メキシコに夫(荒波翔)の応援に行ったら、魔術師になったオビスポと再会した話

7月6日(土)11時0分 文春オンライン

 夫の姿を探すよりも早く、懐かしい顔を見つけたので、面識もないのに思わず声を掛けていました。


「オビちゃん! オビちゃーーーーん! 私、巨人の大ファンでオビちゃんのこと応援してました!」


 メキシコ第三の都市モンテレイ。夫である荒波翔の応援のために訪れたスルタネススタジアムで待っていたのは、巨人、日本ハムで活躍したウィルフィン・オビスポ投手との“再会”でした。日本語通訳の方がすぐに駆けつけてくれたのですが、オビちゃんは「日本語、ワカル、ワカル」と優しく対応してくれました。オビちゃんは今、メキシコで大変な人気選手になっているのです。ストッパーとして球団のセーブ記録を更新し、ついたあだ名は「el・mago(魔術師)」。投球前に右手を高々と掲げるルーティンがおなじみになっているようで、球場のショップでもオビちゃんの投球前のモーションをプリントしたTシャツが売られていました。


 大分ふくよかになってはいましたが(写真参照)、私が見た試合でも97マイル(約157キロ)をたたき出すなど、日本時代と変わらぬ……いや、それ以上にキレッキレの剛球でバッターを抑え込んでいました。久しぶりに見るオビスポが異国の地で躍動する姿は、巨人ファンとしてなんだか誇らしく、これは日本の巨人ファンの皆さんにも伝えたい。そう思いました。オビちゃんはメキシコの地で“魔術師”となって、活躍しています。



メキシコの地で“魔術師”となって活躍している元巨人・オビスポ ©宮崎瑠依


メキシコで感じた日本とは違った野球の面白さ


 夫・荒波翔に話を戻します。彼は昨年DeNAを退団した後、年が明けた2月下旬に、スルタネス・デ・モンテレイから春季キャンプの招待状が届き、1週間もしないうちにメキシコに旅立ちました。私は彼を追うように、3月、5月、6月と3度メキシコに遠征したのです。メキシコというと“治安が心配だ”とよく言われます。確かにアメリカ映画を観ていると“マフィアはみんなメキシコに行っている”そんなイメージがあります。しかし、ダラス経由約16時間のフライトの末にたどり着いたモンテレイは、そんな心配を一瞬で吹き飛ばすほど、温かい街でした。モンテレイはスポーツ熱がとても高く、飲食店に入れば必ずと言っていいほどサッカーや野球などのスポーツ中継が流れています。また、日本人にとても好意的で、球場で色んな人から声をかけられたり、一緒に写真を撮ろうと肩を組んでくれたり、とてもフレンドリー。スペイン語が分からなくて困った時も笑顔で身振り手振り必死にコミュニケーションをとってくれるような、優しさに溢れた街なのです。


 スタジアムの雰囲気は日本と全然違います。とにかく陽気で、クラブのような爆音でBGMが鳴り響き、試合中も照明がついたり消えたり(もちろんボールデッドの時ですが)演出がド派手! また、巨大スクリーンに映されるスタンドの女性がセクシーな美女ばかり(笑)。


 スタジアム内で私が特に気に入ったのが、「カルネアサーダシート」。カルネアサーダとは、メキシカンバーベキューのことなのですが、モンテレイの人たちは、とにかくこのカルネアサーダが大好きなんです。外野席の周りをぐるっとカルネアサーダシートのテントが並び、試合中も構わず焼きまくるので、“大丈夫なのかな”というぐらい煙がもくもく! 夫も「センターの守備位置までいい匂いが漂ってくるんだよ」と言っていました(笑)。


 また、日本では皆メガホンをカチカチ鳴らして応援をしますが、メキシコでは“マトラカ”というラテンアメリカの民族楽器を使って応援します。柄の部分を持ち、くるくる回すと“ガラガラ”と音がなるもので、スタンドのあちこちからこのガラガラという大きな音がなっていて、これがなんと言うか……なかなかうるさいんです(笑)。でもメキシコ流の応援がしたくて、私もすぐマトラカを手に入れ、ガラガラ鳴らして夫の応援をしました。スタンドには応援団もいて、「Vamos!Sho!!」というスペイン語の熱い声援からも、異国の野球を感じました。



 ほかにも日本の野球と異なる点がたくさんあります。雨で中止のときは、翌日、日本の野球ではほとんどないダブルヘッダーが当たり前。しかもダブルヘッダーのときは2試合とも7イニングで終了という特別ルールがあったり、延長無制限なので同点の場合は何時まででも続き、深夜2時過ぎまで試合をしていたこともありました。同じスポーツでも国が違えば文化が違う。メキシコで、また違った野球の面白さを感じることができました。



荒波翔の挑戦はまだまだ続く


 メキシカンリーグにはNPB経験者がたくさんいます。オビちゃんや夫がDeNAでチームメートだった久保康友投手のほかにも、モスコーソ、クルーズ、アマダー、ロサリオ、ナバーロなどなど。試合中にスルタネスのベンチから「カットバセ、カットバセ、ショー!」という声が聞こえたと思ったら、元日本ハムのドレイク選手が叫んでいたということもありました。そういったNPB経験者から話を聞いているからか、チャンスがあったら日本球界でプレーをしてみたいという若手選手もたくさんいるそうです。


 私の夫・荒波翔は残念ながら6月下旬にチームからリリースされてしまいました。招待キャンプを経て契約を交わした後も、契約期間は1か月ごとの更新。外国人枠も数が限られている狭き門です。厳しい条件ではありましたが、キャンプから始まって約4か月間、サヨナラヒットやホームランキャッチなど、メキシコのファンに印象付ける活躍をたくさん見せてくれました。しかし、どんなスーパープレイよりも、毎日ものすごく楽しそうに野球をしている夫の姿が見られたことが、私はとても嬉しかった。慣れない異国の地で、言葉や文化の壁にぶつかりながらも、全身全霊で野球を楽しむ姿は、非常に頼もしく誇らしく思いました。野球を続けたいという夫に、地球の裏側から手を差し伸べてくれたスルタネスには、感謝の気持ちしかありません。先月スルタネススタジアムで開催された「サムライシリーズ」では、私がウグイス嬢をやるという嬉しいサプライズがあり、その日のスターティングメンバーを日本語でアナウンスしました。「1番センター荒波翔」のコールができたことも、一生の思い出です。


 こうして振り返ると実に濃厚な4ヶ月。メキシコのBeisbolが経験できたことは間違いなく大きな財産になりました。夫のことですから、次もまたきっとなにかに挑戦する道を選ぶでしょう。どんな挑戦かはまだわかりませんが、夫の気持ちを尊重し支え続けます。私たちにとって“人生は大冒険”。想像できる未来よりも、想像のつかない未来に興味があります。だからこそ、荒波翔の挑戦はまだまだ続きます。


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(宮崎 瑠依)

文春オンライン

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