樋口恵子「猫は心のリハビリ介護士。遺産が少しでも遺せたら、代々の猫たちの恩に報いたい」

6月24日(木)9時0分 婦人公論.jp


ご自宅で愛猫とくつろぐ樋口恵子さん(撮影◎村山玄子)

昨日できたことが、今日できなくなるのが高齢者。『老〜い、どん!』『老いの福袋−あっぱれ!ころばぬ先の知恵88』などの著書で、高齢者のリアルをユーモアをもって綴る樋口恵子さんは、3匹の猫と同居中。樋口さんにとって、心のリハビリ介護士でもある猫との暮らし、高齢になってからのペットとの付き合い方を綴ります。

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猫と遊ぶと口角があがる


うちには目下、3匹の猫がいます。ちょっぴり落ち込んでいても、体調が悪くてしんどくても、猫と遊んでいるとすぐに口角があがって笑顔になります。猫の名前を呼ぶときは、まさに「猫なで声」。娘と口喧嘩しているときとは、別人のような声になります。私にとって猫は、心のリハビリ介護士です。

高齢になってから犬や猫を飼いたいという方、けっこういらっしゃるようですね。でも餌代や医療費がかかる。餌やりや排泄物の始末などもそれなりに大変です。

なによりの問題は、自分が病気で倒れでもしたら、そのあと誰が面倒を見るのか。実際、保護犬・保護猫活動をしている団体や動物愛護センターに持ち込まれるペットは、飼えなくなった高齢者からのケースもあるとか。

そのため保護活動をしているNPO団体でも、原則60歳以上の人には譲渡しないところがほとんどです。でも「預かりボランティア」というような形で、高齢者でも保護犬や保護猫と暮らすことができる場合もあるそうです。これは、新しい里親が見つかるまで一定期間預かってお世話をするという方法。

保護団体によってシステムが違いますが、審査を通ってボランティアになったものの、自分が病気になるなどの理由でペットの世話ができなくなった場合、もとの保護団体で引き取ってもらえるところもあるようです。他のボランティアの方々とのかかわりを通して社会参加でき、新しい世界が広がると思います。

私は遺産を残せるかどうかわかりませんが、もし多少なりとも残ったら、高齢の飼い主と死に別れた動物のお世話をしている団体にほんの寸志程度でも寄付をしたいと考えています。あるいは、高齢者の心を慰めたペットたちが最後まで幸せに暮らせる老ペットホームをつくるための基金に加えていただけたら——。これまで代々の猫たちから受けた恩に、多少は報いることができるのではないでしょうか。

穴あきセーターが外出着に昇格


猫関連で、もう一題。

私はそそっかしいので、食事中、すぐ食べこぼしをします。家でよく着ていたベージュ色のセーターに、うっかりお肉のおいしい汁をたらり。肩口と胸のあたりにこぼしてしまいました。すると、すぐにくいしんぼうの猫が飛びついてきて、汁がついたところだけ齧ってしまったのです。


『老いの福袋』(樋口恵子・中央公論新社)

さて、1センチほどの穴が2ヵ所もあいているセーターをどうしたものか。色はちょっと地味ですが、ウールにシルクとアンゴラの混紡で、とても着心地がよく、軽くて暖かいのです。だから、いくら猫に齧られようと、着続けたい。

すると助手が、「知り合いに直しものが上手な人がいますよ」と言って、預かっていきました。

しばらくして仕上がったセーターを見てびっくり! 同じような色の毛糸で立体的な花を作り、三輪くらいまとめて花から房が垂れるようにして、肩と胸元につけてあるのです。なんでも《ダーニング》と呼ばれる、イギリスの伝統的なつくろい方だそうです。

そんなわけで穴あきセーターは、外出着に昇格。「そのセーター素敵ですね」と褒められると、内心しめしめ。

たとえ多少くたびれても、穴があいてポンコツになっても、工夫次第でもとより素敵になるのですね。こじつけかもしれませんが、なんだか高齢者のありようと似ているなと思い、ベージュだけに米寿のお祝いのときに着ることにした次第です。

※本稿は樋口恵子『老いの福袋-あっぱれ!ころばぬ先の知恵88』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

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