ライムスター・宇多丸がある人に語った「オレの高田文夫になってくれ」

6月23日(土)17時0分 文春オンライン

 TBSラジオの番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル(通称『タマフル』)』が今年の3月31日、11年の歴史に幕を下ろし、新番組『アフター6ジャンクション』が始まって早2カ月。ライムスター宇多丸、エッセイストでイラストレーターのしまおまほ、構成作家の古川耕による「『タマフル』鼎談」第2回の前編では、しまおの「紅一点論」や、宇多丸が古川に告げた「オレの高田文夫になってくれ」発言の真相について、とことん語る。( #2後編 へつづく)



(左から)古川耕さん、宇多丸さん、しまおまほさん


◆ ◆ ◆


私が心配なのは、スタジオに女の人がいるっていうこと


宇多丸 新番組でさ。エゴサーチしたところ、「宇多丸さんは面白いと思うけど、聞き流しができるタイプじゃないからこの時間帯はどうなんだ」っていうのがあってさ。


古川 それはもうしょうがないよね。


宇多丸 でもオレ、聞き流せるようなことしか言いませんよ。「もうこれ以上聴いても無駄だな」っていう。


古川 リスクのある戦略。


宇多丸 例のあれですよ。得意のなんにも言ってないやつ。


古川 普通に邪魔だと思うよ、それ。


しまお 私が心配なのは、スタジオに女の人がいるっていうこと。


宇多丸 なんてことを言うんだよ、あなた。



しまお だって、うまくいくタイプの人といかないタイプ……意外に女の人ってうまくいったりいかなかったりするから心配なんですよね。


宇多丸 え? どういうこと?


しまお すごいかわいい人が来るとなんか緊張する。ライバル視じゃないけど。


宇多丸 え、なんの話?


古川 ゲストの話?


しまお ゲストだけじゃなくて、やっぱり『タマフル』だったら、私だけじゃないですか。ADさんとかはいるけど。


宇多丸 ちょっと待って……。しまおさんの話?


しまお そうそう。


古川 ああ、紅一点としての地位が脅かされると。


しまお そうそう。紅一点っていう揺るがない安心感。ライバルがいない。でも、女子アナなんて絶対的なかわいさ備えた人が目の前に現れたら、なんか腹立つっていうか……。


古川 あはははは! だったら熊崎君がいる月曜日にすりゃよかったですね。


宇多丸 でも、アナウンサーさんは意外と、全員それぞれ華々しい自分っていうアイデンティティじゃなかったりするみたいですよ。本人的には。



しまお でも、それも結局なんかねぇ……。


古川 まぁ、わからないでもないけど。


しまお でも、もうそこを攻撃していくしかない。


宇多丸 攻撃ってなんだよ。


しまお 私が攻撃するしかない。私、昔からほんとそう。目が大きくて愛嬌のある顔だって言われてたけど、すごい美人が隣に居るとすっごいドブスに自分が思えてきて……。


宇多丸 そんなこと思ってないよ!


しまお いや、私が思ってて。



古川 それはもうしょうがないな。


しまお だから、比べる対象がいるのはよくないってずっと思ってたんです。思春期ぐらいから。


宇多丸 しまおさん、今は全然素敵だと思うけど、しまおさんの思春期って、だって、ほら。


古川 オトコ*じゃん。(*幼少期のしまおまほを写した写真で、男子にしか見えない1枚があったことからたまにこう言われている)


しまお オトコだけど。


宇多丸 それはしょうがないじゃん。


しまお でも、なんかやっぱりね……。だから、比較対象があると今度自分がおばさん化しそうな気がして。


古川 つい過剰におばさんとしての鎧をまとってしまう、みたいな。


しまお そう。


宇多丸 まぁ、しまおさんの言わんとしてることも分かるよ。


しまお そこのケア。大事です。


古川 そんなことまでパーソナリティがケアしなきゃいけないのか。


しまお そこは不安がありますね。


古川 大変だね。考えることが多くて。



しまおさんはやっぱり遊撃隊のほうがいい


宇多丸 しまおさんは1日ぐらい、アナウンサーさんのかわりにパートナーでもいいんじゃないですか? とか言ってたんだけど、しまおさんはやっぱり遊撃隊のほうがいいっていうことになったんです。


