辻監督が命名した“獅子おどし打線”は定着するか

7月18日(水)11時0分 文春オンライン

 開幕から好調の西武打線が、シーズンの折り返しを迎えても衰えを見せない。普通、チーム打率は.250を基準に、それより高いか低いかで打撃面の強さが評価される。パ・リーグ6球団のチーム打率を見比べると、西武の数字が突出しているのが一目瞭然。選手個々も、自分の打率がチームの数字より上か下かを目安にし、意識しているのでレベルアップにもつながる。


 ちょっとした裏話。一般的に打率を言葉に表す時、.250は「にわりごぶ」だが、野球界では「にひゃくごじゅう」と言う。なので、キャンプやオープン戦の時期にシーズンの目標を聞くと、「さんびゃく(3割)は打ちたいですね」などの答えが返ってくる。耳慣れればすんなり入るが、当初戸惑ったのはいうまでもない。



球宴第1戦MVPの森友哉 ©中川充四郎


強力打線名は「獅子おどし打線」


 打撃好調が続くと担当コーチもやりがいがある。もちろん、好投手の攻略は難しいものだが的確なアドバイスを選手に送り、それに応えてくれた時には喜びも増す。試合中、相手投手攻略のためにベンチ前で円陣を組むケースがある。投球の傾向から狙いダマを絞る指示が主だ。以前、土井正博打撃コーチ(現中日打撃コーチ)が、「いいか、こうして円陣を組んでいると、相手ピッチャーが『どんな指示がでているのか?』と考えるだろう。それが狙いだから、今回はなんもなし!」。要するに相手を惑わせる作戦。今も中日で、この作戦を使っているのだろうか。


 西武のホームゲームの場合、数年前から取り入れている「回し打ち」の効果も出ているのかも知れない。通常の打撃練習は、5分〜7分ケージ内でひたすら打ち続けるが、田辺徳雄前監督の「一人で持ち時間を打つより、数球打って交代したほうがいろいろ考えるでしょう。打席に入る前の心構えにもつながるので」とのアイデアからの練習方法。確かに、決められた時間内で打ち続けると「練習のための練習」といえなくもない。直接的な効果とは明言できないが、まったく無関係とはいえない。



 さて、その西武の自慢の打線について、スポーツ紙がこぞってネーミングを活字にしていた。「山賊打線」、「獅子舞打線」等々。ただ、前者の場合、活字が目から入ってくるより、電波で耳から入ってくると、かなりの抵抗感があった。相手投手から身ぐるみをはがすように点を奪い取る、という意味からのようだが「さんぞく」は個人的に好まない言葉だ。


 そして、そのネーミングの統一に一役買ったのが辻発彦監督。その名も「獅子おどし打線」。正確な漢字は「鹿威し」だが「獅子おどし」として最近のスポーツ紙をにぎわしている。ご承知のように、竹筒の水が一杯になると反転して「コーン!」と鳴る日本文化独特の装置だ。風情を感じ、耳から入る言葉の響きも心地よい。鳴った時に、竹の口が上向きになるのも「上昇」の意味を持つ。また、監督による命名なので、メディア側も使いやすいのも事実。



他球団の「打線名」の記憶


 子供の頃の記憶で、最初に耳にした打線の愛称は、ロッテの前身・大毎の「ミサイル打線」だ。1960年に付けられたので馴染のあるファンは私と同世代のオールドファンだろう。その後、もっとも印象に残っているのが近鉄の「いてまえ打線」。関西のチームならではのネーミングで、細かいことは気にせずガンガン打ちまくれ、という意味でとても分かりやすく、そして定着した。しかし、好投手を相手に打者が簡単に料理されてしまうと「板前打線」なんて揶揄されたこともあった。


 他には、中日の「強竜打線」、オリックスの「ブルーサンダー打線」、横浜の「マシンガン打線」、ダイエーの「ダイハード打線」などが思い浮かぶが、思わずニヤリとしてしまうのが、04年の横浜の「大ちゃんス打線」。当時の山下大輔監督の名前からのものだが。残念ながら強そうな感じは伝わってこない。80〜90年代の黄金期の西武打線の愛称はというと、親会社の西武鉄道の特急「レッドアロー」にかけて、チーム色から「ブルーアロー打線」の言葉も短期間目にしたが、定着することはなかった。


 打線名ではないが、黄金期の辻発彦二塁手、石毛宏典遊撃手による4−6−3または6−4−3の併殺プレーを「はっちゃんダブル」とラジオ番組内で広めたことがある。二塁手は名前そのものから、遊撃手は「ハチ」の愛称で呼ばれていたためのもの。ちなみに石毛の愛称の由来は、当初はマユが「八の字」からという説が流れたが、後に小学生の頃、怒ると口をとがらせたことから「タコの八ちゃん」が正解のようだ。まぁ、どうでも良いことだけど。


 先日行われた球宴では第1戦が森友哉、第2戦に源田壮亮がMVPに輝いた。今季のチーム運、勝負強さがそのまま表れた形だ。「獅子おどし打線」の力強さの全国の野球ファンに対する強烈なアピールとなった。



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(中川 充四郎)

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