夏ドラマ、前代未聞のオリジナル作品0 人気脚本家も深夜帯へ

7月13日(土)7時0分 NEWSポストセブン

『Heaven?~ご苦楽レストラン~』は漫画が原作(公式HPより)

写真を拡大

 7月にスタートした夏ドラマに異例の事態が起こっている。プライム帯(19〜23時)に放送される新作ドラマはすべて原作ありで、オリジナル作品が1つもないのだ。その背景について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。


 * * *

 7月7日の『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)を皮切りに、8日は『監察医 朝顔』(フジテレビ系)、9日は『Heaven?〜ご苦楽レストラン〜』(TBS系)、10日は『偽装不倫』(日本テレビ系)、11日は『ルパンの娘』(フジテレビ系)と『サイン —法医学者 柚木貴志の事件—』(テレビ朝日系)、12日は『Iターン』(テレビ東京系)、13日は『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)と連日、夏ドラマがスタートしています。


 早々からネット上にはさまざまな声が飛び交っていますが、なかでも目立つのは「原作にそっくり!」「原作のイメージと全然違う」「これも原作通りなのかな?」という原作絡みのコメント。決して「一部の原作ファンが騒いでいる」というわけではありません。今夏にプライム帯(19〜23時)で放送される全11作の新作ドラマ(シリーズ作の「刑事7人」「警視庁ゼロ係」は除く)は、「すべて原作あり」のため、必然的に原作絡みのコメントが増えてしまうのです。


 漫画原作の『監察医 朝顔』、『Heaven?』、『偽装不倫』、『凪のお暇』(TBS系、19日スタート)。


 小説原作の『ルパンの娘』、『これは経費で落ちません!』(NHK、26日スタート)、『ノーサイド・ゲーム』。


 韓流ドラマ原作の『TWO WEEKS』(フジテレビ系、16日スタート)、『サイン —法医学者 柚木貴志の事件—』、『ボイス 110緊急指令室』。


 ノンフィクション原作の『リーガル・ハート 〜いのちの再建弁護士〜』(テレビ東京系、22日スタート)。


 漫画4作、小説3作、韓流3作、ノンフィクション1作とバラけていますが、いずれも原作のある作品であることは変わりません。1970年代から40年以上ドラマを見続けてきましたが、新作のオリジナルドラマがないクールは記憶になく、まさに前代未聞の状況なのです。


 なぜ今夏の新作ドラマは「すべて原作アリ」「オリジナル作ゼロ」という異例の状況になっているのでしょうか?


◆大物脚本家ですらオリジナル作は深夜帯


 その原因を探るとき、まず注目してほしいのは、今夏はヒットメーカーの脚本家が深夜帯でオリジナル作を手掛けること。


 これまで『ひよっこ』(NHK)、『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)、『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)などのヒット作を持つ岡田惠和さんは、金曜23時15分から放送される『セミオトコ』(テレビ朝日系、26日スタート)を。『ごちそうさん』(NHK)、『義母と娘のブルース』(TBS系)、『とんび』(TBS系)などのヒット作を持つ森下佳子さんは、土曜23時30分から放送される『だから私は推しました』(NHK)を手掛けます。


 どちらも意欲的なオリジナル作なのですが、二人はこれまでプライム帯のドラマばかり手がけてきただけに、「あれっ?」と思う人もいるでしょう。


 これは、制作サイドが、「岡田さんや森下さんほどの大物脚本家でも、『オリジナル作で勝負する』。あるいは『視聴率を気にせず伸び伸びと書いてもらう』なら深夜帯のほうがいい」と考えているからに他なりません。もともと夏は在宅率が低く、大型イベントの中継などで放送が飛び飛びになりやすいなど、視聴率が低迷しがちのため、各局ともに原作のある作品で安全策を採る傾向があります。


 さらに制作サイドを悩ませているのは、近年「知らないものに手を出さない」「原作が評判のいいドラマを選ぶ」という視聴者の安全志向が高まっていること。実際に、昨年放送されたオリジナル作を振り返りながら考えてみましょう。


『FINAL CUT』(フジテレビ系)、『anone』(日本テレビ系)、『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)、『もみ消して冬』(日本テレビ系)、『トドメの接吻』(日本テレビ系)、『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、『ヘッドハンター』(テレビ東京系)、『Missデビル』(日本テレビ系)、『崖っぷちホテル』(日本テレビ系)、『高嶺の花』(日本テレビ系)、『獣になれない私たち』(日本テレビ系)、『僕らは奇跡でできている』(フジテレビ系)の12作は、すべて全話平均視聴率1桁に終わり、ネット上で大きく盛り上がった作品もありませんでした。


◆オリジナル作『あな番』が人気の理由


 一方、全話平均視聴率2桁を記録したオリジナル作は、『BG』(テレビ朝日系)、『アンナチュラル』(TBS系)、『リーガルV』(テレビ朝日系)、『大恋愛』(TBS系)の4作のみ。しかもネット上で盛り上がったのは、『アンナチュラル』と『大恋愛』の2作に留まりました。「プライム帯のオリジナル作で、視聴率を獲得し、ネット上で盛り上がったのは、16作中2作のみ」という低確率だったのです。


 また、深夜帯のため視聴率は低迷したものの、オリジナル作の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が大ブームとなり、『dele』(テレビ朝日系)が絶賛を集めました。この結果を受けて、「オリジナル作は深夜帯のほうがいい」という判断を下しはじめている業界関係者が増えているようなのです。


 原作アリのドラマが多い、その他の理由としては、「企画が通りやすく、メディアにも採り上げられやすい」「プロデューサーがドラマの題材を考えていたとき、原作を見てほれ込んでしまった」「出版社とタイアップして大々的にPRできる」「オリジナル作を制作するほど時間と費用に余裕がない」などのさまざまな事情があります。


 しかし、原作アリのドラマには、「すでに結末が世の中に出ている」「“60分×10話前後”の連ドラ仕様に脚色すると無理が出やすい」などのデメリットがあるのも事実。その点、春から2クールぶち抜きで放送されているオリジナル作の『あなたの番です』は、「結末がまったく読めない」「毎週変幻自在の展開で目が離せない」という魅力を武器に、右肩上がりで注目度を上げています。


 20世紀のドラマはオリジナル作が大半を占めていました。2000年代に入って原作アリのドラマが一気に増えましたが、2010年代に入ってから「ドラマはやっぱりオリジナル」という考え方が見直され、徐々に減少。それだけに今夏の「オリジナル作ゼロ」は衝撃的であり、ドラマにとって重要な多様性が失われることを不安視してしまいます。


【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

NEWSポストセブン

「実写化」をもっと詳しく

このトピックスにコメントする

「実写化」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