古川 そうそう。遊撃隊。若干番組に距離を取りつつ、常に有益なことを言う人、みたいな。



しまお 何分ぐらいなんですか? 私が出るコーナー。


古川 夜8時台の最後、15分前後です。


しまお じゃあ、今までどおりだ。


宇多丸 うすぼんやりしたこと言ってりゃ過ぎる時間ですよ。


しまお ほんとだ。


宇多丸 逆に『ウィークエンド・シャッフル』の2時間体制のタイムテーブルだと、そういううすぼんやりした時間が全然つくれなくて。だから、オレ的に今回の新番組が「まあ、いいんじゃない?」ってなったのは、やっぱり今すごい窮屈で。


しまお 確かに。


宇多丸 やりたいことが多すぎて。そのくせ、そのうしろにオレの番組が始まるっていうのもさ。


古川 『ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』ね。


しまお あの編成、面白かったけどな。


古川 毎回必ず面白いですからね。


宇多丸 ……というのがあって、だから、逆に聞き流せるというか、「なんの話してたっけ?」みたいな時間がようやくできるっていうか。


しまお 毎日3時間あるもんね。


宇多丸 暑いの寒いのの話さえ最近できないからね。



古川 ミッシェル・ソーリーさんも不定期に出るし、ミッシェルさんは音楽ゾーンを小荒井(弥)Dと一緒にブッキングしてもらってるし。


宇多丸 すごいですよ、ブッキング力。だから毎日DJかスタジオライブっていう。


しまお 毎日ライブかDJなんだ。


古川 そうそう。ミキサーの人たちがおびえてますね。「こんなのやったことない」って。


宇多丸 でもそれは慣れるでしょう。


しまお 楽しみ。


宇多丸 いろんな人を呼んでね。それこそ、音楽関係の知り合いは無限大にいるわけだから。



「オレの高田文夫になってくれ」


しまお この記事っていつアップされるんですか?


——6月には、と思っているんですが。


古川 つまりとっくに『アフター6ジャンクション』も始まっているので、あんまり想像の話を今しても、というのはあるか。『タマフル』の思い出を中心にしたほうがいいかもしれない。


しまお ああ、なるほど。


宇多丸 古川さんがせっかくいるんだから、古川さんの初期の話とかも聞きましょうよ。古川さんはそもそも放送作家の経験がない状態で来てるからね。


しまお ねえ。それもすごいなと思ったんですよ。


古川 最初の1年間はただ宇多丸さんの前で笑ってるだけでしたからね。でも1年間現場で見てて、自分でも出来そうだなと思って。それで最初の放送作家さんが家庭の事情で替わり、次の方もご病気で辞めざるを得なくなり。それで「じゃあオレやってみます」ってやってみたら、まあまあ普通にできた。



宇多丸 もともとはオレが人見知りだから、しゃべりやすい人が前にいたほうがいいって呼んできたんですけど。


しまお ねえ。「高田文夫になってくれ」って。


宇多丸 「オレの高田文夫になってくれ」。もう、もはや伝説ですよ。


——あれは本当なんですか。古川さんを誘ったときのその発言というのは。


古川 本当です。発言というかメールですけどね。


宇多丸 うん。古川さんは話しやすいっていうのもあるし、あと、僕が話すトピックの幅に対してちゃんと受けてくれる人ってなると、まわりでは古川さんが一番だった。いろんなジャンルのことも分かるし。



