ホームレス経験ありの若手監督が“37分ワンカット”ゾンビ映画を作るまで

6月23日(土)11時0分 クランクイン!

上田慎一郎監督、『カメラを止めるな!』インタビュー クランクイン!

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 若手監督の上田慎一郎監督が無名の役者たちと超低予算でつくり上げた映画『カメラを止めるな!』が、国内外の映画祭で喝采を浴びている。37分間ワンカットのゾンビ映画と、その製作者たちの舞台裏を描く本作。映画が進むにつれ見事な伏線回収に驚き、突き進んだ先には“愛”があふれ出す、圧倒的熱量を持った映画が完成した。このエネルギーの源とは一体なんなのか?上田監督を直撃すると“ホームレス経験あり”という驚きの経歴が発覚。すべての経験をエンタテインメントに昇華させる、貪欲で前向きな姿勢が明らかとなった。 監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾となる本作。新人の監督と新人俳優がワークショップを経て、1本の映画をつくるというプロジェクトだ。上田監督いわく、「5年ほど前から考えていた構想をもとに、オーディションで選んだ俳優たちに当て書きをして、物語に血を通わせていきました」というが、オーディションでは「不器用な人たちを選んだ」と語る。「不器用な人たちが、協力して困難を乗り越える映画をつくりたかったんです」。

 37分のワンカット、ノンストップでゾンビ映画を描く。この無謀とも思えるチャレンジに、スタッフからは猛反対を受けたという。「企画当初、スタッフからは“会話劇ならまだしも、ゾンビ映画。本当にワンカットで撮るんですか?”と言われて(笑)。編集でワンカット風に撮ることもできるんです。でもそれだと映像的にはつながっていても、やっぱりスタッフ、キャストの緊張感やテンションは途切れてしまう」とワンカットへのこだわりを吐露する。

 実際のワンカットの撮影では、様々なハプニングも起きた。映し出される劇中のハプニングは、フィクションとリアルが混在している。「ワンカットは6テイク撮りましたが、採用したのは最後のテイク。ゾンビが襲ってきて、レンズに血が飛び散るところはガチのトラブルです」と明かす。さらに、ラストシーンについて「実はクライマックスで起こるある出来事は、撮影当日まで1回も成功しなかったんです。最後にやり遂げることができました」と告白。演技を超えた、“本物の熱気”が収められた映像となった。「緻密に書いた脚本だけれど、それだけではウェルメイドな作品で終わってしまう。二度と撮れないカットや瞬間を積み上げていかないといけないと思った」と、緻密さとライブ感を同居させ、上田監督は心が沸き立つようなエンタテインメント映画をつくり上げた。

 そんな上田監督の原点は「中学時代に手にしたハンディカムカメラ」だそう。友だちと映画づくりに熱中し、高校時代は自らが脚本・演出を務めて文化祭で映画を発表したことも。「みんなで横並びになって、面白いものをつくろうとしていました。それは今も同じです」と、学生時代に目覚めたものづくりの姿勢が、今の映画づくりにも通じていることを明かす。しかしながら、高校卒業後「“ハリウッドに行こう!”と思って、英語の専門学校に行ったんです。でもそこでなじめなくて辞めてしまって」と振り返る。「その後、東京にヒッチハイクで上京したけれど、ネズミ講に引っかかって借金をしてしまい、一時期は代々木公園でホームレスをしていたこともありました」と驚きの過去を明かす。 20〜25歳まで、まったく映画をつくれなかったという上田監督だが、「その頃のことを暗黒期だとはまったく思っていません!」と言い切る。何でも当時、日常の出来事をすべてブログに書き込んで披露するのが習慣だったそうで、「そういう不運なことも、ブログに書いてみんなに見てもらうと、自分なりのエンタテインメントになる。だから自分の置かれた状況に嘆いたことって、あまりないんですよ」と笑顔を見せる。悪いこともネタだと考え、底抜けに前向きなのが“上田流”だ。

 「もともと、面白いことをして披露するのが好きなんです」と語る上田監督。不器用な人々への眼差しと、ものづくりへの愛にあふれた本作には、その生き様が詰め込まれているように感じる。「背伸びをして映画を撮ったこともあります。でも今回は“裸になって自分のつくりたいものをつくろう”と思っていました。それが評価していただけて、ものすごく自信になったんです」。映画はもちろん、監督自身もとても魅力的な人物だった。ゾンビ映画でありながら、笑って泣ける“愛の物語”となった『カメラを止めるな!』。新たな邦画界の才能をぜひ目撃してほしい。(取材・文・写真:成田おり枝)

 映画『カメラを止めるな!』は公開中。

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