毒蝮から宇多丸まで、首位快走するTBSラジオの戦略

6月19日(火)7時0分 NEWSポストセブン

TBSラジオは聴取率調査101期連続1位を続ける

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 毒蝮三太夫が集まった聴衆に「青梅街道みたいな顔しやがって!」「あんぽんたんみたいな顔しやがって!」と鋭い突っ込みをしたかと思えば、来場した夫婦には「愛してるって言ってやれ!」などと、普段口に出せない愛情を語らせる——。


 1969年10月に始まったラジオ番組『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』(TBSラジオ)は、今年10月で50年目に突入する。『ミュージックプレゼント』というタイトルなのに、曲はフルコーラスどころか、1番すらまともにかからないことがほとんど。毒蝮と集まった一般の人たちのやり取りが番組最大の魅力だ。毎回、見ず知らずの人たちと話し、アドリブでその場を笑いの渦に巻き込む。素人を一瞬にして、面白い人にしてしまう。


 人に話を聞くコツについて、毒蝮は著書『人生ごっこを楽しみなョ』(角川新書)でこう語っている。


〈人に話を聞くときはコツがあって、それは無駄話をするってことだよ。無駄なことは意外と大事だったりする。無駄がないと、人生に潤いがなくなるよ。でも、いまの時代は無駄なことをひたすら排除してるよな。効率ばかり追い求めて、楽して飯を食べようって感じだよね〉


 同番組は、2016年3月までは『大沢悠里のゆうゆうワイド』で月曜から金曜まで、同年4月からは『生活は踊る』で月曜から木曜まで放送されていたが、今年3月限りで午前帯の『ジェーン・スー 生活は踊る』を離れ、4月から金曜午後帯の『たまむすび』内に移動した。


 毎日のように聞けた毒蝮の緩急自在のトークが聞けなくなったことで、いわゆる“マムシロス”に陥っているリスナーも続出している。リスナーの一人が語る。


「午前中にマムシさんの愛のある毒舌を聞くことが1日のアクセントになっていた。毎日聞けるわけじゃないけど、その時間帯にラジオをつければ必ず賑やかな笑い声が聞こえてきて、すごく安心する場所だった。別にタメになるような話はないけど、それが心地よかった。今まで当たり前のようにあった放送の移動はこんなに寂しいものなんだなって……。ラジオはテレビと比べて、親近感を覚えるメディア。マムシさんの番組はラジオ特有の温かさに溢れているから、余計そう感じるのかもしれません」


 聴取率調査101期連続1位を続けるTBSラジオにおいて、『ミュージックプレゼント』は看板番組の1つ。なぜ、時間帯を変えて週4から週1の放送にしたのだろうか。ラジオ事情に詳しい記者が話す。


「TBSラジオはパーソナリティの高齢化が進んでいた。3月で82歳になった毒蝮さんの健康状態を考慮するのと同時に、局が調子の良い時に変えていこうという意図もあったのでは。実際、4月の聴取率調査でTBSラジオはM1(男性20〜34歳)、F1(女性20〜34歳)層で首位を獲得。ナイター中継の代わりに始まったライムスター宇多丸の『アフター6ジャンクション』が大きく貢献し、新規リスナーの獲得に成功しています。


 午後帯で放送していた『ストリーム』が2004年に『コラムの花道』というコーナーを開始し、“TBSラジオ=カルチャー路線”のイメージがリスナーに浸透していった。その延長線上に、今の『アフター6ジャンクション』などがある。誤解を恐れず言えば、これらの番組は生活に直接役に立つような情報がメインではない。でも、それがリスナーを掴んでいる」


 TBSが得意とするカルチャー、つまり文化について、毒蝮は前掲書で〈文化っていうのは、無駄なところが多いんだ〉と語っている。


〈俺のラジオなんて無駄の極地だよ。だって、ニュースは流さないし、音楽ですらあまりかかんねぇんだから。それでも長年続いてるのは、その無駄がやっぱりいいなと思うリスナーや、つくり手がいるんだよな〉(前掲書より)


“無駄”の本当の意味を知るパーソナリティと制作者、リスナーが三位一体となって、TBSラジオのV101が続いているのかもしれない。

NEWSポストセブン

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