古川 ラッパーとしての宇多丸さんを知ってる人は映画に詳しい宇多丸さんを知らなかったりするし、逆に映画とか『BUBKA』方面から宇多丸さんを知った人は、ラッパーとしての宇多丸さんをよく知らなくて。僕も当然、宇多丸さんを全方位的に分かってはいなかったんだけど、比較で言えば分かってるほうだったんですよね。


宇多丸 まあ、そういうことですね。


しまお それが今や別の番組もやってて、肩書きも放送作家に。


古川 完全に、もうそうなっちゃいましたね。


しまお それまでは別の仕事、小説書いたりとかもしてましたもんね。


古川 やってましたし、今でもやりたいとは思ってますけどね。でも、向いてるか向いてないかでいったら向いてた気はします、放送作家は。


宇多丸 古川さんは編集の仕事もできるっていうか、してたからね。


古川 そうですね。ほんとに編集者に近いと思います、放送作家は。


しまお だって古川さん、すごい前から文房具の話をしたりして、そのあとムーブメントも起こしてますよね。


宇多丸 そうそう。だから番組1年目はほぼ僕の引き出しというか、毎週僕が「こういうことできます」っていう特集をやっていて。で、1年経ったぐらいで「きついっす」ってなって、そのあとからだんだん古川さんのアンテナが非常に大きくなって。だからうちの番組のカラーって結構、古川さんが大きいですよ。8割ぐらいは古川さんの色じゃないのかな。


古川 いやでも今はかなりミックスされてますよね。宇多丸さん発のものと、おかげさまでいろんな持ち込みとか、番組を通じて出会った人たちから貰った情報とか。


宇多丸 オレ発はもう少ないんじゃないかな。1割ぐらいじゃない?


古川 でもほら、宇多丸さんのアンテナに引っかかってきたものもあるじゃん。「ダ・チーチーチー特集」*とか、あれは宇多丸さんじゃなきゃキャッチアップできなかった。(*2017年1月14日、伝説的ドラマーのバーナード・パーディーが発明したと言われるドラムフィル「ダ・チーチーチー」を研究した特集のこと。もとはR&Bバンド「Scoobie Do」のメンバーと宇多丸がライブの打ち上げで盛り上がった雑談が発端)


宇多丸 まあ、あれはそうね。


しまお 私、蓑和田さん*に「こうしたらどうか」とかいろいろ送ってるんだけど、見事に返事来たことないです。(*蓑和田裕介。『タマフル』のディレクターで、通称「Dキモチワルイ」)



宇多丸 え? そうなの?


古川 それは聞いてないですよ。


しまお 特集やりたいとかじゃなく、「ここはこうしたらどうですか?」とか。


古川 いやいや、聞いてないですよ。例えば?


しまお いや、そんな大したアレじゃなくて。「『アフター6ジャンクション』は金曜日、宇多丸さん1人でやればいいんじゃないですか?」とか、そういうやつ。


古川 ああ、全然今の話だ。でもそれ、初めて聞きましたよ。全然伝わってないです。


宇多丸 全然来てません。しまおさん、番組のメーリングリストに直接書けばいいじゃん。


しまお メーリスは既読スルーが5倍寂しいじゃないですか。蓑和田スルーぐらいだったら耐えられるけど。


宇多丸 蓑和田君自体がスルーに次ぐスルーだし。


しまお そうそう。あと、特集のネタ出しとかすごい激しくメールするとスルー。米米CLUB特集*の時とか。(*2017年7月29日に放送された「ついに開講!『魁!米米塾』by しまおまほ」のこと)


宇多丸 そうなの? えー。それ全然知らないですよ。


しまお でも、また米米特集もぜひ。



プロデューサーが途中で抜けた。あんな不安なことない


宇多丸 ともかく古川さんも含めて、僕だけじゃないアイデアが入るようになってちゃんと番組が回るようになった。あと、橋Pが途中で抜けて「金マン」になったじゃないですか。


