負け顔が似合うアンガ田中卓志 「ゲーム実況」と相性抜群

7月17日(水)16時0分 NEWSポストセブン

イラスト/ヨシムラヒロム

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 ネット生放送の定番番組のひとつに「ゲーム実況」がある。eスポーツの強豪選手による配信だけでなく、有名YouTuberによる配信も録画も含めて人気だ。ゲーム好きで知られるモデルで女優の本田翼が突如、YouTubeでゲーム実況を始めた時には、本人が写っていないにも関わらず1日で100万回再生を超えた。そのゲーム実況配信の世界に、アンガールズ田中卓志が2018年12月から加わった。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、人に見られるときは面白くて当然と言われる芸人が、ゲーム実況に加わった意義について考えた。


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 先日、小学6年生が将来就きたい仕事のランキングが発表された。男子の1位は定番のスポーツ選手、2位の研究者に大差をつけての首位である。そして、注目が集まったのがスポーツ選手の内訳だ。40%のサッカー、30%の野球、6%のテニスときて、4%のeスポーツが続く。現在、国内のeスポーツ大会の最高賞金は1億円。「ゲームしてお金もらえたらいいのに?」なんて戯言がシャレじゃない時代になっている。


 eスポーツの隆盛によって、一時はテレビから姿を消していたゲーム番組も増えている。今年33歳となった僕の小学生時代、娯楽といえばスーパーファミコン一色だった。テレビ東京の木曜18時といえば任天堂一社提供のゲームバラエティ番組。ちなみに10年以上放送されていた。素人の小学生がゲームに関するクイズに挑戦。優勝商品のゲーム、テレビ出演の相乗効果で興奮状態となるガキをいなす司会者の渡辺徹、対子供専用ともいえる職人的な司会術が記憶に残っている。それにしても、あの頃のテレ東は二軍感が強かったなぁ……。


 現在、渡辺徹に代わりテレ東のゲーム番組の司会を務めるのは芸能界の一軍選手・有吉弘行。有名人の自宅に赴き、ゲームに興じる番組『有吉ぃぃeeeee!〜そうだ!今からお前んチでゲームしない?』が毎週日曜22時から放送されている。タイトルからもわかるようにeスポーツの要素を含む番組、公式ツイッターで対戦相手を募集するといった試みも行っている。


 実は『有吉ぃぃeeeee!』、有吉が「これ、街ブラ番組だから」と自嘲しちゃう番組でもある。番組の前半は有名人が住む街の商店街を探索。試食しつつ、お宅訪問する際の手土産を探す。やっと自宅にたどり着き、ゲームに興じる。プレイ以上にゲーム内の出来事から派生する雑談が面白い。誰よりも真剣にゲーム挑むアンガールズ・田中卓志の失敗を「お前、ダメな奴だなぁ〜」と笑う有吉。子供の頃、友達の家でゲームをした日々を思い出す。買い食いとゲーム、こんなノスタルジーでカルピスの味が呼び覚まされる。


『有吉ぃぃeeeee!』はYouTubeでも展開されている。田中をメインとしたスピンオフ『卓志ぃぃeeeee!』が公式アカウントより配信中。本編が昭和的なゲームの楽しみ方なら、スピンオフは現代的なゲームの遊び方。田中はインターネットを通じて、世界中の人と戦う。ゲーム実況をしつつ、ゲーム能力の向上を目指している。ゆえに動画のタイトルには「特訓」といったフレーズが付けられることも多い。


 YouTubeでゲーム実況が定番のコンテンツとなってから長い。ヒカキンを筆頭にYouTuberの多くがゲーム実況だけのチャンネルを持っている。そんな土壌にテレビ局と一流芸人が組んだ『卓志ぃぃeeeee!』が挑む。力の入れ方はアイコンを見れば一目瞭然、田中の写真の上にはタイトルと動画の趣旨説明。いかにもYouTuberっぽいアイコンが設定されていた。テレ東がYouTube仕様に寄せる。時代は随分と変わった。


 アイコンと同様に田中も力を入れている。芸人としての矜持もあるはず、YouTuberとは一味違うゲーム実況を見せたいところ。視聴者もプロとしての面白さを期待している。現在、配信されている動画を鑑賞すると田中とゲーム実況の相性は良いeeeee!


 ゲーム実況者は大まかに、スーパープレイを披露するやりこみタイプ。そして、プレイ中のリアクションで人気を集めるタイプの2つに分けられる。特訓中の田中は当然後者、「リアクションに貴賎なし」とテレビと同様の破顔やふるまいを披露する。 感情の起伏を身体で表現することがリアクション芸人の仕事だ。喜怒哀楽を揺さぶるゲームと相性が良いのは必然である。しかし、田中が他のYouTuberと比べて段違いのゲーム実況をしているかといえば、怪しい。名誉のために書くが田中に落ち度は一切ない。ただ、現在のYouTuberたちのトーク技術が底上げされているのだ。


 全ての表現は模倣から始まる。おそらく、YouTuberはテレビで見た芸人のリアクションを学んだ。得た技術は自身のゲーム実況に生かされる。田中の「もう、なんで?」といった泣き声リアクション、実はとっくに流用されている。ゆえに本物がやった際、新鮮味が若干薄れてしまう。田中のリアクション芸が進化するほどに模倣者も育ってしまう。ゲーム実況を通して、なんとも皮肉な構図も浮かび上がってきた。しかし、二番茶よりも一番茶が豊穣であることに疑いはない。


 普段、温厚な人が車の運転中だけ激しい性格となる。そして人は、運転と同じくゲームの操作をする際、本性が漏れる構造となっているようだ。ゲーム中、覗く田中の本性こそ『卓志ぃぃeeeee!』の醍醐味。


 プロゲーマー・板橋ザンギエフと『ストリートファイターV』で対戦した田中。通常ルールでやっても勝てるはずがない。協議の結果、「板橋は対戦スタート時から5秒間は無抵抗」といったハンデマッチ戦が組まれた。5秒間、田中は板橋をボコボコに殴る。その後、反撃されるものの1ラウンドをギリギリで先取する。2ラウンド、無抵抗なキャラクターを再び痛みつける田中。そして、奇跡が起った。殴った勢いそののま、必殺技が炸裂。プロ相手に無傷で勝利を飾る。諸手をあげ「やった〜」と喜び勇む田中に「有利な形勢を取ると強いタイプですね、田中さんは……」とボヤく板橋。ハンデをもらっているのに勝って図に乗る田中は、板橋のぼやきを聞き逃さず「俺をダメ人間みたいに言うんじゃないよ!」と激しくツッコミ。顔を出さない人も多い実況系YouTuberとは異なり、パーソナルを知られている田中らしい面白さが表出しているシーンだった。


 本編、スピンオフを観て、コミュニケーションツールとしてのゲームっていいな、と再確認。自分はプレイせずともゲームを楽しむ人を通し、追体験できるのがゲーム実況の魅力。僕は田中がプレイしたゲームを一切やったこともない。しかし、彼のプレイ映像を満喫できる。ゲーム実況はプレイヤーと非プレイヤーを繋ぐ。これもひとつの交流である。


 水野晴郎ではないが「いやぁ、ゲームって本当にいいもんですね〜」と言い、このコラムをゲームオーバーしたい。


●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)

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