「脱引きこもり」の有効策 誰かの役に立ち社会と繋がること

6月13日(木)7時0分 NEWSポストセブン

送検のため警視庁練馬署を出る熊沢英昭容疑者(共同通信社)

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 元農林水産事務次官、熊沢英昭容疑者(76)による44歳の引きこもり息子殺害事件は、“罪は罪”と指弾する声とともに、父親としての苦しみに共感する声も聞こえてくる。多くの人々がこの事件に底知れぬ不安を掻き立てられるのは、決して「他人事」とは受け取れないからだ。


 内閣府は引きこもりを「自室や家からほとんど出ない状態に加えて、趣味の用事や近所のコンビニ以外に外出しない状態が6か月以上続く場合」と定義する。同府の2018年の調査によると、自宅に半年以上引きこもっている40〜64歳は全国に61万3000人。うち76.6%が男性だ。


「働かない」「結婚しない」「家から出ない」人が増加する中、こうした子供を抱える親は日々、「この先自分たちがいなくなったら、この子はどうやって生活するのか」と思い悩む。


 複雑な要因を抱える引きこもり問題に、どう対処すればいいのか。引きこもりの問題に詳しい介護・福祉ジャーナリストの高室成幸氏は次のように指摘する。


「引きこもりの多くは、外に出たいと思っているのに出られなくて苦しんでいます。でも本人はその状況をどう打開していいかわからず、親の些細なアドバイスなどにも反発しがちです。家族間で解決させようと無理に努力するのではなく、専門の支援センターなど外部に相談することです」


 都道府県や政令市の精神保健福祉センターなどには「ひきこもり地域支援センター」が設置され、社会福祉士や精神保健福祉士らが相談に乗る。また各自治体の役場や社会福祉協議会には「生活困窮支援制度」の相談窓口があり、引きこもりの相談を受け付ける。


 特定NPO法人「全国ひきこもり家族会連合会」など、民間の支援団体を訪れる手もある。今は、川崎と練馬の事件に触発され、全国から支援団体への電話相談が急増しているという。


「個人差もありますが、長引くほど本人が外に出ることが怖くなり、解決が難しくなるケースが目立ちます。たとえば2年間引きこもった後に支援を開始すると回復までに2年程度かかるといった印象があります。早ければ早いほどよいのでご家族だけでも相談にきてほしい」(引きこもりを支援するNPO法人CNSネットワーク協議会代表の後藤美穂氏)


 その状態が長引いていても解決の手段はある。引きこもりを支援するNPO法人『ニュースタート事務局』理事長の二神能基(ふたがみ・のうき)氏が語る。


「家にこもる期間が長くなり子供が高齢化するほど、『もう相談してもムダだ』と諦めてしまうケースが多い。しかし、いま世の中は人手不足で、就労の機会が増えている。そこで引きこもりの人たちに『人のためになる仕事をしませんか』と呼びかけると、心に響きやすい。


 そういう人は自己肯定感が著しく低く、“自分はダメな人間だ”と思っているので、人のために役立つことができれば苦境から抜け出しやすい。特に40〜50代は若い世代より苦しんだ期間が長い分、“今までできなかった社会貢献がしたい”という欲求も強い」


 二神氏のニュースタート事務局は数十社の企業と提携して職業見学を行なっている。引きこもりを職業見学に連れて行き、「手を貸してほしい」とお願いすることでモチベーションを引き出し、その場で採用となることもよくあるという。


「30代から引きこもった45歳男性を寮に入れて、食事の手伝いや引きこもりの方の訪問活動などを手伝ってもらったら、徐々に落ち着いて存在感が出てきた。この方は1年弱で寮を卒業して、地元の障害者施設に介護職員として就職しました。引きこもりからの脱却に大切なのは、誰かの役に立つことによって社会とつながることなんです」(二神氏)


※週刊ポスト2019年6月21日号

NEWSポストセブン

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