためにいいシーンを撮りたい。それしかなかったです。今回の作品もそうです。


 みんな『鶴橋組』を愛する役者さんたちばかりで、監督さえ喜んでくれればあとはどうでもいい、という感じでした。


 監督は、凄く気を遣う方で、目に見えないところまで気を配られるんです。今回は久し振りの出演でしたが以前と変わっていなかったですね。監督のこだわりが好きなんです。


 もちろん、鶴橋監督みたいに同じ監督と何回もやらせて頂けるのは楽しいです。でもそれだけではなく、これからの日本映画を背負っていく新しい監督ともやってみたい。そういう才能が埋もれていくのは良くないですから、頑張って発信したい。それがこれからの使命だと思っています。


 四十五歳なのでこの先そんなにいい役が日本で見つかるのかな、と考えたりはします。それでも最終的には『この役は寺島しのぶしか考えられなかった』と言われるような役をやっていきたいです」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


■撮影/藤岡雅樹


※週刊ポスト2018年6月15日号

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