山里亮太『山チャンネル』非モテ芸は結婚でどう変わるのか

6月9日(日)16時0分 NEWSポストセブン

 芸人と女優がまた結婚した。その組み合わせ自体は珍しくないが、今回は非モテ芸人の代表格である南海キャンディーズ山里亮太と、モテ女優として知られてきた蒼井優の二人だ。山里の非モテ芸の完成形に近い『テラスハウス』(Netflix)のコメンタリーと、YouTubeで公開されているテラハコメントのスピンオフシリーズ『山チャンネル』の今後はどうなるのか。女優との結婚は、今後の『山チャンネル』にどんな変化をもたらすのか、イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が考えた。


 * * *


 3月6日、都内某所にて業界関係者Eさんに「ヨシムラ君、『テラスハウス』好きだよね」と話しかけられた。「山ちゃんが『テラハ』を解説する動画『山チャンネル』が好きなんです」と僕。すると、Eさんがサービストークをしてくれた。


「ここだけの話なんだけどさ……、絶対に書かないでよ!

 女優の蒼井優がさ、山ちゃんの解説にどハマりしてるんだって。山ちゃん、蒼井優と飯食いに行ったらしいよ」


「マジすか!すごいですね!コレが縁で付き合ったりして(笑)」


「いやぁ、ないない。山ちゃんはストイックだからね。そういうことをしないから偉いんだよ」


「確かに……、幸せにならないように努力されている方ですもんね」


 すいません、Eさん書いちゃいました。


 しかし、書いても問題はないだろう。なぜなら、昨年12月13日放送の『アウト×デラックス』で「蒼井優ちゃんは私がやっている“ある番組”が好きで、その番組の話を聞くための食事会があったんです」と山里本人の口から語られているからだ。つまり、このコラムで世間に初めて開示される情報とは“ある番組”が『テラスハウス』というだけだ。


 山里と蒼井のキューピッドとなった『テラスハウス』。この番組は二面性を持っている。


 一面は“男女6人のイケ好かない共同生活”を観る番組。HPなどにある番組紹介と異なる言葉を使っているのは、フジテレビで放送されていた際、未見だった僕が抱いていた印象ゆえ。自分を慰めたいわけではないが、この紹介も間違ってはいない。


 そして、観ていなければわからないもう一面が“男女6人のイケ好かない共同生活を揶揄”する番組だということ。もちろんこれも、個人的な感情が加味された形容である。


 24時間体制で撮影される共同生活では、様々な問題が発生する。そのVTRを観つつ、タレントのYOUを筆頭とした6名のスタジオキャストがツッコんでいく。その急先鋒が山里だった。あらゆるレトリックを使い、男女6人の人間性を暴く。


『テラスハウス』名物ともいえる山里の舌鋒、これだけに特化しているのが冒頭の会話にも出てきた『山チャンネル』だ。薄暗くなったスタジオに1人残った山里は、本人曰くの負け犬。男女6人の態度に対して、吠えに吠えまくる内容。


 ある時は、自らトラブルを作ってはそれを楽しむ女性を「人を殺したあとクラシックをかけながら飯食ってそう」と評した。どのシーズンにも必ず1人はいるアーティスティックな雰囲気だけで場を乗り切ろうとする男性も、格好の餌食となる。山里は「いつか、お前らみたいな人間を追い詰めボコボコにしてやるからな!」と息巻く。


 こう書けば、ただの悪口に聞こえるかもしれない。ただし、本編を観ている人にとって『山チャンネル』の山里の言葉は、『テラスハウス』を観ていると自然と溜まるモヤモヤの代弁。コチラの溜飲を下げてくれる至言へと化ける。


 以前、『山チャンネル』の面白さについてコラムを書いたことがある。是非、本人にも読んでもらいたいとTwitterでコラムが掲載されているURLを送った。すると「こちらサイドでの観戦ということで、嬉しいです」と山里からリプライ。なんだか嬉しかった。


 僕は笑いのファンだが、芸人のファンではない。しかし、山里は尊敬できる存在だ。さも意味ありげなことを言って、お茶を濁す芸人も多いなか、山里は一切の妥協をしない。どんな番組でも明確な笑いを獲得する(特に『TBS60年の貴重映像を大公開〜もう見られない世界・幻の瞬間!〜』での立ち回りはスゴかった)。


 自分発の言葉で、もしくは相手の言葉を受け、スタジオも視聴者も破顔させる。笑いに対して、逃げも隠れもしない態度には畏怖の念すら覚える。


 首尾一貫した考え方も尊敬できた。2018年1月に発覚した盟友・若林正恭オードリー)と南沢奈央の熱愛。多くの芸能人が祝福する中、山里だけはラジオで「おかしいって!」と息巻く。同調圧力に屈しないエネルギーを持っていた。


『山チャンネル』における批評にも通ずるが、山里は「他人の幸せなんて面白くもない」と常に負け犬界のボス犬として吠え続けた。その代償として幸せは拒否。名声、収入を得るのは仕方ない。ただ、女性関係だけはおざなりだという状況に自ら追い込む。ここまで仕事にストイックな人はそういない。


