踏み間違いを回避、町工場開発の踏みすぎると効かぬペダル

6月24日(月)16時0分 NEWSポストセブン

【グラフ】年齢層別ペダル踏み間違い事故の割合

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「アクセルとブレーキの踏み間違い」──単純なだけに深刻な事故原因を軽減すべく、町工場が動いた。


『交通事故総合分析センター』によると、踏み間違いによる事故は、この10年間で全体的には減少傾向にある。が、70代以上の女性ドライバーによる踏み間違い事故は増加している。全事故に占める踏み間違い事故の割合を見ても、75才以上が起こしやすいことがわかる。


「若い世代の踏み間違いは運転技術の未熟さが原因です。一方、高齢者の踏み間違いは身体能力や判断能力の低下によるものが大きいです」


 と語るのは、高齢者安全運転支援研究会事務局長の平塚雅之さん。


「例えば、料金所などで一旦停止して窓から身を乗り出す時、あるいは、駐車しようと右後方を向いて後進する時など、姿勢を変えた時に、ブレーキに置いている右足先がズレて、無意識のうちにアクセルを踏んでいる、という例があります。こうしたケースは身体能力の低下によるもので、高齢ドライバーに多いです」(平塚さん・以下同)


 こうした人的要因のほか、ペダルの形状も原因になり得る。


「ブレーキペダルはアクセルよりも少し手前に出ているため、ブレーキを踏むには足先をアクセルよりも上げなくてはいけません。段差がなくてもつまずきやすい高齢者にとって、このペダルの配置やわずかな高低差が影響することがあります」


 車の形状が支障になることもある。


「昔のオートマチック車はギアが上から順に、P・R・N・Dと縦一列に並んでいるものでしたが、最近は車種によって並びや表示が異なります。そのため、車の買い換え時などにミスを起こす。長年のクセでDに入れたと思ったらRに入っていて後進してしまう、といったことが起こるのです」


 自分のミスに気づいて、とっさにブレーキを踏み込む——はずが、アクセルを力一杯踏み込んでいた…。


「高齢者は、アクセルをブレーキだと思い込み、ブレーキを踏んでいるつもりでアクセルを思い切り踏み込んで暴走してしまうこともあります。身体能力や判断能力の低下が踏み間違いを起こし、大きな事故につながってしまうのです」


 そうした踏み間違いを1件でもなくすべく、10年前から開発を始めたのが、埼玉県川口市の町工場『ナンキ工業』社長の南平次さん(79才)だ。


「高齢ドライバーの事故に“踏み間違い”が多いというニュースを見たことがきっかけです。アクセルとブレーキの踏み間違いを防止するものではなく、踏み間違えても事故に発展させない装置を作れないか、と発想したのです」(南さん)


◆どの車にも対応したい


 南さんは開発から4年目に特許を取得。その後、岡山県の機械設計製造メーカー・英田エンジニアリングが製造を請け負い、量販体制を整えてきた。南さんの着想から10年目となる今年6月、満を持して全国展開を開始させた。それが、『STOPペダル』だ。


『STOPペダル』は、アクセルを思い切り踏み込むと、調整ネジが開いてアクセルに作用する力が開放され、踏み込んだ力がブレーキに作用して、結果、車が停車する。ペダルを踏み込む強度は調整可能で、通常のアクセル操作でブレーキがかかるような誤作動はないという。南さんのアドバイスのもと、記者が試乗してみた。


 アクセルを軽く踏むとゆっくりと前に進み始める。そこでグンッと思い切り踏み込んだ。すると、キュルキュルッとエンジンが空転する音をさせながら惰性で少し進んでから車は優しく止まった。


 バックも試す。アクセルを踏むと後進し、そのまま思い切り踏み込むとエンジンが解除されブレーキがかかる。思いのほか止まり方が優しい。


 続けて周辺を10分ほど走ってみた。幹線道路では法定速度の80㎞までスピードを上げたが、装置が作動することなく、いつもと変わらない運転で装置の存在を一切感じなかった。


 高齢ドライバーの踏み間違い事故が連日伝えられるなか、『STOPペダル』への期待が大いに高まっている。


 ちなみに、岡山県美咲町では昨年5月から、同県美作市では今年5月から、それぞれ65才以上を対象に装置の取り付けに補助金の交付がスタートし、本体価格と取り付け費用の3分の2(各上限額あり)の金額が助成されている。


 この両自治体の動きに全国の自治体が関心を寄せ、両市町には多数の問い合わせがあるという。


「私の開発した『STOPペダル』が全国に広がればと願っています」(南さん)


 後付け式のこのペダルは、装置を取り付けるブレーキアームが車種ごとに違う。現在取り付け可能な車種はトヨタの「アクア」で、6月下旬以降、スズキ「ワゴンR」などが販売予定。いずれはどの車種にも対応できるよう増やしていく予定だという。


※女性セブン2019年7月4日号

NEWSポストセブン

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