ヤクザ報道の裏側「怒鳴るところ撮れ」「自ら警察通報」等

7月10日(水)16時0分 NEWSポストセブン

ヤクザとタピオカの記事が話題の鈴木智彦氏

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 芸人の闇営業問題がメディアを賑わせ続けているが、証拠として反社会勢力と一緒に撮った写真や動画がとりあげられている。ヤクザ取材を専門にしてきたノンフィクション作家の溝口敦氏とフリーライターの鈴木智彦氏が、かつてはみずからメディアに登場して激しく自己主張していたヤクザが、ほとんど顔出ししなくなった現状について語り合った。


溝口:実はついこの前、「暴力団取材」というテーマで、新聞記者たちの前で講演をしてきたんですよ。全国紙から通信社、地方紙の記者まで30人ぐらい、日本記者クラブに呼ばれていろんな質問に答えてきました。どう取材したらいいのか分かんないから、私なんかが呼ばれるんだろうね。


鈴木:何を聞かれたんですか?


溝口:「なんで暴力団に興味を持ったのか」とか僕に関する質問が多かったけど、「ヤクザに取材したいけどどうしたらいいのか」って質問もありました。


鈴木:何て答えたんです?


溝口:その情報に関係してそうなヤクザか取り巻きに電話を入れて感触を図ってから取材に入るべきだと。いきなり会おうとすると警戒心も強いし、一癖も二癖もある。一歩間違えたら自分が逮捕されかねない。そこまでして取材する必要があるかを考えるべきだと。


鈴木:確かに、昔はヤクザも出たがりで、新聞にもテレビにも顔出し実名で出ましたけど、今はヤクザの側も正面から取材を受けるのを嫌がりますからね。マスコミに出ると、警察から目を付けられやすくなるし、暴力団組織の中でマイナスに働く可能性もある。


溝口:山一抗争(*)の頃はお互いに顔をさらして、テレビで「ふざけんな!」って言いながらドンパチやり合っていましたが、今度の山口組分裂抗争ではほとんど顔出しで出てくるヤクザはいなかった。


【*1984年、竹中正久組長が山口組四代目を襲名したことに反対した反竹中派が「一和会」を結成。竹中組長は一和会に殺害され、山口組は報復に動いた。1989年の一和会解散までに双方で25人の死者を出した】


鈴木:溝口さんの取材ぐらいですよ、彼らが出てくるのは。でも自分たちのほうが有利なようにマスコミには取り上げてほしいから、匿名では情報を流しまくる。そんな情報戦ばかりが先行して、実際に人が血を流す抗争事件はほとんど起きてないのに、マスコミでは何か大変な事態が起きているような雰囲気になっている。


溝口:本当はヤクザは目立ちたがり屋だから、マスコミに出たいはずなんだけど。


鈴木:実際、山口組分裂のあと、埼玉で発砲事件があって、東京のテレビ局が撮りに行っている。門を掃除している組員に、「撮らせてください」と言ったら「OK」って言うわけです。ただし、「体面があるから俺はお前らを怒鳴る。怒鳴るシーンを撮れ」って。それで、「オラァ、コラァ、何やっとんじゃぁ!」と怒鳴ってから、いろいろ話してくれたそう(笑い)。組織への体面で、取材に答えるわけにはいかないけど、来たやつに事情を説明するのはいいと。本当は出たいんですよね、テレビ。


溝口:新聞もそう。たとえば、抗争でカチコミ(事務所への襲撃)をやるでしょ。襲撃を受けた組のほうが、警察に届けないことがあるんですよね。それだとニュースにならないから、撃った方がわざわざ警察に電話して、「今、拳銃の発砲音がしました」と通報することがあるんです。


鈴木:周囲の騒音が大きくて気づかれなかったりすると、もう1回撃ち込みに行ったりすることもあります。


溝口:新聞で見出しにならないと、やった意味がないからね。


鈴木:売名に利用されるから、最近では新聞は暴力団の二次団体以下の名称は書かないようになっています。「山口組『系』の組員が撃った」としか書かない。


溝口:マスコミも警察発表しか書かないしね。


鈴木:いまやヤクザそのものではなく、その裏世界の人間と芸能人やスポーツ選手や政治家が接点をもってしまったことがニュースになるように変質してしまった。接触した有名人のほうにスポットが当たるようになっている。


溝口:もはやヤクザそのものへの興味がなくなったのかもしれません。


鈴木:最近では俺のところに、ヤクザが敵対するヤクザと芸能人が写っている写真を売り込んでくるんです。そのヤクザを貶めるために。ヤクザがヤクザとの写真を問題だって言うんだから、本末転倒ですよ(苦笑)。


●みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。『暴力団』など著書多数。近著は『さらば!サラリーマン』。


●すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』など著書多数。近著に『サカナとヤクザ』、『昭和のヤバいヤクザ』。


※週刊ポスト2019年7月19・26日号

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