ジェーン・スー×中野信子「なぜ男は女の容姿にこだわるか」

7月8日(月)16時0分 NEWSポストセブン

ジェーン・スーさんと中野信子さんが語る「男が女の容姿にこだわる理由」

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 コラムニストのジェーン・スーさんと脳科学者の中野信子さんが膝を突き合わせて話し合った対談集『女に生まれてモヤってる!』が刊行された。話題を集めている同書の中から一部を紹介する。今回は、多くの男性が女性の容姿にこだわる理由について。中野さんによると、オスが重視するのは顔の善し悪しではなく、体のアノ部分でした!


 * * *

スー:好きになる相手の容姿に強くこだわるのって、男性のほうが多い気がするんだけど、どうかな。確かに面食いを自称する女性も多いけれど、結婚相手に選んだ人は別にイケメンじゃなかった、みたいな例はいっぱい知ってる。


中野:そもそも女性と男性では、異性を選ぶときに活動する脳の働きが違うんだよね。実は多くの女性は、あんまり相手の外見を重視していない。女性は前頭葉にある機能で、振る舞いや雰囲気で好ましく思う相手を判断しているらしい。じゃあ一方で男の人はどこで相手を選んでいるかって言うと、これは完全に視覚なんですよ。だから、「ただしイケメンに限る」っていうテンプレ(紋切り型)は完全なる誤解。「ただし美人に限る」という男側の認識が強いから、女もそうだろうと思い込んでいるんでしょうね。


スー:男性が容姿にそこまでこだわる理由は何なんだろう?


中野:進化上、容姿にこだわらなきゃいけない理由があったんでしょうね。これまでの人類の歴史では、子孫を多く残して、その子孫が多く生き延びた人がさらに生き延びているわけだから。どんなに強くて優れていても、子どもを残さなかった人の遺伝子はそこで終わり。次の世代には残らない。だから、今生き延びている人の遺伝子はとりあえず今の勝利者とも言える。そこを踏まえた上で、男の人の異性の選択基準が視覚だったということは、そう選ぶことが適応的だったということになる。ただし、かつてヒトのオスがメスを選ぶときの視覚の基準としては、顔の美醜よりもくびれがある体型だということのほうが重要だったというのが研究者たちのコンセンサス(合意)としてはあるようです。


スー:おっぱいよりくびれなんだ? お尻の大きいメスが魅力的とされていたけど、二足歩行になって前からお尻が見えなくなったからおっぱいの大きさが重要になったって話を聞いたことがあるけど。


中野:お尻が大きいって、つまりくびれがあるということにもつながるんですよ。ウエストとヒップの比率を指すウエストヒップレイショ(WHR)という有名な指標があるのですが、このWHRが0.6〜0.7の範囲に入る女性の子どもたちと、そうでない女性から生まれた子どもたちのIQを比較すると、WHRが0.6〜0.7の女性から生まれた子どもたちのほうがIQが有意に高かったんです、なぜか。


スー:ちょっと、寸胴体型の身にもなってよ。


中野:おっぱいなんか大きくても小さくてもどっちでもいいらしいんですよ。胸の大小は生存には関係してこない。さっきスーさんが言っていたように、たんにオスがお尻を好きだということから、擬似的なものとして進化した無駄な器官がおっぱいなのかもしれない。


スー:赤ちゃんにおっぱいをあげるからといって、乳房が大きくある必要なんかないものね。他の哺乳類だってそうだし。


中野:そうそう。牛の乳房だって別に垂れているだけだから。大きいわけではない。人間の胸はクジャクの羽と一緒で無駄なものだよね。WHRと男性の嗜好の関係を調べた研究は他にもたくさんあるけれど、どうも男の人はそういうくびれが好きらしい。子どものIQが高くなる理由としては、オメガ3脂肪酸を多く持っている女性の子だからだとか、それが脳を作るための原料として使われるからだとか、諸説あります。まとめると、これまではたんなるスケベ心だと思われていた男性の「性選択」が、実は自分の遺伝子を賢く産んでくれる女性を探すための指標だったのかもしれない、という話なんだけど。


スー:なるほど。でもここ間違えちゃいけないポイントだよね。「だから男が女をスケベな目で見るのはしょうがない」とは絶対にならない。私たちはたまたまそういう傾向の遺伝子を持つ子孫として生まれたってだけの話で、人をスケベ心でジャッジしていい理由にはならない。貴様の理性はどこ行ったって話だよ。


中野:そう、たんにこれまではそうでした、というだけの話だね(笑)。IQの高い子を産ませるためにくびれのある女を選べ、なんて言っているわけではないですからね!


スー:性選択って言葉の意味を詳しく教えてー。


中野:性選択とは、一方の性がもう一方の性を選ぶときに起こる選り好みのこと、というとわかりやすいかな? 有性生殖をする種では、一方がもう一方の性を選ぶときに、生殖や生存には実は関係ないにもかかわらず、その性質を選り好みするがためにどんどん片方の性のその形質が派手になったりエクストリーム(極限、過激)な方向に行ったりすることがあるのね。クジャクのオスの羽とか、あんなに派手な必要ってないでしょ? 逃げるのにも大きすぎて大変だし、目立つから、あっという間に天敵に見つかって殺されそうなのに。フラミンゴだってあんなに体色が鮮やかである必要はないよね。赤い体色って体に負担になるものなので、そんなにいいことではないとされている。だけれども、メスがどうもそれを好んだので、どんどん赤くなっちゃった、という話。


スー:クジャクもフラミンゴも、オスのほうが派手なんだっけ。


中野:鳥類は大体そうだね。オスのほうが派手だよね。


スー:視覚的なインパクトにそこまで左右されるなら、どの種においても「見た目の麗しさ」という価値が大幅に下落することはないのかなあ。時代の価値観が変わって、それに匹敵する他の何かが登場する可能性はあるだろうけど。


中野:性選択のあり方が変わってしまえば、美人の基準も変わっていくね。たとえば人が視覚を失って男性が女性を選ぶときのポイントが顔の美しさじゃなくなれば、「居心地のいい人」であることが高ポイントになっていったりするかもしれない。


スー:女友達が結婚相談所に行ったら、カウンセラーから「30歳の美人より、22歳の不美人」とハッキリ言われたって。結婚相談所では美しさより若さに高い価値がつくと。嫌な話ですが、子どもを作ることを考えるとそうなるんだそうです。


中野:「若さ」にも性別の非対称を感じるね。「やっぱり男は若いほうがいいよね」と思っている女性は、少なくとも私の周囲ではほとんど見ないし。


スー:「お金」「地位」「人生経験」がないとマイナスとみなされがちな男という性別。まったく同じ資質が「うぶ」としてプラスに捉えられがちな女という性別。恐ろしい! 加齢がネガティブ要素にならない男システムは、正直うらやましいわ。年齢やキャリアの積み重ねがプラスに転じやすい。女の場合は逆なんだよね。さっさと是正されてほしいけど、変化はいつも期待よりは緩やかなもの。過渡期をどう生き延びるか、それぞれが考えないとね。旧来型の性選択に振り回されている場合ではない。


中野:その通り。今の社会でよしとされている気遣いを筆頭とした「女らしさ」は全部、近い将来にはビッグデータの解析で誰でもできるようになるしね。女がやらなくてもAIがそれこそ完璧にできるようになっちゃう。


撮影/藤岡雅樹

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