 今年5月、Netflixで『テラスハウス』の新シリーズが配信された。もちろん『山チャンネル』も同時にスタートを切った。


 現在の『山チャンネル』では「女の人が苦手」と語る男性メンバーについて言及される機会が多い。当初、山里は「僕は経験者だから彼は応援したい」と暖かな視線を送っていた。しかし、VTRに映される対女性コミュニケーションの達者っぷり。疑念を感じた山里は『山チャンネル』vol.3にて「私、一番許せませんよ。童貞気取って、お盛んな人」とついに牙を剥いた。続けて「今後、女性苦手設定を崩すことがあればD.T.P(童貞ポリス)署長の私が本腰を入れて動きますからね!」と眼光鋭くカメラ目線。山里はこういった安易な嘘を嫌う。「今回も見事だなぁ!」と唸りつつ、僕もD.T.P視点で男性メンバーを追いかけようと誓った。


 この動画が配信されたのは5月28日、それから8日後に結婚が発表された。


「山里署長、D.T.Pの僕は貴方を逮捕しなければならない……」


 長年、私生活での不遇を笑いのネタにしてきたのに女優と結婚するなんて、それこそ貴方が言っていた“一番許せない人”と同じ、いやそれよりも酷いじゃないですか。“非モテ気取って、蒼井優と結婚する人”、D.T.P署長の貴方は許せますか?


 もし他の芸人が同じことをしたら、貴方は嫉妬に狂ったはずだ。夜空にきらめく星よりも多い罵詈フレーズを用い、懲らしめただろう。もちろん、笑いを込めつつ……。


 当然、山里本人はこういった矛盾に気付いている。ゆえに、交際2ヶ月という早さで結婚に至ったのだと僕は考える。ファンに対して、嘘をつく時間を1分1秒でも減らしたかったのだろう。芸能人の交際は隠されるが、結婚となれば公表できる。病的なほどにフェアさを求める貴方はこういった選択を取った。 結婚会見で山里は自らの非モテについて「そんなモテてない」と話していた。この発言には主語が欠けている。正しくは「“売れっ子芸人のわりには”そんなモテてない」ということだ。


 芸人はキャラを立たせるために、もともと持っているパーソナルな一面を拡大解釈する。それが山里にとっての非モテだった。つまり、南海キャンディーズの山里亮太は非モテだが、一人間の山里亮太は違う。結婚したのは後者であり、芸風と本人を同一視するから難儀となる。芸人・山里にとっての非モテは8割ぐらいか、一人間の山里にとって非モテは1割にも満たないのではないか(売れていない時代にも彼女はいた)。


 また、山里の「そんなモテてない」には“自分が好きな人に”といった意味合いが含まれる。反射速度、語彙力、気づき、芸人としての能力がすこぶる高い山里を満足させる女性はそういない。もちろん、そのことは高貴な演技者である蒼井も同様。互いにワーカホリックであり、自分の創作活動に刺激をくれる相手を求める。心の機微の探求者である2人が籍を入れることは至極自然だ。


 巷では山里のビジュアルについて色々と言われている。しかし、蒼井にとってはどうでもいい問題で。映画監督・山田洋次との対談で「ある時、若さの魔法が解けるんです。何も考えずにできていたことに、無理が生じるようになる。お芝居をしていて、もっと考えてやらないと。そうなってからが勝負」と語っていた。若さによって美しさや勢いが陰ることは経験済み、だから中身を鍛え続けてきた山里を好きになる。とどのつまり、お似合いの2人である。


「山里署長、おめでとう!」D.T.P一同より。


 売れっ子芸人と多くの男性と浮名を流した魔性と呼ばれる女優との結婚。山里と蒼井は、かつての明石家さんまと大竹しのぶになぞられる。しかし、さんまが唯一つまらなかった時代と評されるのがこの時期。さんまは家庭を持ったことで、独身時代の十八番であったモテによる浮つき芸を封じられた。世間からは健全さを求められ、本人もリミッターをかけてしまう部分があったのだろう。


 山里はさんまと真反対に位置する非モテの芸風だが、似たような危険が予想される。本人が負け犬の遠吠えというように、弱いというポジションから妬み嫉みをつのらせて批評することが難しくなる。蒼井と結婚した勝ち組芸人の山里が『山チャンネル』で夢見る男女を貶す行為はグロテスクに映るだろう(本人の意思関係なく)。


 いかにせよ、結婚によって『山チャンネル』は次なるフェーズに移らなくてはならない。僕は批評の中で「ウチの嫁さんが……」と言うことを期待している。そもそも、2人を繋げたのは『テラスハウス』。番組で披露された山里の慧眼に蒼井は尊敬の念を抱いた。ゆえに『山チャンネル』で“蒼井優”の名を出すことに不自然さはない。逆に未婚時代と同じような妬み嫉みスタイルで批評を続けるのならば、僕は失望してしまいます、山里署長……。


●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)

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