『ポプテ』の神風動画、アニメ界のホワイト企業が挑んだ“逆張り手法”とは?

6月21日(木)8時40分 オリコン

神風動画の水崎淳平監督(右)と、脚本を担当した中島かずき氏(左) (C)oricon ME inc.

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 戦国時代の日本にバットマンがタイムスリップするアニメ映画『ニンジャバットマン』が15日に公開され、ネットユーザーを中心に話題となっている。監督は“クソアニメ”『ポプテピピック』を制作した神風動画の水崎淳平氏(※崎は立つ崎)。脚本は「劇団☆新感線」や、アニメ『キルラキル』、『グレンラガン』の中島かずき氏。アニメーターの“ワーキングプア化”が業界の課題となっている中、“超ホワイト”と形容される神風動画が、負荷の高いの長編アニメ制作に取り組んだ理由とは? アニメ界の鬼才二人が心掛ける“逆張り手法”の意図を聞いた。

■長編映画制作は“ピラミッド作り”と同じ!? 「会社を嫌になって辞めた人もいる」

 水崎氏が立ち上げたアニメ制作会社・神風動画は、業界では珍しい“社員に負荷をかけない”ホワイト会社として有名だ。とは言え、これまでチャレンジしたことのなかった長編映画制作に対し、「今回は社員に負荷をかけました」と率直な回答。

 「神風動画はスタッフの働く時間をしっかり管理する会社です。そこは崩せないと思いました。だから、スタッフの中から長編作品をやりたい、アニメ業界に踏み込んだものをやりたい、そんな希望を持つスタッフがいたので、そういうスタッフを集めました」と水崎氏は説明する。つまり『ニンジャバットマン』のために雇用形態の異なるメンバーを募ったのだという。

 映画作りは負荷がかかる。そこで水崎氏は、今回のプロジェクトを“クフ王のピラミッド”に例えたのだそう。それは、「(諸説ありますが)いま残っているピラミッドは、初期の頃に人民に負荷をかけて、山場からきりとって積み上げたもの。けれど後の王は『以前は人民に負荷をかけすぎたから、ピラミッドの建設地で泥を固めて作ればいいじゃん』と言って作った。だけど結果的に5000年経って残ったのは初期のものだけ」と説明。そして、「だから、君たちの努力が泥のように溶けてなくなるのは違うと思う」と伝えたと水崎氏。

 長編映画を作り終えた時に、心労や疲労で神風動画のことが嫌になるかもしれない。でも、「俺たちは“クフ王のピラミッド”を残すぞ!」とスタッフに宣言して始めたのだという。「だから『ニンジャバットマン』を終えて、嫌になってやめちゃった人はいます」と苦笑する水崎氏。

 そのため、負荷の多いシリーズもののアニメや映画を作りたい人達と、「それだと帰れないよな」、「残業も増えるからちょっと…」、そういう人達とを分けたのだという。「で、『ニンジャバットマン』をやっていない人たちは今でも会社に残っている」(水崎氏)

■狙って作らなかった『ポプテピピック』 “クセのあるもの”を作るのが「生きる道」

 作品名でのエゴサーチが好き、という水崎氏。放送時には毎週トレンド入りしていた『ポプテピピック』についてSNS戦略があったかを聞くと、「それは無かったですね」と即答。「SNSなどを意識しすぎると媚びたものになる」と当時を振り返ってくれた。続けて、「ポプテも盛り上がるのは予測していたが、決して狙ってはいなかった」のだという。

 「狙いすぎた時って商売っ気が出てしまうですよね。だから、SNSウケやファン目線により過ぎた作品を作ってはいません。今回の『ニンジャバットマン』も、アメリカの評価では5点(最高点)と1点(最低点)の両極端な結果になっていた。でもそれこそが狙いで、観た人に『なんじゃこれ!』と言わせる。みんなが食べやすいものを作らない、というのがコンセプトになっています」(水崎氏)

 中島氏も、「ファンの趣向に寄り添った“食べやすい作品”を作る人は他に沢山いる。だから我々はクセのあるものを作る。それが“生きる道”」と強調する。「魚介類のウニも、最初はあれを見て食べようと思わない(笑)。でもあのトゲトゲを割って食べてみたらうまい。僕はウニのような作品を作りたい」と破顔する中島氏。

■『ニンジャバットマン』は時代に逆行した“萌え要素ゼロ”の映画 「僕の狙いは逆張り」

 先日、中国の動画配信王手「ビリビリ動画」の運営元が日本でのアニメ制作を発表。今後のアニメ市場はより中国を意識したものとなるだろう。アニメ業界で存在感を増す中国について水崎氏は「僕は逆張りする戦略。だから中国から予算を取りたいとか今は考えていなくて、みんなが注目している時ほど、反対のことをしたい」と胸の内を明かす。そして、みんなが中国市場を狙うことで、中国ウケを狙った似通った作品が自然と増えるだろうと懸念する。

 「さっきも言った通り僕は“逆張り”。だから『ニンジャバットマン』にも、胸が大きくてスカートが短い女の子は全く出てこない(笑)」と水崎氏。その点については中島氏も「僕の作品もそうかもしれない。女の子が脱いでも全然嬉しくないアニメばかり」と笑顔。

 続けて「そういえば『ニンジャバットマン』は、萌え要素ゼロで成功させられるか?という試作でもありましたね」と水崎氏が話せば、「興行の結果が出た時に、『やっぱりね』って言われるかも(笑)」と大きな声で笑う中島氏。そんな2人の姿は、長年連れ添う名コンビのように見えた。

オリコン

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