日大「悪質タックル問題」 ピリオドを打つ方法はあるのか

6月18日(月)7時0分 NEWSポストセブン

大前氏が日大アメフト問題を語る

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 アメフト部の悪質タックル問題をきっかけに、日本大学全体のガバナンスに注目が集まっている。理事長はなぜ「独裁体制」を構築することができたのか、問題にピリオドを打つことはできるのか、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。


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 日本大学アメリカンフットボール部の「悪質タックル事件」で、関東学生アメリカンフットボール連盟は日大の内田正人前監督と井上奨前コーチを事実上の永久追放に相当する「除名」処分にした。


 だが、これで幕引きというわけにはいかないだろう。日大アメフト部は内田前監督が強権支配していたとされるが、それを生んだ背景には日大のガバナンス(統治)問題がある。内田前監督は人事担当の常務理事(5月30日付で辞任)に加え、大学職員としても人事部長と運動部を統括する保健体育審議会の事務局長を務める実質的なナンバー2だったから、誰も逆らえなかったのである。その後ろ盾が“日大のドン”と呼ばれる田中英壽理事長だ。


 報道や日大のホームページによると、田中氏は日大相撲部出身で、1967年に学生横綱となり、1969年に卒業して日大に就職。アマチュア横綱にも3回なって1999年に理事、2002年に常務理事、2008年に理事長に就任した。そして田中氏は総長を廃して理事長に権限を移す組織改革を行ない、自身が運営権を握った。総長だった大塚吉兵衛氏は学長に“格下げ”されて教育面だけを担当することになった。いわば大塚学長は田中理事長の傀儡であり、この「田中独裁体制」にメスを入れて膿を出し切らない限り、今回の事件の根本的な問題は解決しないと思う。


 学長の上に理事長がいるという構造は日大特有の仕掛けだが、実はそれだけで田中理事長に権力が集中しているわけではない。その背景には、文部科学省が推し進めた大学のガバナンス改革がある。


 文科相の諮問機関である中央教育審議会は2014年2月、各大学に「学長のリーダーシップの確立」を求める方針を打ち出し、それを受けて2015年4月から「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」が施行された。改正の理由は「人材育成・イノベーションの拠点として、教育研究機能を最大限に発揮していくためには、学長のリーダーシップの下で、戦略的に大学を運営できるガバナンス体制を構築することが重要である」というものだ。教授会で甲論乙駁、何も結論が出ないことに対する中教審的解決策である。


 結果、学長(大学のトップ)に絶対的な権限が付与されることになった。前述したように日大の学長は大塚氏だが、その上に田中理事長が法律上もワントップとして君臨しているのだ。つまり、文科省による大学のガバナンス改革が、田中理事長という“独裁者”の権力をいっそう強化したのである。


 歴史を振り返れば、独裁者が登場すると当初は反発が出る。だが、反発した者は見せしめのために重い懲罰を科されて粛清される。独裁者は寝首をかかれることを恐れるから、手綱を緩めることはない。このため周囲の人間はイエスマンばかりになって“忖度の連鎖”が生まれる。


 日大のガバナンスもそのような状態になっているわけだが、法的に田中理事長をクビにする手立てはない。現在の田中独裁体制にピリオドを打つ方法は、世論を追い風にした日大関係者のマジョリティによる“革命”か、文科省の指導・通達ぐらいしかないだろう。


※週刊ポスト2018年6月29日号

NEWSポストセブン

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