橋本愛 『長閑の庭』で挑む「41歳差の恋」の綱引き

6月15日(土)16時0分 NEWSポストセブン

番組公式HPより

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 人間関係、こと恋愛においては特に“差異”が問題となりやすい。年の差と愛情の相関関係については各人思うところがあるだろうが、それ故にドラマの題材としては恰好といえるかもしれない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。


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「恋愛において年齢は一切関係ないものだと思っているので、40歳差であろうが、50歳差だろうが大した差はない」


 会見でズバリそう言い切った橋本愛さん。5年ぶりに連ドラの主役を『長閑(のどか)の庭』(日曜午後10時NHK BS)でつとめています。


 主役・元子は橋本さんの実年齢と同じ23歳。ドイツ文学を研究している大学院生が41歳年上の榊教授(田中泯)に恋しているという異色のドラマ。


 元子はなかなか一筋縄ではいかない人物で、人と接するのが下手。長い手足もどこかぎくしゃく。女子のキャピキャピ感はゼロ。恋愛経験なし、頭でっかち、現実逃避的でちょっと夢見心地。


 全身を黒ファッションで固め、つけられた仇名は「シュヴァちゃん」(シュヴァルツはドイツ語で「黒」の意)。生きづらそうでもある元子が、41歳年上の教授に「恋しています」と語りかける。


 橋本さんといえば、そう。最初に鮮烈な印象を残したのが朝ドラ『あまちゃん』(2013)でした。17歳のアイドル志望ユイを演じ、美少女登場と一躍注目を浴びました。が、なぜかその後はアイドル的路線を走らず。過剰な露出もなく、むしろ作品を慎重に選んで作家性の強い映画に出演してきたという印象が強い。


 ご本人いわく、「映画という場所にこだわっているわけではなくて、脚本が好きならドラマでも舞台でもやりたいと思っています」(「オリコンニュース」2016.10.20)。同時に「私のキラキラした姿なんてそんなに見たくないんじゃないですかね……(笑)」(同)と、ちょっとシニカルな自己分析力も持ち味です。


 23歳という若さの中に、妙な落ち着きと「渋さ」が光る人。そんな橋本さん独特のテイストが、今回のドラマと響きあっていて面白い。元子は世間擦れしていなくて、画面に映る容姿だけでは掴みきれない陰翳や内面の葛藤を感じさせる。まさに橋本さんはハマり役です。


 一方、元子が恋をする相手、41歳年上の榊教授を演じるのが舞踊家・田中泯。伝説的ダンサー・土方巽に強い影響を受け、独自のダンス世界を突き詰めてきた74歳。こちらもまた非常に固有性の強い演じ手。


 元子と榊原教授の間には、ありきたりな恋愛エピソードはなく、むしろ身体的触れあいを自ら禁じようとし避けている関係といってもいい。そのあたり、簡単に肉体関係に走る恋愛話より、何ともエロティックな感じが漂ってくる。


 ふと接近しそうで、そうならない。不思議な振動と緊張感、空気感。心だけが近づいたり離れたり、押したり引いたり震えたり。そんな「見えない微妙な綱引き」こそこのドラマの見所です。


 通常、恋愛ドラマといえば主人公の2人が互いに見つめ合うシーンが定石。しかし元子と榊教授が見つめ合うシーンは極端に少ない。2人の視線もなかなか交錯しない。その上、表情は抑え気味、セリフもあえて一本調子。


 徹底して体を鍛えている田中さんは微動だにせず、ぴたりと静止して立つ。無駄な動きを排除しているからこそ、心の中の揺れだけがくっきりと浮かび上がってくるのでしょう。


 何といっても素晴らしいのは、そんなベテラン舞踏家の田中さんと堂々、張り合って元子を演じ切っている橋本さんの存在感です。


「“枯れ専”や“年の差カップル”などとカテゴライズされては無視されるその奥の、愛の真実性を丁寧にお伝えできればと思います」(「ザ・テレビジョン」2019.5.9)という橋本さんの言葉も印象的。


 視聴者からは「どうか渡辺淳一の世界に陥ることは避けてほしい」という声も聞こえてくる異色作。たしかにドロドロの欲望劇はもう見飽きた。とことん精神的エロティシズムを突き詰めていって欲しい。たった4回で終わるのが惜しいドラマです。

NEWSポストセブン

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