古川 要は制作部から事業部に行ってね。「お前はもうラジオマンやない、金を稼ぐ金マンや!」っていう、ただそれだけの話なんだけど。


宇多丸 あれが結構大きな転機だったかな。だって、なんだかんだ言って「『タマフル』は橋本さんの番組」っていうイメージだったから。それが途中で抜けるなんてあり得ないでしょって当時は思った。


しまお ねえ。あんな不安なことないですよね。



宇多丸 でも、それでもなんとかなるって思ったのが大きかったかな。


古川 会社だから当然こういうことはあるよね、って今では分かるようになったけど。オレもそこで「ああ、会社員の人は替わるかもしれないんだ」と気づいて、じゃあ宇多丸さんとオレとこれから来るスタッフと、臨機応変に変わっていかないといけないし、変えないといけないんだな、って思った。


宇多丸 まあ、そうは言っても金マンとか言ってガンガン番組に出てたんだけど。


しまお そうそう。あの立ち位置が逆にうまくいってましたよね。それこそほんとプロレスっていうか、ドキュメンタリーみたいな感じ。


宇多丸 でも、橋Pも「変わっていったほうがいいんです、こういうのは」っていうことは当時すごく言ってた。


宇多丸さん、最近風水とか言いだしてるじゃないですか


しまお 『アフター6ジャンクション』の特集コーナーってやっぱり1時間なんですか?


古川 いや、特集は40分ぐらいですかね。


宇多丸 しまおさん、どうですか。誕生日占い特集でもやりますか?


しまお ああ。なんか占い的なのやりたいですね。


宇多丸 占いってそういう感じでやれるものなの? 


しまお いやいやいや。でも占いって面白いじゃないですか。


宇多丸 まあ、面白い……ですかね。


しまお だって、なんか宇多丸さん、最近風水とか言いだしてるじゃないですか*。(*占いの類いを拒み続けてきた宇多丸が、2018年3月2日のTBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』にゲスト出演した際、「(最近はまっているルームフレグランスは)風水的にもいいらしい」と発言し一部をザワつかせた)


宇多丸 風水は占いじゃ……。


しまお あれはちょっとざわつきましたよねえ。


古川 あれはざわついたよね。しかもフレグランスからの風水ですからね。オイオイオイ、と。


しまお ねえ。


宇多丸 風水はなんだかんだいって、ただ、まともなことしか言ってないんですよ。



古川 その正当化しようとしてる感じが、また。


しまお そうそう。風水を擁護してる。


宇多丸 要は「家をきれいにしましょう」っていうことですよ。ていうか、オレはもともと占いとかそういうのに人一倍エフェクトされやすいの! だからイヤなの。ルームフレグランスもさ、「これってひょっとして風水的なあれかな?」ってちょっと調べちゃったんだよ。そうしたら「玄関の周りはこうで……」みたいなのがやっぱり目に入っちゃうの。そうすると、やっぱり頭では関係ないと思ってても、例えば「入口に人形とか置くべきじゃない」みたいなのを見ちゃったら、それに逆らって置くのは相当勇気がいるじゃない。


しまお まあね。だって名前の画数とかもね。「凶」って書いてあったらそれはつけられない。


宇多丸 でしょ。だから、それはみんなあるやつなわけ。「これってひょっとして風水的な……?」って調べちゃって、それがもう終わり。もともとやられやすいタイプなの。バンバン壺買うの。壺買う、足ツボ。


古川 「55億貯めずになにが人間か」ね。


宇多丸 そういう本があったんだよ。


古川 福永法源でしたっけ。


宇多丸 『55億貯めずになにが人間か』*。まあ、そんな感じですよ。だから、いろいろお願いしますよ。(*宗教団体「法の華三法行」の元代表・福永法源〔2000年に詐欺容疑で逮捕〕が1995年に出版した著書名)


後編 TBSラジオ『タマフル』を11年続けて、ラジオの聴き方が変わった

http://bunshun.jp/articles/-/7829


写真=末永裕樹/文藝春秋



(古川 耕)

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