トランプ氏アイダホポテト騒動、日本人の政治への熱さ示した

6月17日(月)16時0分 NEWSポストセブン

トランプ氏が食べたのは実は北海道産だった(共同通信社)

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 とくに支持政党を持たず厚く信仰する宗教もナシ、というのが日本人の一般的な庶民像だった。ところが、ネットが広く普及するにつれ、政治への関心は意外に高いかもしれない面が見えている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、米トランプ大統領来日時の「アイダホ産ポテト」をめぐる騒動を振り返り、ネットと政治への関心について考えた。


 * * *

『週刊ポスト』6月10日発売号に掲載された「トランプ大統領が堪能した『アイダホ産ポテト』は本当は国産だった」記事を、私が編集に携わるウェブサイト「NEWSポストセブン」に転載した際の反応が実に興味深かった。何しろアツいのである。元々日本人は政治に関心がない、と言われているが、SNS時代になって「そうでもないのでは?」と思うことが増えてきた。


 自分の支持する側に批判的に見える記事を出したメディアは“マスゴミ”扱い。評論家等も、政権支持派か反対派かで敵対勢力からゴミクズ扱い。


 今回の「本当は国産」がなぜ、政治的イシューになったかといえば、これは政権支持派の心の琴線に触れてしまったからだ。トランプ氏が訪れた炉端焼き屋では、「和牛」と「アイダホ産ポテト」が饗されたとテレビ等で報じられた。我が国の誇りである美味なる和牛をトランプ夫妻に堪能していただくとともに、相手の国も尊重する「おもてなし」の姿勢を見せるべくアイダホ産ポテトを出した。さすが安倍ちゃん、外交センス抜群! 外務省はよく分かってる! これで日米同盟は盤石だ!


 こんな気持ちになっていたところ、ポストが突然「あのイモ、国産だったらしいッスよ」と報じてしまったのだ。となれば、絶賛のコメントをネットに書いた者や感じた者からすれば、ハシゴを外された形となる。


「何気(なにげ)に素晴らしいと思ったのがじゃがいものこだわり」と「アイダホ産報道」ニュースのコメント欄に書いた人は、「子供の時に食べたものを出す気遣いは素晴らしいおもてなし」、といった意見を続いて書き込んだ。アイダホ州は確かに全米ナンバー1のポテトの産地だが、本当にトランプ氏の子供の頃からの思い出の味なのか?「こうなっていて欲しい」という願望を基にストーリーを作り上げている。


 アイダホ産報道に感銘を受けた人々は、こうした絶賛を今更取り消すわけにもいかないため、下記のようなパターンの書き込みをし、心の平静を保とうとした。


(1)だからなんだ。国産だからっておもてなしの心は変わらないよ、バカ。

(2)くだらんこと報じるな! ここで悪いのは裏取りしないマスゴミだろ。政府は悪くない!

(3)良好な日米関係と盤石な安倍政権を何があろうとも叩きたい反日マスゴミめ! 日本を陥れたいのか!


 これに加え、「トランプ氏の仏頂面写真を載せ、(トランプ氏が日本に満足していない、との)印象操作を図っている」もある。私は今回の記事に対しては、「北海道のジャガイモ、ウマいからそりゃ出すだろう」や「アイダホ産って信じて損した(笑)」程度の反応になるかと思ったらジャガイモ如きでアツくなれ、むしろ「日本人は政治に案外関心あるじゃん」と安心したのである。


 一方、反政権派も少数ながら同記事には反応し「こんなところでも真実を隠す現政権は実に情けない」と書く。両方が自己の主張に利用してくれて何よりである。


 とはいってもネットは、関心の高い層・支持者&支持政党がある人間が積極的に書き込みまくっている実態があり、実際多くの人はそこまで政治に関心はないかもしれない。参院選では、自分に好意的な「熱量のある人」だけの意見に候補者は左右されない方が冷静に選挙戦を戦えるだろう。


●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など


※週刊ポスト2019年6月28日号

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