信田さよ子「DVや児童虐待、性暴力の増加…コロナ禍で家庭内の問題が浮き彫りになった今、考えたいこと」

7月15日(木)19時10分 婦人公論.jp


信田さよ子さん(撮影:本社写真部)

原宿カウンセリングセンターの所長として多くの人の相談に乗ってきた信田さよ子さん。今年5月に退職したからこそ、新著『家族と国家は共謀する』を執筆できたという。その理由は(構成=寺田和代 撮影=本社写真部)

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コロナ禍で家庭内の問題が浮き彫りに


1995年に設立した原宿カウンセリングセンターの所長職をこの5月に退きました。これまで家族関係について多くの本を書いてきましたが、この本は立場上、関係者に配慮して発言を控えてきたテーマに踏み込んだ初の著書です。

「家族と国家」という書名にピンとくる人も多いかもしれません。家庭や私的領域で起きる問題は、国の政策や法律に強く影響され、女性や子どもなど立場の弱い人ほど安全や生存が脅かされています。力を持つ人が持たない人を支配する「政治的な場」という意味で、家族と国家は相似形だと考えたのです。

なぜここまで踏み込んだか。いちばんの理由はコロナ禍で家庭内のさまざまな問題がこれまで以上に浮き彫りになったことです。DVや児童虐待、性暴力の増加は統計でも明らか。国の法律が変わらなければ救える命も救えません。家族や親しい間柄で起きる問題にも、政治的な視点が欠かせないと考えたのです。

それを伝えるには新しい言葉が必要でした。たとえば「被害者権力」はその一つ。被害者が新たな加害者に転じてしまうことを指しています。


『家族と国家は共謀する サバイバルからレジスタンスへ』角川新書

男女格差が先進国で最も大きなこの国で


20年以上前、ある総合誌に「被害者も加害者も当事者性がない」と書きました。「夫婦なんてそんなもの」という人に、「殴る人はDV加害者で、殴られる人は被害者である」、つまり当事者であると自覚してもらいたいと思った。そこが出発点です。

ところが被害者の自覚は、屈辱的である一方で、自分には責任がなく、「悪いのはすべて加害者のせい」に転嫁できる心地よさもあります。「被害者は正しい」という思いが、新たな攻撃や差別意識につながってしまうことも。そうならないためにも被害者は苦痛を認識し、被害の経験を語って聞いてもらい、ちゃんとケアされる必要があります。

さらに、被害からの回復を指す「サバイバル(生き延びること)」や、回復力を意味する「レジリエンス(被害に対する強さ、しなやかさ)」に加えて、「レジスタンス(抵抗)」という言葉を新たに提案してみました。「家族は良きものだ」として疑わない世間の常識に、攻めの言葉、政治的な言葉によってその先にある解決法を示したかった。

この本は「家族の話はおんな子どものもの」と考えてきた男性にも読まれているようです。でも、男女格差が先進国で最も大きなこの国で、男性も家族との向き合い方や人間関係の持ち方が問われていることに気づかなければ、この先、人も家族も国も立ちゆかない。そういう岐路にあると思います。

婦人公論.jp

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