大病院で「画像診断の見落とし」による死者が急増

6月18日(月)16時0分 NEWSポストセブン

最新の機械でも、見る人が悪ければ…(時事通信フォト)

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「がんの疑いがある」という指摘が見落とされ、患者の命が失われた。そんな悲劇が起きてしまったのは千葉大学医学部附属病院。発覚したきっかけは2017年7月、50代の男性が肺がんの疑いで同病院の呼吸器内科を受診したことだった。


 担当した医師が男性の過去のカルテを調べたところ、約1年前、頭頚部腫瘍の確認のため、CTによる検査を受けていたことが分かった。その画像診断報告書に、「肺がんの疑いがある」と書かれていたことが発覚。当時の担当医がそれを見落としていたため、治療開始が1年遅れてしまったのである。


 千葉大病院によれば、CTの画像診断報告書を作成する放射線診断専門医(画像診断を専門に行なう放射線科医)は、肺がんの可能性を指摘していたが、担当医が専門領域である頭頸部のみに注目したため、確認ミスが起きた。


 これを機に、千葉大病院が院内調査を行なったところ、同様のミスが2013年以降、9件あったことが分かり、6月8日に公表した。


 9人のうち2人は手術もできず、いずれも死因となったがんが確認されてから約2か月後に亡くなった。病院は、診断の遅れと死亡との因果関係について「あったと言われればその通りだ」としている。


 近年、日本全国の病院で同様の問題が起きている。昨年2月に慈恵医大病院で、10月には名古屋大学医学部附属病院、横浜市立大学附属市民総合医療センターと、多くの患者を抱える大病院で「画像診断の見落とし」が起きていたことが明らかになった。


 医療事故の分析などを行なう「日本医療機能評価機構」によると、画像診断報告書の確認ミスは2004〜2013年の10年間で17件報告されていたが、2014〜2017年の4年間だけで41件に急増したという。


 さらに、発覚している数は「氷山の一角ではないか」と語るのは、秋津医院院長の秋津壽男氏(総合内科専門医)だ。


「たとえ最初の診断報告書を見落としても、半年後の再検査で見つかれば、問題にならない可能性もある。そうした“見落としによる発見遅れ”は多いでしょう」


 なぜ医師は報告書を見落としてしまうのか。放射線診断専門医である熊本大学大学院・生命科学研究部教授の山下康行氏はこう説明する。


「今のCTは昔と違い、様々な臓器を短時間で撮影できます。画像診断の専門医が、色々な臓器の病変までくまなく観察できるようになったのですが、担当医が専門以外の領域を十分に見られないケースは多いと思います。


 日本では画像診断が安易に行なわれすぎていることも、確認ミスを生み出している原因の一つでしょう。欧米では対象にならないような患者に対しても検査が行なわれるため、画像診断報告書をはじめ、情報の量は膨大になる。報告書を受け取る担当医には、重要度の高いものから低いものまで電子カルテが無数に届くことで、重篤な患者の情報が埋もれてしまい、見落としが生まれる構図があります」


※週刊ポスト2018年6月29日号

NEWSポストセブン

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