「みんな笑顔で復興運動会ができたことがうれしかったです」橋本愛(小梅)【「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」インタビュー】

6月23日(日)21時0分 エンタメOVO

小梅役の橋本愛

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 関東大震災で被災した人々を勇気づけるために行われた復興運動会で、「いだてん」第1部が完結。悲しい出来事はありつつも、希望にあふれたフィナーレに、心打たれた視聴者も多いのではないだろうか。数々の困難が続く中、たくましく生き延びた被災者の一人が小梅だ。浅草の遊女として数々の男たちと恋に落ちながらも、最終的には人力車夫だった清さん(峯田和伸)と結婚。震災後の外苑バラックでは、早くも屋台を出して共に被災した人々を励ます姿が印象的だった。演じる橋本愛が、ここまでの撮影を振り返ってくれた。



−第1部が完結しました。クライマックスとなった復興運動会の場面の感想をお聞かせください。

 台本を読むたびに涙が出てくるぐらい大好きなシーンでした。復興運動会の開催は11月なので、被災して2カ月ぐらいの時期。小梅も周りのみんなも、苦しい中を生き抜いてきたはずなので、ご褒美をもらったような気持ちで、みんなやっと、うそのない笑顔で運動会をやれたことが素直にうれしかったです。幸せでした。

−ここまで演じてきた中で、最も印象に残っているシーンは?

 好きなシーンはたくさんありますが、震災後、バラックで孝蔵(森山未來)と清さんと3人で夜を過ごす場面(第24回)は、とても印象に残っています。私は実際に被災したことはありませんが、あのシーンでは、「心を寄せる」ということが、芝居ではなく、行動として成し得たような気がしています。「やろう」としなくても、本当の時間がそこにあったというか…。「あの時間は本物だった」と信じられる後味があります。セットの作り込みもすごかったので、電気が消え、ろうそくの火一本で話をするときは、気を抜いたら泣いてしまいそうでした。

−その場面のお芝居はどんな気持ちで行ったのでしょうか。

 最初はいつも通り笑い合える幸せな瞬間を大事にしながらも、夜になってすすり泣く声が聞こえてくると、それに共鳴して気持ちが引っぱられてしまう…。だから、しんみりしながらも、ただ悲しむだけでなく、最後まで悲しみ切る、というシーンになったと思います。

−橋本さんの故郷・熊本も震災を経験していますが、今回の関東大震災の場面と重なるものはありましたか。

 私自身が震災を経験したわけではありませんが、地震に遭ったときの気持ちや、小学校に数日間避難したときの苦労など、家族の話を思い出しながら、小梅の経験に重ねていきました。

−ところで、小梅は美川(秀信/勝地涼)とも恋に落ち、紆余(うよ)曲折の末、清さんと夫婦になりましたね。

 最初は、思いを寄せてくれる美川さんに期待していたところもあったと思います。でも、ああいうフラフラした人なので、愛想が尽きたんじゃないでしょうか(笑)。いずれにしても、真のパートナーではない、という思いはずっとあった気がしています。だから、清さんに対して「自分のことを理解し、守ってくれる頼もしい存在がこんな近くにいた」と感じることができた。美川さんへの不満が大きかった分、清さんと一緒にいることで幸せを実感できたんでしょうね。

−清さんを演じる峯田和伸さんの印象は?

 お芝居が歌みたいだな…というのが、最初の印象です。ご本人が音楽をやられていることが関係しているかは分かりませんが、流れるような語りが心地よく、とても魅力的でした。一緒にお芝居をしていても、触れ合っているわけではないのに、近くで守ってくれているような感覚があって…。それが本番のときだけでなく、ずっと続いている感じです。

−孝蔵役の森山未來さんの印象は?

 特にすごいと思ったのは、初高座のシーンです。私自身感動してしまって、小梅としてのリアクションに引き戻すのが大変でした。役柄としては立派に落語をやり遂げたわけじゃないのだけれど、でもほとばしる生命力を強く訴えてくるようなお芝居で、超スペシャルな舞台を見せてもらったような気持ちになりました。ただ、小梅としては何が何だかよく分からない状態だったので、手放しに喜ぶわけにもいかず、拍手したい気持ちを必死に抑え込んでいました。

−勝地涼さんが演じる美川はいかがでしょうか。

 勝地さんのお芝居には、パッパッと場面が切り替わる紙芝居を見ているような鮮やかさがあります。金栗(四三)さんの下宿に転がり込んできたとき(第18回)は、小梅が帰った途端、向かいに住んでいるシマ(杉咲花)ちゃんに声をかける場面があったので、「女性だったら誰でもいいんですか?」と聞いてみたんです。そうしたら、「僕もよく分からないです」と言われてしまいました(笑)。

−改めて振り返って、出演が決まったときのお気持ちは?

 台本を読んで、まず「すごいドラマだ」と、その面白さに心を奪われました。それからずっと「1年間、宮藤(官九郎)さんの哲学について行く」という感覚が続いているので、とても幸せです。「あまちゃん」(13)でも宮藤さんの脚本は経験していましたが、あの頃より自分の視野が広がったこともあり、「あのときは見つけられなかった宝物がいっぱいあった」と、もう一度土を掘り返しているような気分です。改めて、「あまちゃん」の台本を読んでみたくなりました。

−登場人物みんなが魅力的で、宮藤さんのキャラクターの描き方が見事ですね。

 みんな粒立っていて、ちゃんと存在感があって、みんなそれぞれのかわいらしみがあるので、見た人の印象に残る。そこに、宮藤さんの人間観察力の鋭さと、根底にある人間愛を感じます。小梅も、それほど頻繁に出てくるわけではありませんが、宮藤さんの愛情を感じるし、ちゃんと大事な役割があるような気がしています。だから、私もモチベーションを保てるし、何も疑わず、愛情を持って演じることができる。すごい脚本家さんだな…と。心から尊敬しています。

(取材・文/井上健一)

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