世界でもっとも「21世紀らしい」ミュージアムは新しい遊び場だった

6月23日(土)11時0分 文春オンライン

 東京・お台場に、新名所が出現した。6月21日にオープンしたばかりの「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」。


 都内最大級の広さを誇るミュージアムに作品を提供しているのはただひとり、いやひとつのチームのみ。「ウルトラテクノロジスト集団」を名乗るチームラボである。





ミュージアム全体がひとつの作品


 チームラボはプログラマー、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家らが集い創作活動をする組織体。東大に在学していた猪子寿之を中心に、有志が集まり会社を立ち上げたのが始まりだ。


 以来、ウェブ開発などの事業とともに、一貫してアート制作に取り組んできた。彼らが生み出すアートは、最新のデジタル・テクノロジーを駆使して、これまでにない視覚体験をもたらさんとするもの。「絵画」「彫刻」といった従来の区分にはうまく当てはまらない。



 今回のミュージアムには彼らの創作群が惜しげもなく投入されているが、どれくらいの作品があるか確認しようとしても、うまく数えられない。会場はいくつもの部屋に分かれてはいるものの、作品を個別に観せようという発想はあまりなさそうなのだ。


「ぜひ身体ごと飛び込んでみてほしい」



 チームラボ代表の猪子寿之は、ミュージアムのオープンにあたってこう述べる。


「ミュージアム全体がひとつの作品だと捉えてもらうといい」


 さらに猪子は、


「その大きな作品の世界に、ぜひ身体ごと飛び込んでみてほしい」


 そう、ここでは作品と向き合って観賞するというよりも、作品の中に没入してしまうような感覚を味わうべきなのだ。


 実際に内部へ一歩、足を踏み入れてみると、館内は全体に暗がりとなっており、そこにめくるめく光と映像の世界が繰り広げられている。壁といわず床といわず、そこかしこにデジタル技術で描き出された花が咲き誇り、蝶が舞いカラスが飛び去る。



 順路はないので思いつくまま歩を進めていく。すると通路の壁面に、花にまみれたトラやゾウがのし歩いているのに出くわす。広い空間があったかと思えば、そこにははるか上方から滝が流れ落ちている。いや、もちろんデジタル映像ではあるけれど、それが偽物の滝とは感じられない。今いるこの世界では、デジタル技術によって現出したこの滝こそ、リアルじゃないかと思えてくるのだ。




完全なる「もうひとつの世界」


 360度どちらを向いても波が押し寄せる部屋があったり、無数のランプに囲まれてしまう空間や、見渡す限りの棚田に身を置いた感覚が味わえるスペースも。


 長い階段を見つけたので上ってみると、そこにはプロジェクションで映し出された宇宙空間の中でトランポリンができたり、光の中でボルダリングを楽しめたりと、身体を目いっぱい動かして遊べる一帯が広がっていた。


 これは外界とかけ離れた、完全なる「もうひとつの世界」だ。みずからミュージアムと名乗ってはいるものの、ここが何なのかと訊かれたら、遊園地、科学館、美術館、アスレチックフィールド、美しい景観の観光地、それらすべての要素を含む新しい遊び場であるとでも答えるしかない。



遊びを真正面からアートのテーマに


 壮大な遊び場であること。ああ、これが新しいアートの基準なのかもしれない。会場で光の渦に身を浸していると、そんな思いも頭をよぎる。



「遊びをせんとや生まれけむ」


 という古来の言葉があるように、そもそも人の「生」は、食や性といった生きていくための本能的営みと、遊びの要素、概ねこのふたつでできているように思える。生きていくとはもっと複雑なことにも感じられるけれど、いやもっとシンプルに考えたっていいのでは。



 アートは人の「生」を何とか丸ごと表現しようと、長年にわたりもがいてきた。これまではどちらかといえば、生命をつなぐ営みのほうに多く目を向け、テーマに据えてきたのだろう。


 だが、世もすでに21世紀。チームラボが先陣を切って、遊びを真正面からアートのテーマに据えたのだ。アートにおける大きな潮目の変化を、いち早く感じられる場。それがこのミュージアムだといっていい。



 ふだん私たちが過ごしているのとはまったく異なるリズムとハーモニーが支配する空間で、時間を忘れて、遊ぶことに没頭してみよう。



(山内 宏泰)

文春オンライン

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