小林幸子が守り続ける「美空ひばりのたった一つの教え」

6月26日(水)7時0分 NEWSポストセブン

小林幸子が振り返る美空ひばりさんとの思い出

写真を拡大

 9歳の時、テレビのオーディション番組で美空ひばりさんのモノマネをして優勝したことをきっかけに、歌手デビューを果たした小林幸子(65)。美空ひばりさんは芸事に対する厳しい姿勢でも有名だったが、小林のモノマネを高く評価したという。小林幸子がデビュー55周年の軌跡を振り返る短期集中連載の第3回では、美空ひばりさんが「一度だけ教えてくれたこと」を紹介する。


 * * *

「創造とは記憶である」。これは「世界のクロサワ」こと、映画監督の黒澤明さんの言葉です。黒澤監督が言うには、何もないところからものは創り出せない、ということらしいのです。


 生まれてから今まで、経験したことや本を読んで記憶に残ったことが、知らず知らずに蓄積されていって、それがふとしたきっかけで呼び覚まされて、創造されていく……。黒澤監督の言葉は、すべての事柄に当てはまると、私は考えています。


 芸事の世界の言葉で言い換えるなら、「プロの技は見て学べ」。最初からオリジナルの歌い方ができる歌手なんて、存在しません。皆、少なからず誰かのマネをして、それを自分の中に取り込んで血肉にしていくのだと思います。


 私自身、デビューのきっかけは「モノマネ」です。TBSのオーディション番組『歌まね読本』に、かつて歌手になりたかった父が、勝手に応募していました。


 9歳の時のことです。番組のタイトル通り、歌マネを競う番組で、歌ったのは、美空ひばりさんの歌。この番組のグランドチャンピオン大会で優勝したことで、私は歌手デビューを果たします。


 当のひばりさんからは「お幸」とかわいがられ、「お幸のモノマネがいちばんいい」と褒めていただきました。でも実際は、ひばりさんの「ここの節回しを盗もう」と思ってマネしてみるのですが、絶対にひばりさんと同じにはなりません。


 それでもマネするしかない。なぜなら、誰も教えてくれないからです。自分で学ぶしかない。ひばりさんに限らず、いろんな歌手の方の「いいな」と思うところを必死にマネして、自分の中にため込んでいく。


 それを自分なりに咀嚼して、自分の口から歌声として発した時、それがオリジナルになるのです。


 ひばりさんは背中で語っていました。「お幸、芸は自分で見て覚えるんだよ」


 そんなひばりさんでしたが、一度だけ、私に直接アドバイスしてくれたことがあります。私がテレビのバラエティ番組で、三度笠、股旅姿で時代劇のコントを演じていた当時のこと。ある時、ひばりさんに偶然お目にかかり、こう言われたんです。


「お幸、こないだの番組、透明なマニキュアをしてたでしょう?」


 驚きました。私自身、マニキュアをしていたか、定かではありませんでした。


 VTRで確認してみると、ほんの一瞬、ツメが映っていて、それをひばりさんは見逃さず、指摘してくれたのです。


「たとえバラエティであっても、時代劇は時代劇。どんなことがあっても、マニキュアはしちゃいけないよ」


 細かいところにも十分に気を配る。そうひばりさんは教えてくれました。ひばりさんは今でも私のお手本です。行き詰まったらひばりさんをマネしてみる。学ぶことはまだまだ、数え切れないほどあります。


※小林幸子著『ラスボスの伝言〜小林幸子の「幸」を招く20のルール』より抜粋

NEWSポストセブン

「美空ひばり」をもっと詳しく

「美空ひばり」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