磯村勇斗&古舘寛治らが声で演じる『めくらやなぎと眠る女』日本語版特別映像
2024年6月25日(火)17時0分 シネマカフェ
音楽家でアニメーション作家のピエール・フォルデスが村上春樹の6つの短編(「かえるくん、東京を救う」、「バースデイ・ガール」、「かいつぶり」、「ねじまき鳥と火曜日の女たち」、「UFO が釧路に降りる」、「めくらやなぎと、眠る女」)を翻案した本作。アヌシー国際アニメーション映画祭2022では、長篇部門審査員特別賞を受賞した。
この度解禁となったのは、磯村勇斗、玄理、塚本晋也、古舘寛治らが参加した【日本語版】の特別映像。
とある大震災から数日後。ある夫婦、小村(磯村さん)とキョウコ(玄理さん)の間には決定的な亀裂が生まれていた。一言も発さずニュース報道を見つめ続けるキョウコ、そんな妻に戸惑う小村。そしてキョウコは「あなたとの生活は空気の塊と暮らすみたい」と手紙を残し、小村の元を去る。
時同じくして、小村の勤める信託銀行の同僚・片桐(塚本さん)は、融資を焦げ付かせそうになり上司から突き上げを食らっている。暗い気持ちで家の扉を開けるとそこにいたのは、巨大な「かえるくん」だった。
かえるくん(古舘さん)は、さらに大きな地震が来ることを片桐に告げ、その原因である「みみずくん」と共に戦ってほしいと片桐に頼む。「私は平凡な人間なんだ。私を愛してくれる人は誰もいない。なんで生きているのか自分でも分からない。そんな私のような人間が、東京を救える訳がない」と改めて自分を見つめ直し、涙する片桐。
キョウコは20歳の誕生日のことを思い出していた。体調が急変したバイト先の店長から、店と同じビルに住むオーナーにディナーを届けてほしいと頼まれる。初めて出会ったオーナーはキョウコを部屋に招き入れ、「20歳になるこの特別な日に君は偶然温かい食事を運んだ。だから君にプレゼントをあげたい。特別な日だからこその特別な贈り物だ」という。
キョウコが去った後、小村は同僚の佐々木から、旅行がてら小箱を北海道の妹の元に届けてほしいと頼まれる。佐々木の妹に小箱を届けた小村は、妹の友人・シマオとラブホテルで過ごすことになる。
過去に囚われていた人々、自身が行き詰まっていたことすら気づいていなかった人々が、遠い記憶や夢をさまよいながら次第に自分と向き合い、緩やかに解放されていく。オーナーを演じた柄本明の「願いはあるかい? お嬢ちゃん」という声が夢とも現ともつかない、しかし不思議な説得力を持って響く。
今回の日本語版制作においては、深田晃司監督が演出を務め、来日したピエール・フォルデス監督も全収録に立ち会い監修。元々音楽家としてキャリアをスタートしたフォルデス監督は、日本語は分からないものの、音程や強弱に敏感で、セリフを音楽のように捉え監修を行っていた。
キャストも映像のキャラクターの動きに合わせて演技し、それをマイクで追いかけるというスタイルで収録されたため、ウィスパーボイスも印象的に使用されている。英語と日本語では抑揚や響きも違うことから、絵の口とセリフを合わせる作業や全体の音のトーンの調整など非常に繊細な作業が行われた上で、日本語版が完成した。
英語(日本語字幕付き)の【オリジナル版】と【日本語版】の2バージョンでの公開となる本作。それぞれの音の響きの違いにも注目だ。
『めくらやなぎと眠る女』は7月26日(金)よりユーロスペースほか全国にて公開。