『あいのり』でっぱりんは桃に続くネットセレブになれるか

6月25日(火)16時0分 NEWSポストセブン

 近年、ネットを活動拠点として職業にする人が激増した。ブロガーから始まり、今やYouTuberは子供が将来なりたい人気職業に数えられている。『あいのり』(フジテレビ系列)出演で人気者となった桃が芸能人ではなくブロガーになってから10年が経った。後継番組『あいのり Asian Journey』(Netflix)で一躍、時の人となった“でっぱりん”はブログ、Twitter、Instagramに加え、先頃、カップルでYouTuberデビューした。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、『あいのり』シリーズ出身者のネットでの存在感について考えた。


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 現在、ネットテレビ業界で最も人気を集めるコンテンツがリアリティショーである。


 高校生が出演する『オオカミくんには騙されない』(AbemaTV)、オシャレな生活っぷりが魅力の『テラスハウス』、アジアを男女7人で旅をする『あいのり Asian Journey』(ともにNetflix)、1人の男性を20人の女性が奪い合う『バチェラー・ジャパン』(Amazonプライム・ビデオ)などなど、各動画配信サービスで制作されている。


“恋愛”をキーワードに私生活を公表し続けるリアリティショー、なまじな覚悟では参加できない。常時、カメラが回っているため、建前を演じ続けることは難しく、人として嫌な部分が映ってしまうこともある。これらの理由から出演者がSNSで非難されることも多い。


 ただ、制作陣にとっては苦情を集めるトラブルメーカーこそ創作の女神ミューズだ。リアリティショーとは、人間性を疑われる人ほど映る機会が多い皮肉な舞台。クセがない人が出演しても埋もれる。難儀な性格が評価にも非難にも繋がる。出演すれば間違いなく面倒なことになるが、出演を希望する人が後を絶たないのはデメリットを超えるメリットがあるからだろう。


 そもそも出演者といっても、タレントと素人の境界線上にいる人が多い。誰もが番組をキッカケにメジャーになることを期待。また、出演時は素人であっても虎視眈々と“何者か”への転身を狙っている。


 素人から“何者か”へ、そのブランディングに最も成功したひとりが現在ブロガーとして活躍する桃だろう。2007年から2008年の1年間、フジテレビで放送されていた時代の『あいのり』に出演。長期の出演と飾らないキャラクターで女性の支持を集めた。


 そんな桃は意中の相手への告白に成功し、日本に帰国してから1年後『桃オフィシャルブログ』を開設する。恋とメイク、そしてファッションと、女性が好むものに特化したブログは当初から人気が高かった。


 ちなみに、2009年2月07日の初投稿は桃の母親が開発したという「眠べえ」という睡眠時無呼吸症候群対策に効果がある枕の紹介。初っ端からアフィリエイトにも力を入れているようにしか読めないが、桃は文章がうまい。父親のいびきを見た母親の愛から「眠べえ」が生まれたエピソードを披露。商品の押しつけがましさを読者に感じさせることはない。


 常時、話題を作り出すことに余念がなし。『あいのり』で出会った彼氏との破局、2017年には一重まぶたを二重に整形する過程を投稿。私生活を晒す、桃のブログはリアリティショーに似ている。タレントほど遠くない距離感、読者が共感する記事に特化した桃は現在も小さなカリスマとして君臨中。AmebaBlog総合ランキング1位の常連、桃は『あいのり』の旅で獲得した知名度をきっかけにタレント活動を経由せずブロガーという職業を得た。


 タレントと同等にYouTuberやインスタグラマーといったネットを拠点にするセレブが人気者となった現在、桃の先見の明がわかる。


 ネット上で人気者になるには、ビジュアルやキャラクターが必須。しかし、まずは知名度とSNSのフォロワー数を獲得したいところ。このふたつを手っ取り早く得るためには人気リアリティショーへ出演が近道だ。


 そういった意味で『あいのり Asian Journey』に出演していた“でっぱりん”は、最近観たリアリティショーの出演者で最もタレント性がある人だった。視聴者に好印象を与えるタイプではないが、番組を観た人は彼女を忘れない。兎に角キャラが強い、番組への貢献度を考えれば、桃と同じくネットセレブになるチャンスを得た人ではあった。


“でっぱりん”は『あいのり』の旅を通して、各国で現地人がドン引くトラブルを起こし続けた。考えていることを言語化する能力が乏しいが、自分の気持ちは誰よりも知ってもらいたいタイプ。キレたら最後、旅はメンバーとスタッフを巻き込みカオスと化す。自己主張が苦手な女性メンバーには大声で恫喝し、総括を求める。その様子を注意した男性メンバーとスタッフをボコる。


“でっぱりん”は、長年続く『あいのり』のコンセプト“真実の愛を探す旅”を“暴力による支配の旅”へと変貌させた女帝だった。


「キレたら殴る人」を恋愛対象に置くことは難しい。しかし、"でっぱりん"は各国で男性メンバーから求愛を受けた。スタジオでは司会を務めるベッキーが「スタッフはみんな“でっぱりん”のことが好きなんだよ」「“でっぱりん”は人間力がある」と訴えていた。その意見に僕は同意出来なかったけど……。


『あいのり』のミューズだった“でっぱりん”がカップル成立した時点で『あいのり』シーズン2は終了(シーズン3もあると思う)。そして、日本に帰国した“でっぱりん”は満を持してYouTuberデビューを飾った。


“でっぱりん”のYouTubeチャンネル『きっきりんチャンネル』は、帰国した男性メンバー(現在は彼氏)とのネタ動画が投稿される。「ケンタッキー1万円分食べてみた」など、初期のYouTuberがやった企画を今頃やっている。つまり、現状ではフツー以下のチャンネル。『あいのり』で魅せた暴君さ、小学生のように地団駄を踏む激しさといった要素が一切ない。


 普通の人はムカついても人を殴ることはできない。社会性があるからだ。しかし、“でっぱりん”にそんなことわりは通用しない。泣きながら吠えて殴る。僕がこれほど言及するのは、自分が失った野生を持つ“でっぱりん”への嫉妬だ。ゆえに、一視聴者として聞きたいことは「どの瞬間に殴ろうと思ったのか」といった『あいのり』の裏側。もしくは、番組では伝わらなかったモテた理由の自己分析である。カップルのイチャイチャ動画なんて肩すかし。


 勝手な杞憂だが、このままでは“でっぱりん”は桃のようなネットセレブになれない。ひょっとすると、そういった身分を当人は望んでいない可能性もあるが……。


 番組放送時、スタジオでは「“でっぱりん”の『あいのり』愛が強すぎる」と指摘されていた。ベッキーたちスタジオトークで言うところの『あいのり』愛とは、“真実の愛”へと突き進むことだろう。カップルが成立した今では、自分の恋愛をまっとうすることしか考えていないのかもしれない。


 そんなことを考えた矢先、“でっぱりん”のツイッターを見れば自己紹介欄には「お仕事のご依頼はDMにて」と記載。やっぱり、彼女はイベントの出演オファーを待っている。上記したことは不正解だった。“でっぱりん”は間違いなくネットセレブの座を狙っている。


 ならば、リアリティショーで定められたキャラクターを、ネットでは、より追求すべきだ。彼氏とイチャつく動画より、スカイプでアンチとケンカする動画に勝機があり。視聴者は何よりもキレる痛快な“でっぱりん”を求めている。

NEWSポストセブン

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