食事の「作り置き」でつながる 認知症家族の「中距離介護」

6月17日(月)16時0分 NEWSポストセブン

“作り置き”でつながる中距離介護エピソード(写真/アフロ)

写真を拡大

 父の急死によって認知症の母(84才)を支える立場となった女性セブンのN記者(55才)が介護の日々を綴る。


 * * *

 母の姉であるKおばさんもやはり認知症だ。母より病歴は長いが、電子レンジの操作ができ、離れて暮らす娘のQちゃんの作り置きおかずで3食をとる。母の食事はすべて人任せの私としては、食が取り持つKおばさん母娘の関係が少しうらやましい。


◆「母の生活を支配しない」 従姉のポリシーに共感


 Kおばさんは母の4つ年上で御年88才。母より少し前に認知症と診断された。私の従姉にあたる娘のQちゃんは7才年上だ。


 私の父が他界する半年前にQちゃんの父親が亡くなったこともあり、葬儀から認知症介護まで、いつも少し前を行く頼れる先輩だ。事あるごとに相談するし、時々会っての愚痴や情報交換も楽しい。


 Qちゃんは仕事をしながら月3〜4回実家に帰るいわゆる中距離介護。帰るたびに煮物などを作り置きし、冷蔵庫にストックしておくという。


 Kおばさんは昔から穏やかな人だったが、お年のせいか、最近はますますぼんやり気味。


「なんだかねー」が口癖だが、デイサービスでの入浴や食事も利用しながら、“ひとりご飯”もがんばっている。


「Kおばさんはすごいなー。母より年上なのに電子レンジを使いこなせるなんて」


 私は話を聞くたびにため息が出る。母は電子レンジが使えない。それどころか、居室にキッチンを備えたサ高住に転居した時、少しでも調理を続けるべきだと意固地になった私を尻目に、母は3食を食堂で食べることを選び、私をがっかりさせたのだ。


「姉妹でも違うもんだね。認知症の出方まで(笑い)。でも、母もこの間はレンジ加熱するおかずを容器ごとトースターでチンしてね、庫内が爆発現場みたいになってギョッとしたわ」とQちゃん。


 だが、Qちゃんはエライ。冷蔵庫に作り置きおかずがあるから、Kおばさんも食べようという気になるのだ。


「最近は“作り”じゃないこともあるよ(笑い)。自分で作るとどうしても量が多くなって無駄になるから、デパ地下で買ったり、宅配のチルドや冷凍おかずも利用したり。とにかく人間、何か食べなきゃ生きていけないもんね」


 私が母の介護で悩み、頻繁に相談した頃、心に刺さったQちゃんの言葉がある。


「Nちゃん、思い詰めないでね。私も母の世話に夢中になると、つい自分の思い通りに、母の生活を支配しそうになる。でもね、ボケても枯れても母の生活は母のものだから」


 当時、仕事をこなすように、母そっちのけで介護を思い詰めていた私は、Qちゃんの助言でフッと力が抜けたのだ。


◆食べてしゃべって歩いて、元気の源はやっぱり“食”


 つい先日、親戚6人で集まり、横浜中華街で食事会をした。母の姉妹はわりと仲がよく、“安否確認”とばかりに、不定期に集まるのだ。


 KおばさんもQちゃんに伴われ、歩行器を押してやって来た。相変わらず表情は薄めだが、足取りは軽やかだ。


 円卓に次々と運ばれてくる賑々しい中華料理を前にして「なんだかねー、こんなごちそう、食べきれないわー」を連発するKおばさん。


「Kちゃん、食べなきゃダメよ! 私なんかね…」と、母はさっそく自分の住まいの食堂の話を始めた。


 口々に自分の言いたいことを話し、かみ合っているようでいないような親戚の大おしゃべり大会は昔から変わらない。認知症などどこ吹く風だ。


 気づけば料理はすべて消え、Kおばさんも最後のデザートまできれいに完食していた。


※女性セブン2019年6月27日号

NEWSポストセブン

「認知症」をもっと詳しく

「認知症」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